三木句会ゆかりの仲間たちの会:有馬英子第一句集『深海魚』より | sanmokukukai2020のブログ

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   三木句会ゆかりの仲間たちの会:有馬英子第一句集『深海魚』より  

 

 

   有冨光英氏による『序』より(つづき)

 

    素材と心情との交錯に独自の発想を見せるようになったのは、彼女の人と為りに純粋

   抒情の精神が備わっているからであろう。加えて女性という属性も十分に意識の上に入

   っている。

 

   秘めし名を小さく記し秋めきぬ (P18)

   明日会える白靴みがき念入りに (P23)

   少年に会えずに帰る落葉坂   (P61)

   秋蝶や忘れたふりの恋心    (P82)

   落葉道きれいな嘘の積み重ね  (P82)

 

    彼女の作品に創られたものがあったとしても、それは”きれいな嘘”であって決して”汚い

   嘘”ではない。自己を表白するのにも心は澄んでいるのである。

 

   啓蟄や二本の足では足りぬわれ  (P63)

   香水と濃いマニキュアで武装する (P97)

   贋作の我かもしれぬ初鏡     (P102)

   この先は笑うしかない枯野原   (P110)

 

    歩行困難になったとはいえ、彼女は健常者以上の健全な精神の持主である。これは偏に

   ご両親の薫陶の賜であろう。そのご父君も平成五年に亡くなられた。私の同期生であるか

   らまだまだ生きていて貰いたかった。その上、ご母堂も発病、入退院を繰り返していると

   いわれる。常人ならば意気阻喪するところであろうが、彼女はこの逆境に敢然と立ち向

   かった。逆に私達を叱咤するように強靭剛気なのである。(つづく)

 

 

        < 早くも英子さんの三回忌です。ご命日の11月21日は、

         英子さんとの思い出を辿りご冥福をお祈りしたいと思います。>

 

  

             

                                                photo: y. asuka

                                            霜解のインク瓶より生れし雲   有冨光英