風疹発症後の妊娠について | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

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 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 国立感染症研究所感染症情報センターから、「風疹発症後、妊娠までにはどれだけ期間を空けるべきか」という質問への回答が示されました。

 以下に全文を示しておきます。


 風疹に罹った後の妊娠についてのご質問は、これまであまり多くありませんでした。

 風疹ウイルスに感染しますと、一旦体の中で風疹ウイルスが増えます。増えたウイルスは血液を介して全身に広がり、2~3週間の潜伏期(感染してから症状が出るまでの何も症状がない期間)を経て、発病します。発熱、発疹、リンパ節の腫れが主な症状ですが、すべての症状がそろわないこともあります。症状が出ない場合もあり、これを不顕性感染と呼びます。そのため、症状のみから風疹と診断することはとても難しい病気です。

 風疹を発病してそれが治ってしまいますと、体の中に風疹ウイルスに対する免疫ができあがります。免疫ができあがりますと、体の中から風疹ウイルスはいなくなってしまいます。健康な方であれば、治ってから1カ月以上過ぎればまず体の中に風疹ウイルスはいなくなっていると思って大丈夫ではないかと思います。

 先天性風疹症候群は、妊娠初期の妊婦さんの血液中にある風疹ウイルスが胎内の赤ちゃんにも感染して起こる病気です。体の中に免疫がしっかりできあがっていれば、血液中で風疹ウイルスが増えることもありませんので、胎内の赤ちゃんに感染することもありません。風疹を発病して、治ってからの妊娠については、こういった理由から心配は要らないことになります。お母さんの体の中にできあがった免疫(抗体)は、妊娠の後期に胎盤を通して胎児に移行します(移行抗体と呼びます)。そのため、お母さんがしっかり抗体を持っていれば、出生直後の赤ちゃんもしっかり抗体を持って生まれてきます。出生後約6カ月程度は赤ちゃんも風疹に罹らずに予防できることになります。お腹の中の赤ちゃんに生まれる前からの免疫というプレゼントになります。

 風疹に罹ったことがない人がワクチンを接種すると、妊娠中にしっかり免疫をもつので、妊婦さん自身の予防にも繋がり、胎内の赤ちゃんの予防にも繋がり、更には、生まれてしばらくの間、赤ちゃんにお母さんからの免疫が残ることから、ワクチンを受けていない赤ちゃんであっても生後半年くらいはその病気から守られるということになります。ワクチン接種後2カ月の避妊期間をお願いしているのは、風疹含有ワクチン(麻疹風疹混合ワクチンで受ける人が多いと思います)は、生ワクチンの種類に分類されますので、接種後は一旦、体の中でワクチン用に弱められた風疹ウイルスが増えます。その時に妊娠していると胎内の赤ちゃんに感染する可能性があるから、2カ月間の避妊をお願いしています。なお、妊娠していることに気づかずにワクチンを接種してしまった方から先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれたという報告はこれまでにありませんが、理論的なリスクを考えて、妊娠していない時にワクチンを接種した場合、その後2カ月間の避妊をお願いしています。

 なお、風疹と思っていてもそうではないよく似た別の病気という場合がよくありますので、風疹かどうかの診断は必ず血液検査などで、体の中に抗体ができあがっているのを確認していただきたいと思います。


 私のコメントです。

 風疹の流行が伝えられる昨今ですが、上記の回答は、風疹発症後の女性や風疹ワクチン接種後の女性が、妊娠を望む場合にどの程度の期間避妊をすればよいのかを示してくれるものです。

 風疹発症後は1ヶ月、風疹ワクチン接種後は2ヶ月と覚えておくとよいでしょう。

 もしこの記事を読まれた方々の周りに妊娠を望む女性がおられるような場合には、是非教えてあげてください。もちろん読まれた方本人にとって役立つようであれば、もっともっとありがたいと思っています。

 私自身はこうした啓蒙活動も産婦人科医の大切な役目かと思っています。


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