At Last I Am Free ("Clear Cut") | Sancantion【喰(SHOKU)レーベル】アルバムリリース情報!
1980年代の初めにRough Tradeというレーベルがレコードをリリースしておりました。確か新宿辺りにそのレーベルの専門取り扱い店があったと思われるのですが,定かでは全くありません。

そのレーベルがリリースしたコンピレーション・アルバムに"Clear Cut"というレコードがありました。このアルバムには,様々なアーティストの曲が収められておりました。所謂ニューウェイヴというジャンルが一般的になる前の時代のことであり,当時としてはほぼ無名のアーティストばかりが曲を提供していたと記憶しております。

わたくしが一等好きだったのは,Girls At Our BestというバンドのPoliticsという曲でしたが,他にも,This HeatやDelta 5,The Gistなど,ほぼ全ての曲がお気に入りでした。ドラムス,ベース,ギター,ヴォーカルの編成を基本としたバンドが多く,音の傾向としては,実にあっさりとしたスカスカのノリが基調で,ロックともポップともアヴァンギャルドも言い表し難いような音が実に心地よかったのでございます。



そんななか,最後の曲だけが異彩を放っておりました。その曲がAt Last I Am Freeです。当時はRobert Wyattという人のことは全く知らず,何故にこんな曲がアルバムの最後に収録されるのかと不思議に思ったものです。

その時代から三十数年間が経過し,"Clear Cut"を改めて聴いてみると,他の曲ももちろん変わらずよいのですが,とりわけ,このAt Last I Am Freeにはノックアウトされてしまいました。何と言いましょうか,人生の酸いも甘いも噛み分け尽くし,あらゆる喧噪と快楽と苦境と安楽と酒池肉林を経験した末に辿り着いたところに,実はごくごく普通の日常生活があったということを,この曲は醸し出しているような気が,勝手ながらするのでございます。