1919年(大正8年)に発表された志賀直哉(1883~1971)の小説に『流行感冒』があります。
この当時は"スペインかぜ"が大流行していて、この小説の主人公の男性は人が多く集まる場所には行かないように気をつけるような人です。
これは現代我々が経験しているコロナ禍とまったく同じ状況です。
ところが、家の女中さんが町で行われた芝居興行にこっそり出かけたことを知り、それに腹を立て首にしょうとしますが、奧さんが取りなしたことから咎めなしとしました。
その後、家に出入りの職人から家族全員がスペインかぜに感染し、高熱を出し苦しみますが、この女中さんだけは無事で家族の世話をしてくれたおかげで家族は助かります。
このことから主人公の男性は女中さんに抱いていた不信感を反省するという内容です。
この小説は、志賀直哉自身が「事実をありのままに書いた」と言っている私小説です。
志賀直哉ほどの文学者であっても病気そのものを客観的に観察することが難しく、目に見えない病原体による病気に対しての恐怖のストレスは強いことからして疑心暗鬼になり、自分勝手になり、他人を批判したり、他人を誹謗する様な行為をしてしまうのです。
今から100年も前の小説ですが、現在手のコロナパニックに置き換えて読んでも何ら違和感のない作品と思います。
志賀直哉の切手は、2023年3月時点でも発行されていませんので彼に関する風景印を以下に紹介いたします
風景印は城崎郵便局(兵庫県豊岡市城崎町湯島532)の風景印で、重文・末代山温泉寺本堂、志賀直哉碑が描かれています。


