『私立探偵 濱マイク』30周年記念 『罠 The TRAP』 | Blog ばったもんのめっけもん

 

『私立探偵 濱マイク』30周年記念 映画3作&テレビシリーズ上映。今は無き「横浜日劇」2階がマイクの探偵事務所という設定。今も私が黄金町に入り浸ってるきっかけな作品。当時はまだ、女性のみならず一般人が歩くのも憚られる治安だった90年代~00年ごろの黄金町。今は打って変わってアートで町おこしするような・・変な言い方だけども裏暗さが骨抜きにされた場。治安として勿論善いことなんだけども、あの頃の独特の濡れた「色」は失われつつある。とはいえ、横浜日劇に隣接していた映画館=現在のジャックアンドベティは、旧き良きミニシアターという文化を護り続けている。濱マイクの「聖地」として、貴重品の展示やテレビドラマ版の全話上映も。横浜シネマ・ジャック&ベティ、表も中もそんなとこまで濱マイクだった。さらに星野タクシー(?)まで待機してた  



2018年に映画版がCS放送されたとき、永瀬さんが投稿為さってた写真。3作通じて野良犬み溢れてたマイクちゃんが、2作めで親との対決と決別、3作めには愛する女性を守ろうと大人の男性の顔を見せる。永瀬さんご自身が折々マイク愛を発信されてるのが嬉しい。



『罠』で永瀬さん二役の意味をずっと考えてて、あれは結局マイクだったんじゃないかとか、少なくともマイクと繋がる何かの象徴。親との離別という前作からの伏線が、二人に共通する。ちょっとした掛け違い、駒の表と裏。
『罠』のパンフが革新的で、表紙はマイクなんだけど裏表紙は「彼」で、両側から読めるようになっている。冊子の真ん中で彼らは「合わせ鏡」になる。震え・・・。


 

永瀬さん主演『ホテルアイリス』監督のコメント。『罠』におけるマイクとミッキーもそうなのかな・・?と。ミッキーのラストがああいう形だし。二役というのも『合わせ鏡』というのも。 


冒頭で「鉄仮面の男」がマイクにしか見えてないことからして、現実と悪夢の境は曖昧になる。
水月とミッキーの疑似姉弟という関係。姉が弟を庇護する構図。姉の2重人格。弟の知的障碍ゆえの無垢さと異常犯罪者の二面性。マイクのみの指紋。「二面性」は対峙する二人についてと思わせつつ、ポスタービジュアルは、マイクの顔が2色になっている・・。設定のどれかが「if」ならたちまち全体が反転するほどの、作品そのものが「罠」。最後の対決でマイクしか居ないシーンが一瞬映るのが元々ぞっとしてたんだけど。4Kで気づいたのが、最後にミッキーの表情が映るときの水鏡にあるマイクの顔、二人の顔入れ替わってる・・?瞬きの刹那なので勘違いかも。でももしそうなら、二役でそれが出来るの凄まじくないですか。。。


4Kリマスター化で暗がりシーンもくっきり見えるようになったんだけど、顔がはっきりしたことでより一層「別人・・」ってなった。服装もあるけど体型まで違うように見える・・あれは永年うずくまり続けていた未成熟な身体。
最後に一瞬本性を見せるミッキーも、大仰な芝居じゃなくて、瞳が一瞬動くだけ。「知的障害が詐病」を仄めかすのに最小限の表現。その顔もまた、今回険しい表情が続くマイクとも全然違う人という。そもそも二役にあたってカラコンなど特殊メイク予定だったのが、監督が永瀬さんという役者を信じて、髪型を変えただけの「素」で全く違う人物を形成することに成功。初見だと二役ってわからない人も居るらしい。私も途中までわからなかった。


3作通じてマイクの相棒、星野くん。彼との命がけ逃亡劇は空撮やヘリも用いてのみせどころ。
「濱くんが居なくなったら、俺、友達いなくなっちゃうから」は最大の泣き所で、辛くて辛くて、2作めの最後に流れた予告編(実際には無いシーン)の、濱くん星野くんキャッチボールで一本創ってよと思うだけども。そんな懇願を忘れたころに最後流れるアレはすごい。映画版とテレビドラマ版はパラレルになってる設定も多いんだけど、マイクの歌舞伎ジャケットと星野くんが出てくる回があるので「ちゃんと繋がってるんだ」と思える。
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佐野さんと杉本さんが前作と別人の役で。でも同じ人物と想像して観てみるとそれはそれで面白いんですよね。赤い男、仲間になったら百人力だな!!(しかもテレビシリーズでは、みるくの父親)
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2作め完成時点で急遽出演が決まった山口智子さんは、3作めでのキーパーソン。
2つの顔をもつ彼女は精神異常者なのか詐病なのか。現実にも正常と異常の境は曖昧で、その揺らぎにも『罠』がある。
柔らかな美しさと異常性のある微笑に観てるこっちの体温下がるので、『王様のレストラン』3話分くらいで中和する必要がある。
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何が恐いって、抑揚のない小日向文世さんの声(しかも声のみ)
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サブスク解禁で、濱マイクのテーマ聴き比べが聞けるようになった!完結作の劇中で流れる華やかさの96ver.のあと、エンディングはまた違うアレンジになっている。
初代を踏襲してて「結び」になってる感じが好き。

Main Title 
'95 
jet board 
'96 
 ~End Theme~ 



【おまけ】
濱マイク2作めと3作めの間に、永瀬正敏さんが主演したアイスランド映画『Cold Fever』(1995)。両親を弔うため迂闊に渡航した日本人(そもそも真冬に行く時点で間違ってる)が、現地の大自然と人々に翻弄されまくるロードムービー。レパード?!みたいなタクシーの運転手は道中でホームパーティーに参戦したまま帰ってこないし、ようやっと手に入れたシトロエンに乗せたヒッチハイカーは泥棒だし、あげく車はぶっこわれるしで最終的に乗るのは馬という。ハプニング起こりまくりコメディー要素もありつつ、極寒のなかでのあたたかさ、そして、神聖な「弔い」という行いで繋がる文化が描かれる。

永瀬さんのおじいちゃん役で鈴木清順さん!