新医学アラカルト-21.人類最初の無菌手術- | 血液の鉄人の医学と切手のサイト

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1403年にイングランドでシュールズベリーの戦いと呼ばれる内戦があり、その戦いにイングランドのヘンリー王子(後のヘンリー5世:1387~1422)も参戦していましたが、戦いの中敵の放った矢が左目の下に突き刺さり上顎洞から下顎骨まで15cm以上にもなる深い傷を負ってしまいます。

当時の技術では誰も取り出すことはできないと思われていましたが、そこで選ばれたのがイギリスの外科医であり金属細工師のジョン・ブラッドモア(?~1412)でした。

彼は金細工職人でもあり、当時としては考えられない新しい手術器具を自ら作り出し見事に矢を取り除くことに成功しました。

手術の後、傷口をワインで洗浄し傷口に蜂蜜とテレビン油を浸した詰め物を傷口に詰め込み、20日後には傷は完全に閉じたそうです。

これには極めて興味深いことです、ブラッドモアはワインのアルコール成分、蜂蜜、テレビン油を何故使ったのでしょうか?

これらは全て抗菌作用のあるものですが、人類が細菌の存在を知ったのは1676年のことであり、それ以前には感染症の原因がなんであるか知られていませんでした。

※蜂蜜に関しては古代エジプトで包帯代わりに使われており、彼が知っていた可能性はあります※

さらに、無菌手術の概念に関しては、1867年に発表された論文が初であり、15世紀初頭に傷口を消毒して感染症を防ぐという概念や何を用いるべきかをどのように知り得たのか全くもって謎なのです。

このことから彼はタイムトラベラーではなかったのかと言う人もいます。

切手は1984年北朝鮮発行の「ヨーロッパの支配者の肖像切手」の中の一枚で、ヘンリー5世が描かれています。

 




 

 

ジョン・ブラッドモアがタイムトラベラーだったという説は、確かに存在します。

 

その根拠として、以下の点が挙げられています。

1.彼の著書「フィロメナ」には、当時としては考えられないほど高度な医療知識が記されている。


2.彼の開発した手術器具は、現代の医療器具にも匹敵するほど精巧なものである。


3.彼は、15世紀初頭に無菌手術の概念を提唱していた。


これらのことから、彼は未来から過去にタイムスリップしてきたのではないかという推測が生まれたのです。

しかし、この説には以下のような反論もあります。

1.当時の人々は、現代人とは異なる知識体系を持っていた。


2.ブラッドモアは、古代ギリシャやローマの医学書を参考に著書を執筆した可能性がある。


無菌手術の概念は、19世紀になってようやく確立されことは周知の事実ですが、ジョン・ブラッドモアがタイムトラベラーだったかどうかを断定することはできませんが、彼の業績は中世ヨーロッパの医学の発展に大きく貢献したことは間違いありません。