結婚相談所で紹介された男性とお見合いが成立しました。

この男性は10歳上の会社員の方だったのですが、私の目を覚まさせるきっかけを与えてくれました。

その過程を記録しておこうと思います。

運命の日。

ホテルのラウンジでお見合いを開始しました。
すると開始早々いきなり男性から禁句の質問をされました。

「いのかわさんはどうして僕に申し込んでくれたんですか」

カウンセラーから紹介された男性は、とりあえず全員受けることにしているからです!
とは言えないですよね。

「えっと、素敵な方だと思ったので。」

と無難にお茶を濁しまくり愛想笑いをしました。
すると私のこの濁り切った回答がなぜか響いたようで、男性のエンジンが突如全開になってしまったのです。

「ほんとですか!
 ありがとうございます。嬉しいです。
 ちなみに参考までにどんなところが良いと思っていただけましたか?」

え?続くん、これ?
何なん?
何の苦行なん?
マジか、どうするよ私。
今こそ無い頭を絞るとき!

「そうですね…。
 えっと、お写真の笑顔が素敵?で、お休みの日に○○を楽しんでいると書かれていて趣味も合いそうだなと思いまして」

本音を言うと写真よりさらに太っ、いや恰幅の良いおっちゃんやなと思ったし、何やら加齢臭っぽい臭いがさっきから気になってるねん。
会話のキャッチボールのためにプロフィール暗記しておいてよかったで、ほんまに。

「えーありがとうございます!
 僕もいのかわさんのこと素敵だなと思っていますし、全然好みのタイプです」

はい、全然嬉しくないです。
だって何も考えず受けたお見合いやし、会ってみれば意外と大丈夫かもと自分に言い聞かせたけど、大変失礼ながら、やっぱりどうしても結婚対象ではない、その辺のおっちゃんでしかない。

ここまでで私はもう疲れ切っていました。
運動音痴がマラソン大会に放り込まれたレベルで疲れていました。


しかしその後も「私が男性に対して好意を持っている」という前提でお見合いが進んでいき、男性からはどんどん難問を突き付けられました。

「子どもは最低2人ほしいと思っているんです。
 いのかわさん、今2〇歳ですよね。
 今年結婚するとして2年以内に1人は産みたいですよね」

「僕、意外と料理にうるさんですよ。
 料理は得意ですか?
 え?簡単なものってどんなものをつくってるんですか?
 今度、味見させてくださいね」

「いのかわさんは結婚後も働きたいと書いてあったので、もちろん共働きですよね」

「いのかわさん、いつか某国の某遺跡を見に行きたいんですよね。
 僕、某国行ったことあるので、ぜひ新婚旅行で行きましょう!
 おいしいごはん屋さんをいくつか知っていますし、ばっちり案内しますよ。」

あんたと結婚したいていつ言うた?
社交辞令って言葉知らんの?
はっきり言って生理的に厳しい見た目やし、黙って聞いてりゃ自分のことしか言わへんし、加齢臭をまといまくってて有り余る脂肪を持て余したおっちゃんと、なんで私が結婚せなあかんねん!
私の人生はボランティアちゃうわ!

いや落ち着くんだ、あきこ。
そもそも私が悪いんやわ。
だって何も考えず、とりあえず片っ端から紹介やお見合いを受けたことで、本当は自分の中の譲れない条件も無視してたやん。
このおっちゃんに例え国家予算レベルの資産があっても、絶対結婚は考えられへんってわかってたやん。
にもかかわらず機械的にお見合いを受けた結果、この哀れなおっちゃんに余計な希望を与えてしまったんやで。
初めから譲れない条件を精査していれば、このおっちゃんとのお見合いを受けることは絶対になかったやん。
おっちゃんの言動は、私の考えなしの行動が招いたものやで。

お見合い中はずっと男性の一人芝居で、私は「あー」、「うーん」などと引きつった笑顔で呻いていました。
しかしそのおかげで私は気づいたのです。
自分自身の浅はかさに。
理想のパートナー像がゆるふわの状態で、本当に結婚したいお相手と出会えるものかと。

おっちゃんとのお見合いを終えた頃には、
私は晴れ晴れとした気持ちになっていました。
譲れない条件が明確になったからです。

帰宅後、結婚相手に求める条件を書き上げました。
その作業をしていたため、お見合いの返事を入れることをすっかり忘れていました。
いつもはお見合い終了後1時間以内に回答を入力していたためか、カウンセラーから確認のお電話を頂いてしまいました。

「×さん、どうだった?
 あちらはいのかわさんと結婚後の話も具体的にできたってすっかり乗り気よ」

おっちゃんとのお見合いがなければ、私の目が覚めるのはもっと先だったかもしれません。
感謝の気持ちを込めて丁重にお断りしました。