本の紹介、4日目は、ドリアン助川さんの『あん』(ポプラ社、文庫もあり)について紹介しました。
いま新型コロナウイルス感染問題が曰々の生活を暗く覆います。
ぼくはハンセン病問題を自分の追い求めるテーマとしてきました。
ハンセン病問題について、その深刻な差別の歴史について考えてきたことが、いかに薄っぺらいものであったか、打ちのめされる思いでいます。
『あん』も、あらためて読み、考えたい。
そのとき、過去の事実の検証をもしておかねばならない。
『検証・ハンセン病史』熊本日日新聞社編(河出書房新社)は、熊本の地方新聞社、通称「熊日」の記者たちが新聞連載した本です。
2001年5月11日熊本地裁にて、ハンセン病患者の強制隔離政策は違憲である判決が言い渡されました。ここでは、国の隔離規定を改廃しなかった不作為が断罪されました。
「熊日」の記者たちは、この政策に向き合ってきたマスコミ・新聞社の加担も問われたと考えました。
「熊本はハンセン病との関係が深い土地柄である。明治時代には二人の外国人がキリスト者の立場でそれぞれ療養所を開設、軍靴の足音が高く響いた1940年には157人が強制収容されるという本妙寺事件があり、戦後は患者の子弟を普通学校に通学させるかどうかで騒然となった黒髪校事件が起き、それを題材にした映画「厚い壁」も作られた。熊本県の北部・菊池郡合志町にある国立療養所菊池恵楓園は国内最大の療養所である。ここからはのちに「ハンセン病文学」とも呼ばれることになる患者たちの文学活動が全国発信された。ハンセン病史には熊本の歴史と風土が重なっていた。」(「まえがき」より)
熊本の歴史と風土、「熊日」もこのなかでの差別の構造に加担した歴史も持っていました。(例えば、黒髪校事件の際に、中立性の主張をして、結局は差別に加担したことがある。この本の138ページ「(通学賛成の)理論は正しいと思うが、通学には必ずしも賛成できない」1958年12月10日の「熊日」の「社説」)
ぼく個人は、母の里が熊本であり、その長兄であった伯父・蒲池正紀(当時、黒髪小学校のPTA会員、熊本商科大学教授)が、黒髪校事件の通学賛成派として活動したことを後に知り、熊本でのハンセン病問題には強い関心も持ってきました。(ブログにも、「黒髪校事件」や「菊池恵楓園訪問」についても記事を書いています。いくつもの記事がありますが、その中から。)
「黒髪校事件」→①https://ameblo.jp/sanni1132/entry-11479880849.html?frm=theme
②https://ameblo.jp/sanni1132/entry-11480385445.html?frm=theme
「菊池恵楓園」→①https://ameblo.jp/sanni1132/entry-12367209821.html?frm=theme
②https://ameblo.jp/sanni1132/entry-12367285594.html?frm=theme
このなかのジャーナリストたちの思いを感じながら読むと、「知らないことは罪である」ということを、胸に突き付けられるました。
コロナ問題での人権差別が至るところで生じていることを知り、苦々しい思いにじりじりします。
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「あん」のラジオ放送
5月10日(日)より『あん』のラジオ放送6回が始りました。「新日曜名作座」
西田敏行さん、竹下景子さん出演。
MHK「新日曜名作座」 毎日曜日午後7時20分からの30分間。
もう第1回目は放送されていますが、聴き逃した人は以下のURLから聞くことができます。
(第1回「聴き逃し対応」は、5月18日(月)午後0:00まで)
https://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2020-05-10&ch=05&eid=66109&f=930