『最初の再開は初対面に対する裁判官である。その後に続くすべての
不安はまた別種のものだ。コンスタンツェがわたしのほうへ歩いて来た
ときは、これでもう幸運の逃げ路がなくなった、という感じがした。厭で
もわれわれの腕に飛び込んで来なければならないのだ。』
エーリッヒ・ケストナー 作 小松太郎 訳 『一杯の珈琲から』
ドイツ人の男が、偶然の出会いから始まった熱愛を、オーストリアと祖国の
間を何度も往復しながら、人生の幸福感の絶頂へとつなげてゆく、明るく
軽やかな物語です。
時が第2次世界大戦の直前であり、本来であればそのような社会的、あるいは
政治的な空気感を除いて、現実は語れなかったであろうと考えます。
多くの人生において、幸福は刹那の記憶でしかなかったでしょう。それは現在
を生きる人々にとっても、多く当てはまることではないでしょうか。
しかし、話を読み進むにつれ、人生の幸福な面を見て、刹那の幸福を思い出す
ことが、心安らかに生きていくうえで大切なことであることを教えられます。
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