思い出に佇む自分は、その微笑みを見てあなただと気づくのです。
だけど、さよならを言う時が来た事も、それと同時に知るのです。
ひと回り歳の離れた後輩、ガシ君と、
その彼女と一緒に飲んだ時、
自分が失った未来の影が心に差し込んだ。
青春の光というものは確かにあるものだ。
後輩ガシ君と料理の体験教室に行ってきた。
ガシ君はこの時すでに、前に紹介してくれた彼女と別れていたので、
出会い目的で今回の料理教室に参加だ。
「ABCどころか、今日でXYZまで行ってやりますよ!」
本気か下ネタか定かではない、薄っぺらい冗談を飛ばす。
高身長を活かしてもこみち風に塩を振るガシ君。
料理を試食する時も、
後方からのカメラ撮りを意識して見栄え良く箸で持ち上げてみせる。
スクールの魅力を女性スタッフに説明されて、
「でも、それってお高いんじゃ…」とテレビショッピングみたいな前振りをする。
ガシ君のポテンシャルがこれでもかと発揮され、
料理の味も女性陣のウケも上々だった。
教室を大いに和ませた自分達に、
若い女性が照れながらもケーキを差し入れてくれた。
だが、問題はここからだ。
自分の思惑通りにガシ君には本領を発揮してもらわなければならない。
やたら目力の強い女性スタッフの営業が始まるのだ。
スクールの勧誘を振り切れるか、それが最大のミッションだ。
俺が今回、料理体験に参加した理由は、
抽選で当たるかもしれないサーロインステーキだ☆
強烈な営業があると察知してガシ君を相方に誘って参加した。
ガシ君のポンコツ力があれば、それもかわせると踏んでいた。
予想通りガシ君が苦し紛れの言い訳をする。
「料理は本気でしたいと思っているんだけど…、
料金的にも大丈夫だと思うんだけど…、
帰ってキャッシュのフローチャートを見直してみないと…」
様々なスクールプランを提案する女性スタッフも、
思わせ振りでも最終的には煮え切らないガシ君に半ば切れていた。
「本当にやる気があるんですよね!
これで終わりにしないで下さいね!
受講しないにせよ。必ず返事の電話をください。絶対ですよ!」
視線すらも逃そうとしない女性スタッフの目に、
ガシ君は吸い込まれそうになって顔面蒼白だ。
若さの側面にある愚かさを見る歳に自分もなったものだ。
もはや精神に純粋さは無く、
人生には戦略と、
肉体には最近になって残尿感があるヽ(゜▽、゜)ノ
「受講しないのに電話する意味ねえだろ」
まるで別れ際の彼女みたいな台詞を吐く女性スタッフに、
俺はさよならを告げた☆