(3)搾取は「企業競争力の強化」という大義名分で行われる  その1/5 | 産経新聞を応援する会

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(3)  その1/5

現在、企業競争力を強化せよと言う「大号令」が世の中を席巻しています。企業が生き残れなければ、雇用も何も無くなるのだから、とにかくまず企業を生き残らせることを考えよと、そのためにはあらゆることが正当化されるという論法です。

かつて、アメリカのデトロイトの自動車工業は、日本と競争に敗れ、売り上げが下がったにも関わらず、労働組合が給与水準と社会保障の水準を下げることに反対したので、結果として、多くの自動車工場が廃業に追い込まれたということがありました。日本の日産自動車も労働組合の力が強く、労使交渉がなかなか進まなかったため、フランスの自動車会社ルノーに買収され、却って大幅な人件費の削減や下請企業の再編成が行われ、それで日産自動車はなんとか生き残ったといったこともありました。こうしたことが前例となり、現在、企業を生き延びさせるための企業競争力は錦の御旗となり、企業競争力のためには、企業のあらゆる努力が正当化され、その中でも、人件費削減は当たり前、企業も死ぬほど努力しているのだから労働者も死ぬほど努力しなければならないという風潮が出来上がったのです。

しかし、私達は、デトロイトの自動車会社の労働者がどれほどの給与をもらい、株主や経営者がどれほどの報酬を受け取っていたか、分配が適正に行われていたかどうかを知りません。日産自動車がルノー社に売却された理由もよく知りません。しかし、そういう個別の事情は、今となってはもはやどうでも良くなりました。問題は、企業は生き残らなければどうにもならないので、生き残るためにはどのような手段も正当化されるという風潮になってしまったということです。

企業競争力の要素は①品質②価格③株価の三つです。①品質の良さは日本の企業なら当たり前のことであり、企業競争力がどうこういう問題ではありません。そのために民間の研究者や労働者がどれほど頑張っているかは、日本国民なら良く知っています。もちろん、中長期的視点での国際間での品質競争の問題はテーマとしては重要なものですが、そこは、民間の努力のいかんにかかっており、政府が関与出来るものではなく、政府が関与すべき余地もありません。まあ、科学技術の研究に補助金を出すことは出来ますが、これは、企業競争力の問題とは若干異なります。

では、安倍政権が企業競争力強化と言っていることの意味は何かというと、②価格を下げることと、③株価を上げることに協力する政策なのです。それ以外に、安倍政権で出来ることは何もありません。安倍政権は、平成二十五年十月の臨時国会に産業競争力強化法案」を提出しました。この法案には、特定企業に対して規制を免除したり、減税したりして、政府主導によってリストラやM&Aを推進内容が盛り込まれていますそして、政府が企業の事業再編や不採算事業からの撤退などを促進させると明記する一方、事業者に対しても、経営改革や生産性の向上を義務づける内容となっていますこの中で、驚くべきは、政府は労働者への労働分配率を高めるよう、つまり、賃金を上げたり、雇用を増やすことを要請しているのではなく、逆に、市場原理に従って、「解雇などの合理化を進め、企業競争力を高めよ」と言っていることです。経産官僚には、これま日本の製造業の競争力は低下するばかりという苛立ちが募っていたのが、第二次小泉構造改革とも言える安倍政権になり、同省主導の法案提出が実現したということのようです他方で、安倍政権が解雇特区を創ろうなどと言っているのは、政府や官僚の内部では、安倍政権の新自由主義的な特質から規定の路線です。「知らぬは国民ばかりなり」ということです。しかし、すでに、民間企業の現場ではできるだけのリストラを行ってきており、労働分配率もこれまでになく低下させています。人件費削減も極限まで行われています。それでも、机上で数字しか見ていない官僚は、まだまだ解雇や人件費削減ができるはずだと言っているわけです。

→続