三木句会ゆかりの仲間たちの会:飛鳥遊子の書籍紹介    その3 | sanmokukukai2020のブログ

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      三木句会ゆかりの仲間たちの会:飛鳥遊子の書籍紹介     その3

 

 

   『二十世紀名句手帳4 動物たちのカーニバル』      齋藤慎爾

 

    一日の殆んどを膨大な句集、雑誌を繰ることで過ごし、それでも数句しか発見出来ない

   という日が続いた。そのため刊行は大幅に遅れた。時間をかけ、探索の努力をすればメイ

   クに出会えるというものではない。ある語の語源を調べるため、文献を遡って当たってい

   くという国語辞典を作る作業にも似て、徒労の念に何度も打ちのめされもしたが、いま誰

   かがやらなくては、俳句史は遂に空白のままで終焉するという痛恨の思いが上廻ったとい

   うべきか。埋もれた廃人を鎮魂し、一基の句碑を建てたいというひそかなる祈念ーー本書

   は二十世紀の名句の句碑ならぬ紙碑である。この企画を立てた河出書房新書の長田洋一氏

   の寛容と熱意に敬意を表したい。

    調べられる限りの作者に掲載の許可をお願いした。無理無体なお願いであることは百も

   承知である。厚くお礼を申し上げたい。「詩は無名がいい。俳句は、本来、名を求める文

   芸様式ではないのだ。作品が愛誦されたら、もう作者は誰でもいい」(「詩は無名がいい」

   昭和四十七年)と飯田龍太氏は述べられているが、やはり句も作者名も後世に記憶されて

   いくべきだろう。芭蕉は「一世(いっせい)のうち秀逸の句三、五あらんは作者なり。十句

   に及ばん人は名人なり」といったが、私たちは幾多の名人をその懐に包摂していることを

   誇りに思っていいだろう。

                      二〇〇四年一月   齋藤慎爾

 

 

 

        でで虫は戦場のにほひ花の匂ひ   桑原三郎

        山の日は中天にあり蝶の舌     志賀佳世子

        着ぶくれてなんだかめんどりの気分   正木ゆう子

        寒雁を仰ぎ大いなるもの仰ぐ    山田瑞子 

        生き継ぎし村を湖底に囀れる    山本ふみ

        春蚊鳴く耳のうしろの暗きより   小林康治

        我が肩に蜘蛛の糸張る秋の暮    富田木歩

        炎昼の馬に向いて梳る       渋谷 道

        天道虫雫のごとく手渡しぬ     野見山朱鳥

        恋猫の皿舐めてすぐ鳴きにゆく   加藤楸邨

        遠蛙病む子もつとも寝入りたり   石川桂郎

 

 

 

 

                             

                                                photo: y. asuka

                           けふ我は揚羽なりしを誰も知らず   沼尻巳津子