三木句会ゆかりの仲間たちの会:関根瞬泡さんの俳句『くにたち』から | sanmokukukai2020のブログ

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   三木句会ゆかりの仲間たちの会:関根瞬泡さんの俳句『くにたち』から

 

    昨年11月に86歳で亡くなられた関根瞬泡さんは、長らくNHK学園の俳句に参加して

   いらっしゃいました。さる1月、合同句集『くにたち』第33集のが発行され、瞬泡さん

   の27句も32名のメンバーの一人として掲載されています。

    NHK学園の雰囲気をよく伝えていると思われるので、本の末尾に記されたNHK学園

   俳句講座専任講師井上康明氏の文章をご紹介します。

 

    長い人生経験とともに、俳句を作り、読み、味わう俳句生活をつづけて来られた方、

   又、人生の終盤に差しかかりながら、俳句を始め、日々の上達を実感しながら毎日を生き

   生きと暮らしておられる方など、俳句に向き合う姿勢はさまざまであることを実感しまし

   た。しかし、共通しているのは、俳句に対する愛情です。俳句一句を詠むことは、無から

   一つの世界を創造することです。AIなど現代を象徴するようなコンピュータの頭脳が、俳

   句を作ったとしても、コンピュータには作者としての人生と個性はありません。私たちが

   詠む一句の俳句は、その人だけの個性あるひとつの世界。そのようにして俳句一句を詠む

   ことが、作者の日々の時間に句読点を打ち、新しい自分自身を日々更新していく喜びをも

   たらすことに、あらためて気付かされました。日々変化する自然とともに新しい自分自身

   に出会いたい、そんな思いが静かに伝わる作品集です。

 

 

   関根瞬泡(埼玉県)

 

   からっ風

 

    私はNHK学園の「俳句友の会」に約10年間という長きにわたってお世話になっておりま

   す。その間、諸先生方のご指導とたくさんの選をいただきました。

    この句集では、昨年にひきつづき、講座に提出したものの中から選んだものを並べてみ

   ました。タイトルについては、私自身、関東育ちですので、それにふさわしい「からっ風」

   とつけさせていただきました。

 

     人知れず消えてゆくかな虫の声

     松過ぎやまだ焼かれずに古逹磨

     麦めしや第二芸術論とかありき

     はたはたや骨の髄まで日本海

     妣と考と共にありけり大根干す

     秋夕や立ちて動かぬ野の煙

     幸せになりたい形絹手袋

     吹く前に麦笛すでに鳴ってゐる

     ふところに寒灯一つありにけり

     雪やなぎ揺るるはこころ触るるとき

     菜の花に冷たき風はなかりけり

     花芒揺れゐて童話の里となる

     天空をわがものとして曼珠沙華

     ひぐらしの声冥王海王星 

     葱の香やふくよかなりし母の顔

     過去帳をまはりまはし走馬灯

     さざ波の上にさざ波水芭蕉

     新巻の売り声塩を飛ばしくる

     焼芋や戦後といふ日ありにけり

     着るものは己が影のみ冬の滝

     ぶらんこに乗る少年になりたくて

     鰻喰う日本人でよかつたなあ

     観音のまなざしやさし露の玉

     一徹に一縷に夜半の虫の声

     葭切のよく鳴く空が晴れるまで

     他人事のやうな顔して遠花火

     行人にあくまでやさし蕎麦の花

 

 

 

 

              

                                                photo:  k. mukumoto

                                                        早春や海に降りくる空の冷え    平井照敏