◎佐藤守   「大東亜戦争の真実を求めて 630」 | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

◎佐藤守   「大東亜戦争の真実を求めて 630」

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一方、日本側の大島公使は、建前上「平和的解決」の訓令を受けていたので.こうした京城付近の様子や各国の反応を見て、日本の外務省に、これ以上の後続の派兵を見合わせるように意見具申してきた。

 しかし、陸奥は、予定通りの派兵を継続する覚悟を決めていた。

≪【口語訳】ひるがえって、わが国の内情を見れば、もはや騎虎の勢いができあがり、もう派兵の数を削減するわけにはいかない。

 

 

また清国の外交は、どんな権謀術策で最後には日本を欺くかもしれない。

 

 

また最近の天津や北京からの電報によれば、清国はさらに多くの軍隊を朝鮮に送るために、増兵の準備を急いでいるという情報もある。

 

 

大島公使の言うことも、一面、もっともではあるが、他面、事態はどう変化するか分からないし、もし危機になれば、勝敗の帰趨はすべて、兵力の優劣で決まるので、当初の予定通り、混成旅団を速やかに派遣するのが安全の策と考えた】

 先のことはどうなるか分からないし、最後に決め手となるのは兵力バランスだという冷徹な判断である。

 

 

もちろん、ここまで考えるにあたっては、壬午、甲申の二乱で清国の権謀術数にしてやられた経験があることはいうまでもない。

一方、大島・袁世凱の相互撤兵交渉は順調に進捗し、公文の交換直前までいってしまう。

 ここで公使館次席の杉付濬は考えた。日本政府がこれほど多くの兵を送ってくるというのは、何か特別の意図があるのであろう。

 

 

日本兵の存在が目立って評判が悪いという朝鮮における現状だけを考えて、派遣兵力を制限するようなことをしてはいけないのではないか……。

 この確信は、六月十六日に仁川に上陸した大島義昌旅団長に会って、ますます強くなった。杉村は、同日、仁川から京城に帰任するや、大島公使に話して公文の交換だけは取りやめることにした≫

 これこそが外交と軍事の“以心伝心”と言うものであろう。当時の日本人は、たとえ軍人であろうと、外交官であろうと、置かれた状況下における判断力が如何に優れていたか、と言う証左である。

 

 

その根源には共通した「愛国心」があったのだ。岡崎氏も言う。

陸奥の心中と、杉村の読みはピタリと合っていた。電信の連絡が悪く、不通のことが多かったし、また高価な電信代の節約のために十分、意を尽くせない短文しか送れなかった当時だけに、この緊急事態における両片の呼吸が合っていたことは、どれほど事態の進展に寄与したかわからない。

 こうして兵力は予定通り派遣することになったが、そうなると、この派遣軍の事後の措置をどうするかが、外交の苦心の存するところである。

陸奥は、「蹇蹇録」第三章をこう締めくくっている。

【「口語訳」わが閣議の方針は、外交では受け身の立場を取り、軍事ではつねに機先を制しようとしたため、このようなギリギリの状況の下において、外交と軍事の間をどうやってうまくやっていくか、

 

 

関係者は、惨憺たる苦心をしたものであり、今これを思い出しても、ゾッとして身のすくむような思いがする。

 今や、日清両国の軍隊は、同じ朝鮮国内にはいたが、駐屯地が離れていて衝突の可能性はなく、東学党も表面的には鎮静した形となっている。

 

 

その中で日清両国軍は、互いに猜疑と希望をもって相対峙している状況であり、外交交渉で両者が釈然として撤兵することはまず望めない。といって、たとえ外見上の口実であっても何か理由がなくては、

 

 

交戦が始まるべくもなく、ここでは、なんとか外交上の工夫で状況を一変させるほかは、事態を救う余地がなくなってしまった】

さて、陸奥の秘策とは何であろうか≫

岡崎氏は続いて「朝鮮改革案は清への最後通牒――戦争も辞さない決意の提案」の項をこう続けている。

≪ここで、伊藤と陸奥の協議の結果、六月十四日の閣議で、伊藤自ら手書きで閣僚に示したのが、日清開戦に重要な意味を持ついわゆる朝鮮の内政改革案である。

 その内容は、「朝鮮内乱は日清両国の軍隊共同勠力して速やかにこれを鎮圧すべし、乱民平定の上は同国の内政を改革するため日清両国より常設委員若干名を朝鮮に派出し、

 

 

大略同国の財政を調査し、中央政府および地方官吏を沙汰し、必要なる警備兵を設置して国内の安寧を保持せしむべし、同国の財政を整頓し出来得るだけの公債を募集して国家の公益を起すべき目的に使用せしむべし」

 つまり?朝鮮内乱は、日清両国の軍隊が協力して速やかに鎮圧すること、?内乱平定の上は、朝鮮内政を改革するため、日清両国から常設委員若千名を朝鮮に派遣して、同国の財政を調査し、中央や地方の官僚組織を整備し、必要な警備兵を置いて国内の秩序を保持させる、

 

 

?朝鮮の財政を整理して、できるだけ公債を募集して国家の公益になる目的に使うべし、というものだつた。

 

 

同案の直接の目的は、在韓の日本軍に、駐留を続ける正当な口実を与えることにあったことは、前項で陸奥が正直に書いている通りである≫

今、切迫している半島情勢解決に向けて、日米韓と中国が火花を散らしているが、米中はもとより日中双方で解決できるであろうか?(元空将)