奥山篤信の映画批評84 アメリカ映画『アメリカン・ハッスル | 護国夢想日記

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奥山篤信の映画批評84 アメリカ映画『アメリカン・ハッスルAMERICAN HUSTLE』2013年

~俗世って欺瞞に満ちた合法的詐欺か!それに立ち向かう詐欺師との構図~

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三月始めに発表される第86回アカデミー賞受賞候補として作品賞・監督賞・主演助演男優賞並びに主演助演女優賞の候補に挙がっている。昨年に続く快挙である。



デヴィッド・O・ラッセル監督は、『世界にひとつのプレイブック』にて昨年はこの映画でも助演を演じるジェニファー・ローレンスが昨年第85回アカデミー賞主演女優賞に輝き、ディオールの純白のローブ・デコルテにて壇上にあがる階段で転んだ姿は、茶目っ気のある彼女らしく記憶に新しい。



デヴィッド・O・ラッセル(David O. Russell 1958年生)は、父親はロシア系ユダヤ人、母親はカトリックのイタリア系の間に生まれ、アマースト大学で政治学と英語を学び、1987年に短編映画 Bingo Inferno を制作。


初の長編映画である1994年のコメディ Spanking the Monkey でインディペンデント・スピリット賞やサンダンス映画祭観客賞を受賞。


その後、湾岸戦争をテーマにした『スリー・キングス』や哲学コメディ『ハッカビーズ』を監督している。また、イラク戦争に関するドキュメンタリー Soldiers Pay も制作している。

この監督の素晴らしさは、いつも底抜けに明るい人間愛と正義感があるところだ。『世界にひとつのプレイブック』も感動的なシナリオであったが、単細胞のアメリカ映画とは異なり、物語にひねりと工夫がある点が異なる。


僕はオスカーに輝くことを密かに期待していたものだが、ジェニファー・ローレンスが受賞したのは審査員の余ある評価であったと考える。

この映画は、天才詐欺師、汚職政治家達、それにFBIのおとり捜査を絡めながらの社会風刺劇としてコメディタッチで描いている。いま僕たちが生きている俗世は法治社会とは言え、よくよく考えたら、単に支配階層や資本家たちが、権力を維持し、富を築く為にあらゆる仕組みでがんじがらめと考えることも可能だ。


アメリカなどはまさにそれが極端にでた社会ともいえる。旧約聖書の律法が一人歩きして、<律法のための律法>に形骸化して、やがてイエス・キリストの<律法を否定し、人間の為の愛>を中心とした聖書の流れ、簡単に言えば旧約から新約への成就というのがキリスト教の立場だ。

この映画の面白さは、まさに律法に匹敵するエスタブリシュメントのための法に守られた偽善と欺瞞の詐欺システムに、挑むアウトローの詐欺師との戦いともいえる。


こんなところが、監督の社会批判であり、ある意味で詐欺師たちへの讃歌と僕が解釈する由縁ではないだろうか!

この映画には詐欺師にクリスチャン・ベール、FBI捜査官にブラッドリー・クーパー、市長にジェレミー・レナー、詐欺師であり愛人にエイミー・アダムス、詐欺師の妻にジェニファー・ローレンスそれにマフィアのボス役でロバート・デ・ニーロまで出演して、全員の完璧な演技力で映画を引き締まるものとしている。


だからこそアカデミー賞主演助演男優女優賞候補に4人もノミネートされている。

クリスチャン・ベールがハゲで鬘の肥満体で登場。エイミー・アダムスは服からこぼれんばかりの乳房をちらつかせながらクイーンズイングリッシュを駆使し詐欺を演じる妖艶な演技で登場。


ジェニファー・ローレンスがバカ丸出しの役柄で存在感を発揮する演技、なんと愛らしいアメリカ女であることか! これほど娯楽性を兼ねた社会風刺映画を是非鑑賞されたい。(月刊日本3月号より)

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◎奥山篤信  アメリカ映画『ダラス・バイヤーズクラブ』(Dallas Buyers Club)2013

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ジャン=マルク・ヴァレ監督、マシュー・マコノヒー、ジャレッド・レト、ジェニファー・ガーナー、スティーヴ・ザーン出演してろい、もうすぐ決定の第86回アカデミー賞では作品賞、主演助演男優賞、脚本賞にショートリストされている。

1992年に『ダラス・モーニングニュース』の記事で取り上げたられたロン・ウッドルーフの実話を基にしている。


彼が1980年代当時無認可だったHIV代替治療薬を密輸販売し、アメリカのHIV患者が特効薬を手にできるよう奔走した実在のカウボーイの半生を描いたものである。

ドラマはまさにある日青天の霹靂でHIV陽性と判断され30日の余命しかないと医師が診断したカウボーイの物語である。酒とドラッグとバラの日々の荒々しい不謹慎な男が、神の罰を受けたように死を宣言される。


友人は一斉に感染を恐れ逃げて行く。そのなかで少しでも長生きしたい彼はFDA承認のAZTが如何に副作用が大きいかを知り、治療の為にメキシコの闇の治療医師の下での新しい治療法を発見し、これをアメリカで密売することを思いつく。


当然権力側とFDAが徹底的にこれを取り締まろうとするが、エイズ患者のニーズは大であり、会員制のクラブとして脱法組織にて客を集め成功するが・・・

映画はまさにエイズ患者の悲痛な思いをよそに、冷徹に法の支配でFDA未許可の新薬使用を却下する権力との戦いである。


まさにアメリカの正義とは(アメリカの民主主義をほめるとすればこの正義の戦い)建国以来ある続くもので実にアメリカらしい映画となっている。正義とは法を守ることではない、人間があっての法律だということである。

僕はこの映画を観てアカデミー主演男優賞はマシュー・マコノヒーではないかと確信した。実際彼は21キロも減量しエイズ患者という難役に挑んだのである。
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