『実に遺憾にたえないことには、現今美術に対する表面的の熱狂は、
真の感じに根拠をおいていない。われわれのこの民本主義の時代に
おいては、人は自己の感情には無頓着に世間一般から最も良いと
考えられている物を得ようとかしましく騒ぐ。高雅なものではなくて、
高価なものを欲し、美しいものではなくて、流行品を欲するのである。』
岡倉覚三 著 / 村岡博 訳 『茶の本』
人は、自然に心安きものを求めます。その安き状態とは多くの場合は「怠惰」を
言い換えたものであったりします。
覚三は、真の感じをよりどころとして、自身の感覚で芸術を鑑賞せよということを
小堀遠州の利休に対する感嘆のことばを借りて実感させようとしています。
すべての人に受ける遠州の収集品と、利休ひとりが好む利休の収集品について、
自分が気に入るもののみを愛好する勇気を、遠州はたたえています。
逆に、自分は大衆に媚びているにすぎないと。
利休こそは、千人に一人の宗匠であったと。
「怠惰」は自身の心に対する媚びのようなものでしょうか。安き状態をあえて避け、
自分を律することの大切さを、覚三は全て英語で記述したのでした。
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