-2-(4)日本の金融政策に立ちはだかる地価下落 | 産経新聞を応援する会

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2.国民を幸福にしない資産政策

(4)日本の金融政策に立ちはだかる地価下落

日本は出来るだけ早期に景気回復のためにケインズ政策を行わなければならないわけですが、その前に、2つの制度的欠陥が日本の経済成長を妨げる呪縛となっているので、ケインズ政策に着手する前に解除しておかなければ、ケインズ政策も奏功しないという話です。その2つの制度的欠陥の一つが前述した金融検査マニュアルによる間接金融の機能不全です。そして、もう一つが、バブルの反省とやらによってもたらされた固定資産税の重税化による地価下落です。

とりわけ、地価下落が障害となります。地価が信用に値するようになれば、金融機関も土地を担保とする融資でビジネスチャンスが増えますから、金融機関も金融検査を緩和してくれるよう金融庁に頼み込みます。そのときは、さすがに金融庁も土地を担保とする債権のリスク査定を緩和せざるを得ないでしょう。逆に、地価が脆弱な環境では、金融検査の緩和をやろうとしても実態が伴いませんから、金融検査を緩和する意味がありません。したがって、地価を安定もしくは上昇させる政策が優先するのです。

失われた20年とは、地価下落を推進する政策によって起こったものであり景気循環の問題でもなければ、若者の価値観が変わって欲しいモノがなくなったとかの精神論的な問題でありません。単に、破壊してはならない部品(土地資産)を破壊したために、機械(資本主義)が機能しなくなったというだけのことなのです

金融における国民の信用力という点において、地価は株価と同じくらい、いや、株価よりもっと重要な資産であり、「地価の上昇は悪である」という認識は「株価の上昇は悪である」であるという認識以上に、経済学的にオカシイ話なのです。

地価とGDPはスパイラルして上昇するのでなければ、あらゆる経済的な上昇はありえません。株価ではなく、その相手は地価でなければならないのです。その理由は、間接金融の担保が土地以外になく、土地担保によってしか信用創造がありえないことにリンクしています。これは公理ですから各国の土地政策の違いによって見えにくい面はありますが、アメリカであろうと、EUであろうと、中国であろうと、土地の担保力とGDPはスパイラルして経済成長しています。

地価下落政策は最初は金融面において不具合を生じさせ、GDPを拡大するときにブレーキとなります失われた20年のスタートはバブルでした。バブル崩壊後の20年間、少しは景気循環によって景気回復の兆しが見られても良いはずですが、それすらもありませんでした。国際的な景気循環の影響があってさえも、日本の景気は良くならないのです。アメリカの住宅バブル(2001年から2006年まで)の影響によるいざなぎ景気越え(2002年2月から2007年10月までの57カ月間)の景気も、ダラダラしたもので、国内企業にとって景気回復というには程遠いものでした。逆に労働者の賃金は下がっているのです。のことは、小泉構造改革の新自由主義的な緊縮財政政策によって防衛費、社会保障費、公共投資が削られてきたことにも大きな原因がありますが、少なくとも、小泉構造改革の頃から長期金利1%台前半の金融緩和政策は続けられているのですから、いくら、財政政策の体たらくがあったとしても、民間金融機関による信用創造は活発になっていなければおかしいのです。

景気が回復するときは、本来なら地価上昇による資産効果が国民多数に波及することではじめて景気回復が実感できるのですが、今回のいざなぎ景気超えの景気でも、地価が上昇しなかったため、不発のダラダラ景気となり、産業部門を中心とする経済成長に繋がりませんでした

たまに、東京の地価は上がったり下がったりしていますから、経済学者がこのときテレビのニュース番組に呼ばれて、「地価が上がり始めたのは景気回復のきざしだ」とかのコメントを聞くことがあります。しかし、このときも、地価の上がり下がりは景気循環によるもので、「地価下落が20年連続しているのは、デフレ不況が20年連続していることによるものという前提に疑問を持っているそぶりは全くありませんでした。おそらく、経済学者は、グラフばかり見ていて、中小零細企業が金融機関からお金を借りることができない経済の実体においても、そのグラフから理由を探し出そうとすることをやめないのであろうと思われます。グラフばかり見ていても解からない世界があるのです。

学者の脳裏に地価の下落が普遍的であるのはなぜか」という懸念がまったく存在しないことから、「地価に不当な負荷がかかることによって地価が上昇できない」のではないかという疑問もまた一切起こっていないのです。ただ、麻生太郎氏だけは、「デフレだから地価が下がる」という命題が逆転しており、逆に、「資産デフレが消費市場のデフレを引き起こしている」ことを見抜き、自らの講演会で繰り返し指摘しています。麻生太郎氏自身が地方の企業家であり、地方の中小企業や地方住民が、地価下落で私有財産を失い続けて来たことの逆資産効果が消費市場に延々と働いていることを目の当たりにして来たからです。

麻生太郎氏は、「バブルをハードランディングさせた最初の政策は、1990年の不動産融資を規制する総量規制が、その総量規制は産業界の要望から翌年には形式的には緩和されたものの事実上の不動産融資は押さえられ、1994年に国会を経ることなく、自治省(今の総務省)通達だけで固定資産税評価額を大幅に引き上げさせ、地価下落政策が日本経済の長期凋落を決定づけた。」と言及しています。

大蔵省(今の財務省)は、増税は大蔵省の権益をを拡大するため、どのような増税も良いことだと、増税に積極的であったことは想像に難くなく、国会を経ることなく、自治省(今の総務省)通達だけで固定資産税評価額を大幅に引き上げさせたのです。この時、流通価格を課税標準とする土地固定資産税だけでなく、再建築価格を課税標準とする建物固定資産税もいっしょに引き上げられ、収益力の反映たる流通価格と均衡し得ない建物固定資産税が地方の地価を下げ続ける大きな要因となりました。

当時、すでに地価が下がっていた時期ですから、財務省は、日本経済に対して、瀕死の重病人を上から踏みつけるような政策を行ったのです。さらに、1999年に公表された金融検査マニュアルによって、明確に土地を担保とする融資を規制されましたつまり、土地資産を積極的に評価しないよう指導したのです。これは経済の自殺といっても良い出来事です。このことによって、民間の金融機関においても、土地への関心をなくし、地価を上げようとする意欲も完全に消し飛びました。

株価は企業の純資産額ですから、当然ながら地価を拠り所にしています。地価が上がれば必然的に株価も上がるのです。また、株価の変動と直接関係のない中小零細企業や個人商店において、お互いにお互いを信用する絆も地価を拠り所としているのです。政府日本人の私有財産を大事にしてやらないと日本人の信用が傷つきます。政府が地価下落を国是としながら、同時に経済を成長させることは無理なのであり、マスコミが偏重している株価を上げることも無理なのです。

土地は、地表面や地中を建物建設などによって利用するというだけでなく、国民の財産として、私有財産制の中心的な役割を担っていて、国民の経済的信用力の中心に位置しています。経済的信用力とは、金融における信用そのものです。金融における信用とは、現に財産を持っているということです。稀な例として、成長可能性という将来形成されるであろう資産を信用することはありますが、多くの中小零細企業や国民の信用を言う場合は、間違いなく、借入現在において担保となる資産を持っているということに他なりません。どこの国でも、不動産は国民の信用の中心に位置する重要な資産なのです。

経済学においては、土地資産は他の金融資産と同様の単なるストックとして位置づけられているのですが、土地以外の資産はすべて債権にすぎないのです。土地だけがリアルな資産であり、したがって、金融機関は土地だけを担保として信用するのです。