北朝鮮はなぜ安倍首相の「ラブコール」を無視するのか
安倍首相は「条件を付けずに金正恩委員長と会って率直に、虚心坦懐に話をしたい」と述べた。
無条件に日朝会談をやってもいいというラブコールだが、今のところ北朝鮮に無視され、身内であるはずの拉致問題関係者からも疑問の声が挙がっている。
Q 北朝鮮はなぜ無視しているのか?
A それは安倍の「ラブコール」がただの見せかけ、建前にすぎないことを看破しているからだ。
まず背景から、、、
安倍政権は昨年、朝鮮半島情勢が好転し、朝米首脳会談まで開かれたことで、日本も取り残されまいと日朝会談の再開を模索した。
北村内閣情報官が北朝鮮の統一戦線部の金ソンヘ室長らと極秘会談したとの報道もあったが、北朝鮮はこれを否定。北村内閣情報官が面談したはずの宋大使(日本担当大使)に至っては金ソンヘ室長が誰か知らないとまでしらを切って接触を否定した。
安倍政権の外務省ルートも昨年ニューヨークの外務大臣会談(立ち話)以降、何ら動きはない。
官邸が極秘に平壌に人を派遣し接触を図ったという話もあるが、北朝鮮に動きはない。
では、なぜ北朝鮮が安倍首相の誘いに応じないのか、本題に入ろう。
安倍政権の主張は、北朝鮮が拉致問題を解決し、核・ミサイルを放棄したら、日本など周辺国の経済援助を受けられ、明るい未来を描けるだろうというものだ。
だがこの発言が北朝鮮を怒らせているのだ。
当ブログの熱心な読者ならすぐわかるだろう。北朝鮮は自尊心を傷つけられるのを一番嫌う。
さらに小泉政権時代の北朝鮮とは事情が違う。今の北朝鮮の人々は、日本の助けなんかうけてたまるかという自尊心が強く、日本の助けがなくても中国、韓国、東南アジアとうまくやれば大丈夫という思いがある。
だから安倍首相が、北朝鮮には豊富な資源があり有能な人材がいるとリップサービスをしても、それが北朝鮮の人々にとっては「お前に言われたくないわ!」という怒りになってしまっているのだ。
これに気付いていない安倍政権が嘆かわしい。
実際に北朝鮮は日本について、過去清算にしっかり向き合え、在日朝鮮人に対する不当な差別と弾圧を撤回せよ、そうしたら考えてやってもいいと条件を付けている。(昨年の外務大臣会談でもこの点が指摘されたという話もある)
何のことか? 一つ例を挙げると、在日朝鮮人の人権問題、とくに朝鮮学校の処遇問題。
朝鮮学校だけが「高校無償化制度」から除外されたのは、安倍政権によるものだ。これを改善するだけでも北朝鮮は聞く耳を持つようになる。独自制裁とは無関係なので首相の決心一つでやれることだ。
なのに安倍政権はそのことを知ってか知らずかやろうとしない。
だから北朝鮮は安倍首相の「リップサービス」を選挙用のまやかしだと見抜いているのだ。
実際、安倍首相は5月上旬、トランプ大統領との電話会談で、米国の対北朝鮮制裁強化に同調した。第二回朝米首脳会談に際しても制裁緩和を譲歩ととらえ、安易な譲歩をすべきでないと主張した。
北朝鮮からすればまさに米国の番犬。たしかに犬と話すことなどない。
安倍首相が本気で金委員長と向き合おうと思っているようには見えない。
かといって拉致問題を解決するという、自身の政権復帰を支えた地盤を裏切ることもできない。
結局、選挙に勝ち、時が流れ、北朝鮮が駄々をこねたから解決できないと責任をなすりつけるのだろう。
この予測はまちがいなく当たる。