子供のために選ぶ、ほどよい刺激となる読み物 『たのしいムーミン一家』 | 上質なことばで名作を楽しもう

上質なことばで名作を楽しもう

様々なキーワードから導かれる上質なことば・文章と、それらを含む書籍などを紹介していきます。

『飛行おにがわらうことができるなんて、だれだって思いはしなかったのです。
ところが、そのときみんなの目には、飛行おにのにっこりしたのが、はっきり
と見えました。どんなに飛行おには、うれしがっていたことでしょう。あの人の
ぼうしから長ぐつまで、それこそよろこびがあふれていたのです。
 ひとこともいはずに、飛行おにはさっとマントを草の上でふりました。』
         トーベ・ヤンソン 作 山室 静 訳 『たのしいムーミン一家』
 
 
上の文章の、どこが上質なことばなのか?という問いは、たしかにあると
思います。ただ、10歳前後ぐらいの子供にとって、この話は適度の刺激、
適度のやさしさが混在した空想話であり、外国ものの児童文学の入り口
には良い一冊であると考えています。
なにより、作中の日常生活の様式や会話の質が、読者の子供自身のそれ
と明確に異なっている点に、いわゆる異文化を知る機会となるでしょう。
ちょうど今から50年前、酔った父親が適当に買ってきた土産本がこれでした。
黄色いボール紙のブックケースに入っていました。懐かしい記憶です。
同年齢ぐらいでは、ヒュー・ロフティングの『ドリトル先生』ものや、C.S.ルイス
の『ナルニア国』シリーズがあります。少し年齢が進めば、アーサー・ランサム
の『つばめ号とアマゾン号』シリーズなどがが良いでしょう。