全てが変わった。
人生が180度変わるとはこのことだろうと感じた。

それは雅に出会ったとき。

それは雅を失ったとき。


雅に出会って変わった。
全てがプラスの方向へ動いていた。

雅を失って変わった。
全てがマイナスの方向へ動いた。

なのになぜ?以前の私に戻ることはない。


雅の面影を無意識に求めている私がいた。

私は代わりを探していたんだ。
もう、男になんて興味はないし、恋とか愛には関わりたくない。

それでも、この寂しさと虚しさを埋めるために誰かを求めていた。


好きなタイプを尋ねられると、いつも悩んで適当に答えているつもりだった。

少しクセのある黒髪が好き。
背の高いひとが好き。
大きな手の人が好き。
笑ってくれるひとが好き。
優しい言葉をくれるひとが好き。


だけど、それは全部雅だった。


それでも出会いを求めていた。
無意味だと知りながら。


ただのゲームだった。
思わせ振りな態度をとって、
その気にさせる。

ただそれだけ。

相手がその気になったら、
ゲーム終了。

相手の気持ちなんてどうでもよかった。

ただちやほやされて、
いい気分になりたかっただけ。

何も感じない、
いや、

寂しさだとか虚しさだとか
そんな感情だけがずっと廻っている。

ある時、思ったんだ。


愛想笑いの奥でため息をつく自分は、
どんな目をしている?


あの時の雅と同じように
寂しげな目をしているのではないだろうか。

雅は一体誰を想い求めていたのだろうか…

もう誰もわからない。


私は雅の影を追い続ける。
きっと死ぬまで。

誰も愛することはないだろう。
満たされることはないだろう。


だって、
誰かを愛することも、
満たされることも望んではいないのだから。


もうこの世にはいないけれど、
雅を忘れることはできないし、
したくない。


この呪いをとく方法はないし、
とく気もない。

よぼよぼのしわしわのおばあちゃんになった私が、
雅の声も忘れて、
姿も顔も思い出せなくなって、
それでも想いは色あせず、
泣いているの。


雅という廃墟の心を持った私は、
泣いているの。



一人で夜道を歩きながら、昔のことを思い出した。



苦しかった。辛かった。寂しかった。何度も泣いた。


けど、

それらは全て甘かった。

私は、満たされていた。

そこには確かな幸せがあった。



何のために今があるのか、

何のために過去があるのか、


なぜ私はここにいるのか、


もう全てが分からなくなった。



雅はもういないし、

私の幸せはなくなり、

廃墟と化した乾いた心はもう元には戻らないだろう。


かと言って、死ぬ勇気もない。

ただ意味もなく、

”私”という存在があって、時だけが流れて行く。