蛇の毒は後で効く  -10ページ目

蛇の毒は後で効く 

このブログでは明日を生き抜く為の嘘と
よこしまな友人たちにまつわる話が紹介されています。

時は移ろい、

万物が変化するのが理ならば、

事象を推し量れる確たるものは何か?

それはすなわち、

『アルキメデスの一点』なり。

 

静まり返った200人を超える聴衆を眼下にして、

俺はその一点を見つめた。

 

先日、仕事で自己啓発的な研修に行かされた。

「そんなものは俺には無意味だ」と上司に楯突いたが、

「業務命令」の一言で、俺の哲学は無下にされた。

その研修とは、

自己目標を会社の理念と一致させる事で、

モチベーションと幸福指数が跳ね上げる。

赤字に喘ぐ7割の中小企業が藁をもすがる思いで参加する、

おためごかしの社員洗脳セミナーの一幕である。

参加者は、会社のヒエラルキーを超え、性別、年齢、職種と様々。

この二日間での気づきが、己を成長させて人生を変え、さらには事業を成功に導く。

そんな奇跡が頭上にもたらせられると信じている。

俺も集団心理に任せて同調したかったが、

無職に近い存在なので叶わなかった。

でも、発表者の誉れを頂いたのだ。

信者の目の前で聖書をビリビリに引き裂く舞台が整った。

 

『我、思う故に我あり』

 

200人を超える顔、顔、顔…。

群衆を前にしても揺らがない自我は、

瞬時に美人が何処にいるかを判断する。

 

俺が語り終えた後、仲間や同僚が興奮して言った。

「シュンスキーさん、今までで一番輝いてましたよ」

「あたし、シュンスキーさんと働けて誇り高いです」

 

まあな、美人に告白する時って誰でも、

それぐらいの潜在能力を発揮するもんだろヽ(゜▽、゜)ノ

俺がこの研修で成長して得たもの。

それは一人でホテルにお泊まりができたって事だ星

俺は物語の力を信じる。

今まで暗い夜道を歩いてきたが、

道を逸れなかったのは、

本が光となったからだ。

日常では知り得ない、

人生の深い部分を物語は指し示している。

持たざる者は図書館に行くと良い。


先日、NHKの番組で立花隆が、

「本は知の総合メディア」と言っていたが、

まさしく同感だ。

この立花隆、今にもHな事を言いそうなお爺ちゃんで、

「うふふ、そんな話は良いから早くパンツの色を教えてよ」

と、番組の中で言い出したら面白うだなと思っていたが、

とんでもない知の巨人だった。

本を読まなくなった若者に警鐘を鳴らす番組の趣旨に逆らって、

真っ向から反論したのだ。

確かにNHKの検証方法は疑問だったし、

結論ありきの進行、構成だった事は間違いない。

立花隆はあくまで自然体にそれを瓦解させた。

これには女性キャスターも、

パンツの色を聞かれたように面食らっていた。

立花隆の鋭い舌鋒は知の頂をかすめ、

天の声を人として語る。


早速、俺は図書館で立花隆の本を借りようとネットで検索した。

そして、最終的には

「スローセックス実践入門 真実の愛を育むために」

 ※書庫にあります。職員におたずねください。

を予約した。

俺も恥の巨人に近づいている☆

本は知の総合メディアだヽ(゜▽、゜)ノ

もはや、『癒し』は枯渇寸前の資源だ。

『癒し系』なんて幻獣の類としか思えない。


俺が休日に羽ばたこうとするものなら、

現実がむんずと足を掴む。

大抵の事なら、

8割がた気のせいだと済ますが、

この最悪な気分は本物だ。


家族に見捨てられた人間が、

さらに弱い立場の家族を見捨てる。

社会の底辺で生きる人間の宿命を見て、

救いようがない事に愕然とした。


普段なら、

自殺志願者に、

「過去を振り返らない事が勝者だ。

救いの言葉はお前の中にある。

胸のうちの十字架を照らせ☆」

と、かっこいい事を言いそうだが、

今日はそうもいかない。

「死ぬなら全財産、よこせ。

死ぬ前に一発やらせろ」

と吐き捨てそうだ。


残り少ない癒しは風呂しかない。

隣で風呂部のたかしくんが、

自分達がおっさんになった事に激昂している。

どうやら二十歳の子が、

援助交際に見られるから二人きりで会ってくれないらしい。

たかしくんはおっさんになった現実を口にするそばから、

連載が再開した『キン肉マン』の話しをする。

「今、悪魔超人とパーフェクト超人が戦っていてな。

この前、試合中にブラックホールがひっくり返ってペンタゴンになった」とか、

「サンシャインがパーフェクト超人に命乞いをして、

海に捨てられそうになった所…」だとかを力説する。


もしかしたら、

本当は『キン肉マン』は少年時代に終わっていて、

たかしくんはその現実を受け入れられずに、

自分で『キン肉マン』の続編を夢想して語っていると仮定してみたら、

大層、笑えた。


辛い現実と向き合うには、

新たな文化芸術の創造に触れるしかない。

それがきっと『癒し』になるのだろう。


チャップリンの演説、

マーカススコットのダンス、

たかしくんの『キン肉マン』の話を視聴していると、

少しはましな気分になる。