虎穴に入らずんば虎子を得ず | がんちゃんの雪山讃歌

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石川の山スキーヤーがんちゃんが登山、山スキーを中心とした日常生活や山への想いをつづります。
ヤマレコもやってます。(HN:Sanchan33)

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」ということわざがある。

時に危険を冒さなければ大きな成果を出すことはできないという意味だ。

 

一方で「君子危うきに近寄らず」ということわざもある。

こちらは賢い人は危険を冒すようなことはしない、という意味だ。

 

どちらもそれっぽく聞こえるが言ってる意味は真逆。

どちらを信じればいいのか?と混乱させられる。

 

登山の世界では常にこの二つのことわざのせめぎ合いが起きる。

多少のリスクを乗り越えてピークを獲ろう!となるか、「山は逃げない」と言って勇気ある撤退を決断するか。

先週の乗鞍岳はまさに二者択一を迫られるコンディションだった。

 

天気予報は晴れだったので多くの山スキーヤーや登山者が乗鞍に集結した。

だが登っていくうちに山頂付近はガスに包まれホワイトアウトに。風もそこそこの強風でバス停のトイレから先に進むか、撤退するかの判断に迫られるようなシチュエーションだった。

 

ほとんどの登山者やスキーヤーが撤退を選択する中、無謀だと思われるかもしれないが自分はピークを獲りに行った。

ホワイトアウトの強風で地獄のコンディションであることはわかっていたが、良いトレーニングの機会だと捉えたからだ。

 

では、その時の自分の選択が「虎穴に入らずんば虎子を得ず」だったのか、「君子危うきに近寄らず」のどちらだったのかというと、実は「君子危うきに近寄らず」の心理状態に近かった。

逆の言い方をすると「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の状態ではなかった。

要は、過去の地獄の経験をベースに考えた時に、先週の乗鞍の地獄三丁目は「自分の中でリスクがある状態とはみなされなかった」ということである。

同じ状況でも地獄装備や経験がなければリスクが高い状態に映ったかもしれないが、過去にそれより厳しいコンディションを経験して慣れていれば許容範囲内の行動となる。

ただこれはことわざに当てはめると「何度も虎穴に入って問題ないことが分かっているから安心だ」という発想で、初めて虎穴に入るような場合(=初めてのホワイトアウトとか地獄を経験する場合)は未知でチャレンジングな行動となる。

だから最初は大げさなくらいに潤沢な装備や準備を行った上で、いつでも引き返せる状態で少しずつ慣れていくのがいいと思う。

ドラクエで言うところの、薬草を沢山用意して、HPが少し減ったらすぐに宿屋で回復しながらスライムを倒しまくるというイメージ。

レベルが低いうちにいきなり遠出してゴーレムと遭遇するようなことをしてはいけない。

レベルが上がっていくに伴って徐々に敵(山)も強くしていく。そしてさらに自分の経験値も上げていく。そんなイメージを持っている。

 

ドラクエならザオリクもあるし教会もあるが、現実世界の人間は生き返れない。

絶対にHPがゼロにならないように、慎重に慎重にレベルアップしていく必要がある。(なんのこっちゃ)

 

乗鞍山頂部の地獄。人によってはゴーレムに映るかもしれないし、人によってはスライムに映るかもしれない。要は経験値次第だ。