奥山篤信 イギリス映画『あなたを抱きしめる日まで(Philomena)2013 | 護国夢想日記

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奥山篤信 イギリス映画『あなたを抱きしめる日まで(Philomena)2013

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マーティン・シックススミスのノンフィクション本『The Lost Child of Philomena Lee』を原作としている。アカデミー賞作品賞・主演女優賞・脚色賞・作曲賞部門でノミネートされた作品である。



僕の観点から言えば、この作品こそ作品賞を受賞すべきであったと考える。きっとカトリック界からの攻撃を恐れてかもしれない。実際この映画を<カトリックへの悪質な攻撃>とある批評家が述べ、それに対する反撃もかわされたらしい。


確かにこの映画は戦後まもなくのアイルランド修道院の血も涙もないやり口そして現代に至るまで反省も悔い改めもない事実に対して、主人公のジャーナリストが<まるで奴隷収容所の奴隷としてのシスターが道ならぬ恋をした弱みにつけこみ、その私生児をシステマティックにアメリカの富豪に売りつけた恐るべきシステム>と言わしめた側面は確かにある。

しかしこれをもとにカトリックを攻撃していると解釈するほうが、浅はかなキリスト理解であり、それこそまさに偽善と欺瞞である。


映画はキリスト(僕はあえてキリスト教とは言わない)の偉大な教え、それは愛、赦しなど、を実にきめ細かく、主人公の男女を通して描いている、まさにキリスト讃歌の映画である。


男はかってはカトリック幼児洗礼、有名なBBCキャスターから政府顧問にまでなったが、解雇され不遇の身と成った、いまは宗教など信じない神なき懐疑主義者である。


女はアイルランド修道院でシスター時代に恋に陥り私生児を設ける。罪深い女として修道院から徹底的に迫害を受け、あげくは大切な子供を奪い取られてしまう。


50年間その息子に会いたく探し求めていた彼女は、ある日秘密を娘に打ち明ける。そしてジャーナリストとの縁で子供探しの旅にアメリカに二人ででかけるのである。


この女こそイエス・キリストの教えの具現者ともいえるホンモノのカトリックでもある。ひたすら子供に会いたい、その愛だけが彼女の支えであり、かかる不遇に対して一切の非難も怒りも爆発させない。


男は社会正義に対して怒りを発散、女はそれをなだめながら二人の道中はまさにキリスト者と懐疑主義者の珍道中ともいえる。


しかも女はイギリスでの下層階級、男は成功者としての上流階級、なにからなにまで異なる生活様式や会話スタイルがこの珍道中に階級的差異による不協和音がかえって微笑ましい。


男は正義感から女に同情する。それが失職後の一発再起という野心から次第に人間としてこの事件を捉えて行く風に変化していく姿が描かれる。まさに女に影響されて、キリスト的愛に最後は行き着くのである。

キリストの教えでの<赦し>とは人間にとって最も感情的に難しい問題だが、悪の根源である元修道院長が一切謝罪せずそれどころか当時のふしだらな罪の償いだと言い切るが、彼女が最後に<私は貴女を赦します>という絶妙のタイミング、まさに彼女はキリスト者として修道院長に勝利した感動の場面だ。

スティーヴン・フリアーズ監督の采配は素晴らしい、そしてコミカルでリズミカルなテンポは一切退屈させない切れ味がある。第70回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門でプレミア上映され、スティーヴ・クーガンとジェフ・ポープが金オゼッラ賞(脚本賞)を獲得した。

しかし演技として女に扮するジュディ・デンチ の映画はまるで神業ともいえる演技で、アカデミー賞主演女優賞を受賞してしかるべきだった!!彼女の演技がなかったら、この映画はここまでキリストの愛を描けなかっただろう。歴史に残る演技力だと僕は考える。
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◎奥山篤信 アメリカ映画『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』(All Is Lost)2013

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出てくるのはロバート・レッドフォードのみであり、会話箇所も存在しない沈黙映画である。『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』はJ・C・チャンダーが監督・脚本家をけつとめたもので、チャンダーはロードアイランド州プロビデンスからニューヨーク州の通勤の際にアイデアを思いついたという。


このまれに見る映画は若干の独り言やSOSなどはあるが会話が存在しない、このために撮影台本はわずか31ページであった。

『タイム』は本作におけるロバート・レッドフォードの演技を「2013年に公開された映画の俳優による演技トップ10」の1位とした。ロバート・レッドフォードの演技はアカデミー主演男優賞に匹敵すると述べられたがノミネートもされなかった。

僕にとってこの映画は退屈だ。例えば独り住まいの孤独な老人の何日間を無言で描くようなものである。


たしかにレッドフォードの人生経験を凝縮したような表情や動作には、何か余生短い老人が自分の姿を反芻するようなものとして解釈すればこの映画も面白みがあるかもしれない。
10人のうち7人は深い眠りに陥る映画だろう。
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