陽明学の研究者で、日本を代表する東洋思想家である安岡正篤氏がその著書の中で、因果応報の法則について書いている。
人間として善き行いを重ねていけば、その人の人生には善い報いがあるということを説いているのである。
善行を積んでいくこと、つまり親切な思いやりの心、慈悲の心で人に接していくことは、私たちの人生において、とても大事なことである。
又、その著書の中で運命についても言及している。
人には運命というものがあります。
人は運命に従って生きていきます。
その生きていく中でいろんなことを思い、いろんなことを実行していきます。
善きことを思い、善きことを実行するのか、悪しきことを思い、悪しきことを実行するのか、それによって運命というのは変わっていくのです。
運命というものは変えられるものなのです。
私たちが人生を生きていく中で、因果応報という法則は間違いなく働いているのである。
つまり、良いことを思い、良いことを実行すれば、運命は良い方向へ変わっていくし、悪いことを思い、悪いことを実行すれば、運命は悪い方向へ変わっていく。
人生では心配事や失敗など、心を煩わせるようなことが度々起きてくる。
しかし、『覆水盆に返らず』の通りで、一度こぼれた水がもとに戻ることはない。
起こってしまった失敗をいつまでも悔やみ、思い悩んでいても、何の解決策にもならない。
すでに起こってしまったことは、いたずらに悩まず、しっかりと反省をして、新しい思いを胸に抱き、新しい行動に直ちに移っていくことが何よりも大事なことである。
また、もうひとつ私たちが陥りやすいことがある。
それは、まだ起こってもいないことをすぐにでも起きそうだと思い、取り越し苦労をしている人が数多くいることである。
くよくよと思い悩んでいると、それが心にもダメージを与え、心の病を引き起こし、それが肉体の病気にまでつながり、人生を不幸なものに変えていってしまう。
私たちは、今生きていることに感謝しなければいけない。
この感謝をするということは私たちの人生において、最も大切なことのひとつである。
人間は決して自分ひとりでは生きていけない。
そんなことは分かっているよ、と殆どの人が言うかもしれない。
しかし、残念ながら本当に分かっている人は意外と少ない。
空気も水も食料も、家族、友人や仕事仲間も、さらには私たちが住んでいるこの地球、この社会など、人は自分を取り巻くあらゆるものに支えられて生きている。
そういうふうに考えたら、そこには自然と感謝の気持ちが湧いてこなければいけない。
感謝の心が生まれてくれば、人生に対する幸せを感じられるようになってくる。
不平不満を持って生きるのではなく、現状のあるがままに感謝して、さらなる向上を目指して一生懸命に努力すべきなのである。
どんな時でも、何に対しても『ありがとう』という感謝の言葉を素直に言えるようにならなければいけない。
心からの感謝の気持ちを言葉に出せば、それを聞いた自分自身も幸せな気持ちになるし、また同時に、周囲の人々も嬉しい気持ちになってきて、穏やかで楽しい雰囲気が作り出される。
逆に不平不満の鬱積したとげとげしい雰囲気は、自分自身にも周囲の人々にも不幸をもたらす。
『ありがとう』という言葉が行き交う素晴らしい環境の中で、一心不乱に夢に向かって全力投球していきたいものである。