どうやったら自分を感動させられるのか?御修行体験を楽しんでください。 

 

 

 

『一日御修行で伝えられること/自分の形、自分だけの形を作る』

 教えて差し上げることは何もありません。重要だと信じていることをお伝えはしますが、それをどのように解釈し、どう感じ取れるかは、ご本人に委ねております。

 誰にとっても共通の正解などありません。ご自身にとっての答え、誰と比べる必要もない自分だけの正解を、どうぞ見つけてみてください。

 

『精進料理教室では伝えないこと、伝わらないこと』

 通常行っている精進料理教室では、作務の時間を取りません。作務を単なる掃除や後片付けと受け取る方がほとんどです。大半の参加者にとってはそんなことよりも、料理のレシピを知ることや調理体験の方が重要だからです。一部の方の希望のために、多くの方の時間を奪うことは出来ません。

 

 しかし三光院の文化では、その季節ごとの献立において、当日、境内の清掃をした人間が盛り付けを担当するという習わしがあります。立場が上の人間や、料理が得意な調理担当者ではなく、作務実践者が最終盛り付けを担う一品が混じるのです。

 これは非効率的な作業かもしれません。実際に効率だけを考えればそうだとも言えます。それでも三光院ではそうしています。

 なぜそうするのかは、自分で感じ取ってみてください。一度で感じ取れる方もいれば、どれだけやっても感じ取れない方もいらっしゃると思います。前者が良くて、後者が悪いわけでもありません。

 文化的価値集団は無数に存在します。その全てに混じることは出来ません。合わなければそっと離れば良いだけなのです。合う合わないも経験しないと分からないことですから。

 

『レシピより重要なもの』

 レシピは教室同様に用意しておきます。初めての体験には指針も必要だからです。

 しかし、ご縁で準備する食材だって一様ではありません。同じ季節のお野菜だとしても、その水分量も糖度も個体ごとに差はあります。また、本日の料理はご自身で味わいます。

自分の好みは自分が一番理解できるものです。レシピの語源は「命令を受け取る」から来ているようですが、誰かの命令より、ご自身の感性を信じてみてください。

 また三光院には飾り花、快敷というお皿を彩る食文化がございます。これについても、誰かと同じにする必要は全くないのです、自分流を楽しんでみてください。

 

『御修行で何を体験するのか?』

 御修行という表現の仕方は、三光院では「今ここを楽しまなくちゃ!」みたいな雰囲気で使われる言葉であり、荘厳なこととしてではありません。調理で悪戦苦闘したとしても、料理は楽しんでください。その上で一日を通して、以下のように作務を行ってください。

1:ここをこうすればより美しくなるという箇所を自分で見つけて清めてみてください。

2:極力音をたてずに(声は御自由にどうぞ)全ての用具、設備と大事に接してください。

3:来院してきた時より清潔整理整頓された場を作ってから帰宅してみてください。

 御修行で得られるものは人それぞれです。その上で基本として身に付けてほしい力は以下の三つの力です。過去の自分と違う思考と行動で挑んでみてください。

1:理不尽対応力:理不尽は不満を表明するものではなく、対応するものです。

2:矛盾対処力:矛盾は指摘して終わるものではなく、黙々と対処していくものです。

3:柔軟継続力:最初の理想(思い込み)から離れた結果も、楽しんで許容しましょう。

 自らをどうやって感動させるか。感動を主体的に探してみるのが、御修行の第一歩です。

 

□下記は再録

 

 資格を得るための学校、修行道場は多く存在します。それはそれで価値があることです。

 

 三光院の星野香栄御住職様も、埼玉の平林寺で修行をされました。住職になるのに、資格が必要になったからです。一方で米田祖栄和尚様は資格など取得していません。三歳で家を出て、五歳で曇華院に入寺し、二十九歳で三光院の住持に招かれたわけですが、曇華院は臨済宗単立寺院ですし、招かれて三光院に来院した当時にはそのような制度もなかったからです。形は一様ではありません。

 

 星野香栄御住職は男僧寺において、女性一人だけで体験された修行経験を面白おかしく語っておられました。女性なので特別待遇で個室が用意されたので、他の雲水たちが冬の寒さに痺れる間も、登山用の防寒布団を密かに持ち込んで一人ぬくぬくと眠っていた!などの逸話は数多いです。もちろん、その背景には辛い経験も多くあったと思われますが。

 

 「修行は辛いものですか?」

 一般の方がこのような疑問を宗教家に投げかける場面はよく見かけます。苦行などのイメージがあるのでしょう。それに対して修行がいかに厳しいか、大変かを力説される方もいらっしゃる。

 

「朝早くから料理を作るのは大変じゃないですか?」(西井先生は毎朝五時前から台所に入るゆえ)

「これだけ境内が広いとお庭掃除も大変ですよね?」(八十を越えた西井先生が現在でも一番時間と金銭を境内清掃に使っているゆえ)

  このような質問を西井香春先生もよく投げかけられています。一々返答されないことも多いですが、質問懇談会などの場面でおっしゃるのは至極簡単な心がけです。

「御修行と思えば、なんでも楽しめるじゃない?」

 

 これもまた文字で伝えるのが難しいのですが、御修行(ごしゅぎょう)と読みます。なんとなくそこには、一種の滑稽さも含めた朗らかな雰囲気も纏わされているのです。

 これもまた伝えることは出来ても、教えることが出来ない類の一つになります。

 

 辛いこと、苦しいことを尊いこと、価値あることだと考える方々がいるのは結構なことです。同様に、楽しめること、喜びを分かちあえることが尊いと考える方々がいるもの当然なわけです。それは修行という期間に限っても、になります。

 三光院では、どちらかといえば、後者の雰囲気もありますが、正確にはどちらも重要と考えますし、もっと正確にはそれぞれがどこに重きを置くか、自分で形を作る、ということを最重要視します。

 

 三光院の山門をくぐると、すぐ左手に箸塚があります。箸塚の揮毫をされたのは河合貫道和尚。貫道和尚は修行で何を身に付けるかについて次のように語っておられました。

 

「修行で得るものは、修行を体験した者が見つけるもので、例え師匠であってもその正解を授けてあげることは出来ない。

 ただし、根本の方向性が何もないとただ無駄に迷って、意味のない期間を過ごしてしまうことにもなり得る。だから誰もが身に付けるべき力については教えておく。

 

一、理不尽対応力

一、矛盾対処力

一、柔軟継続力

 

 修行においてはこの三つの力だけはまず身に付けるべきだ。その上で何を得るかは個々による。

 理不尽や矛盾を指摘する人間は多い。「そんなことは理不尽だ!」「それは矛盾じゃないか!」と声高に糾弾しようとするのは現代人の本能になっている。

 理不尽や矛盾はあってはならないもの、なくすべきものと考えているのでしょうが、世の中には決してなくならないものも多いのが実状。矛盾や理不尽も同様。

 であるならば、矛盾や理不尽はある前提で、それにどう対応対処していけるかを考えた方が良い。修行に挑むからには、自ら矛盾や理不尽を求めていくくらいが丁度良いはず。

 

 そして大半の人間は初志貫徹が出来ない。それは最初に思い描いた道筋が自分の理想であり、それを外れると失敗したと認識してしまうから。初めに想うのは志であって理想ではない。辿り着いた場所が理想になるってことを理解できていれば、修行に限らず、物事を続けていけるようになる。

 

 大雑把には上記なようなことを仰っていました。全くその通りで、そしてその方法はやはり個々によるから、教えることが難しいのです。

 職業として僧侶を選んだ者が、修行道場を結局資格取得の場所と捉えてしまうように、資格、形に拘ってしまうのはどんな業界界隈にもあることだと思います。

 

 例えば西井先生の通信教育は今でも人気ですが「これで精進料理の資格まで取れるんですね!」と、料理を食べたついでに知った方が喜ばれることもあるのですが、あれは遠方で通えない方のために出版社が作られたもので、資格を取得することが重要なわけではないはずなのです。

 

 

 

 三光院からは、米田祖栄、星野香栄、西井香春の名前で多くの書籍が世の中に出ています。そこには詳細な調味料数値なども記載されているのですが、実はそれらの数値を祖栄和尚様から重要視していません。それはなぜか、はまた別の機会にお伝えさせてもらいます。

 

 本来無一物、作務禅の始祖とも言われる慧能さんのお言葉です。何もない、ではなく、個々それぞれ自分だけの形しかない、が適当な解釈と思われます。自分の形を作る、ことに意識を向けてみると、作務禅が理解できるかもしれません。

 

 定期作務禅会において、第三金曜日より、第一土曜日は毎回ちょっと参加者が少ないのは、きっと形がなさすぎるからなんでしょうね。

 

注意:第一土曜日は完全に自由に近い形で参加してもらってます。自由集合自由解散。第三金曜日は主に竹垣修繕を中心に混ざっていただきます。禅語の短いお話も共有させてもらっています。しかしどちらかといえば何もないところから、自分で考えて、自分の形を作る、が基本です。いずれの参加も老若男女歓迎中です。十四時過ぎに十月堂前にお集まりください。かしこ。香支

 

▼今春より復活『禅と精進料理教室』 精進料理教室より敷居を高くなっております。料理を学びたいだけの人にはお勧めできません。

 

 

 

 

 

▼解説付き三光院精進料理