一度このブログでも記事にしたが、3月14日に発生した乗鞍岳での雪崩事故について再度触れてみたい。
先日日本雪崩ネットワークによる事故報告が発表され、事故の全容が明らかになった。
主なポイントは次の通り。
- 雪崩発生は3月14日の午前10時頃。
- 雪崩に巻き込まれたのは登山者7名と山スキーヤー3名。
- うち1名の登山者が死亡。
- 亡くなった登山者はビーコンを所持していなかった。
- 完全埋没した上記登山者の発見は11時40分頃。雪崩発生から1時間40分後だった。
結果論ではあるが、亡くなった登山者がビーコンを所持していれば周りの登山者がすみやかに捜索、発見につながり命をとりとめた可能性もある。
このレポートによると
登山者のビーコン所持率はとても低く、直近10シーズン(2011-2020)における登山者の雪崩死者の75%が非携帯です。
ということで、雪山に登る登山者のほとんどがビーコンを所持していないらしい。
山スキーヤーの自分からすると雪山に入るのにビーコンを所持していないというのはありえない。恐らく自分だけではなくほぼ100%の山スキーヤーがビーコンだけでなくゾンデ、シャベルも含め必須装備としているはずだ。
山スキーの性質上尾根歩きより谷やオープンバーンなど雪崩発生率が高い地形に入り込む可能性が高いため「雪崩に巻き込まれる前提でビーコンを所持する」ということはあるが、登山者だから、尾根だからといって雪崩に巻き込まれない保証はない。
雪庇の踏み抜きや斜面をトラバースせざるを得ないようなケースなど、登山者でも雪崩に遭遇する可能性は十分にある。
雪崩ビーコンは3本アンテナなら1個数万円程度する高価な装備なので「まあいいか」と省略してしまいがちだが、命はお金には代えられない。ここでケチると葬式代が高くつくというやつだ。
さらによく議論になるのが「ソロでもビーコンは必要か」という点だ。
結論からするとソロでもビーコンは必須だと考えている。
理由は下記4点。
- たまたま雪崩に遭遇した際に他の登山者を救助する可能性があること。
- 同様に他の登山者に救助してもらえる可能性があること。
- 最悪、救助に間に合わなかった際に遺体を捜索する手助けになること。(=家族など、残された人への心遣い)
- プロービング等長時間の捜索による捜索隊の二次遭難リスクを抑えられること。
思い起こせば2015年11月、単独だったが白山で初滑りをしようとしてビーコンを忘れたため泣く泣く引き返した苦い思い出がある。(結果的に立山に転進してパウダーを満喫できたので結果オーライだった(笑))
初冬で雪崩が起きる可能性は極めて低かったと思うが、今でもあの判断は正しかったと思っている。
山スキーヤーは一度遭難事故を起こせばただでさえ世間に叩かれやすい。
山岳遭難保険に入ったり、GPSなどの装備を充実させることにより自分でやれることは極力対策して少しでもリスクを下げる努力をすべきだ。
その中でも雪崩ビーコンの所持というのは雪山に入るものとして当然のエチケットだと思う。
百万貫岩までチャリで走ってビーコン忘れで帰宅した苦い思い出…それほどビーコンは重要な装備だと考えている。