人の心は問題の解決をいつも追っているかも知れぬが、矛盾の解決によって問題を解決しようとは必ずしも希(ねが)ってはいない。生活意欲というものは寧(むし)ろ問題を矛盾したまま会得(えとく)しようと希(ねが)っているし、事実それを日々実行している。
(語注:・会得=よく理解して自分のものにする。 ・希う=願う。)
[小林秀雄(評論家)]
ドストエフスキーは矛盾の中にじっと坐(すわ)って円熟していった人であり、トルストイは合理的と信ずる道を果てまで歩かねば気が済まなかった人だ。
(語注:・ドストエフスキー=ロシアの文豪。 ・トルストイ=ロシアの文豪。禁欲主義や私的財産の放棄で知られた。)
[小林秀雄(評論家)]
わかるだろうか。人生に解決なんてないのだ。ただ進んでいくエネルギーがあるばかりだ。そういうエネルギーをつくりださねばならない。解決はその後(あと)でくる。
[サン=テグジュペリ(フランスの作家)]
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現実の生活上の苦しい矛盾や問題を解決できればそれに越したことはないが、そもそも矛盾や問題があることで現実は成り立っていて、矛盾や問題を安易に割り切って解決していこうとするなら、上で言うトルストイの思想と生活のようにその現実は現実離れしたものになるように思う。
上で言うように、矛盾や問題を受け入れ引き受けて生活していける生活意欲・活力・度量をつけることも大事なのだろう。
[追記更新:23/07/08]
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