『まことの人は、智もなく、徳もなく、功もなく、名もなし、誰か知り、誰か傳へん。
これ、徳を隠し、愚を守るにはあらず。本より賢愚・得失の境にをらざればなり。
迷ひの心をもちて名利の要を求むるに、かくのごとし。』
吉田兼好 『徒然草』 第三十八段
吉田兼好は、徒然草の中で多くの箴言ともいうべきことを書いています。
読み進むにつれて、いくつも共感することばが現われ、長い時を隔てていても
変わることのない本質的なものを、改めて気づかされます。
ところで、徒然草を読んでいくと、兼好の主張に矛盾を感ずるところがあります。
以前の主張Aと全く逆の主張Bを、サラリと書いているところが、時々見られます。
そういった部分を見つけるのも、読書の楽しみといえます。
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