三木句会ゆかりの仲間たちの会 ー 有馬英子第一句集『深海魚』より  | sanmokukukai2020のブログ

sanmokukukai2020のブログ

ブログの説明を入力します。

   有馬英子 第一句集『深海魚』より

 

   今回の20句は、平成9年~10年の作、英子さん48歳くらいの時期です。健常なら、女性と

   して気力体力の充実した時期と言えましょう。けれども、これらの句には、どこか諦念が

   感じられはしないでしょうか。かと思えば、アンパンの臍や口笛に新米が炊き上がったり

   と、女性らしい目の付けどころが愉快で闊達な句も。久しぶりに英子さんの力強い書を鑑

   賞したくなりました。『進』の1文字を選ばれた英子さんの心境を思います。彼女には進む

   べき1本の道がはっきりと見えていたに違いありません。🌹

 

   春眠の深きに獏も近づかず

 

   アンパンの臍を隠して花見かな

 

   陽炎に分身の術教われり

 

   回らぬと決めても回る風車

 

   筍や見ぬ間に育つ他人の子

 

   蜘蛛の糸すでに一人が堕ちてゆく

 

   百合開くかすかに骨をきしませて

 

   蜥蜴去るここでのことは内密に

 

   ジェラシーで溶け出す赤いかき氷

 

   空に舞ういわさきちひろの夏帽子

 

   蝉鳴くや手紙の返事急ぐべし

 

   蝉時雨まず私から泣きやみぬ

 

   カステラに刃こぼれしたる残暑かな

 

   底なしの瓶に水注ぐ夜長かな

 

   朝顔の紺こんこんと湧きいでり

 

   洋画紙を横切ってゆく秋の雲

 

   笑うのも少女のしごと木の葉落つ

 

   臍の緒とつながっている通草かな

 

   くらがりはやすらぐところちちろ鳴く

 

   口笛を吹いて新米炊き上がる

 

 

 

 

                              有馬英子書