「武士」と「騎士」の違い | 坂本龍馬資料館ーRyoma Museumー

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■世界の「戦士」


「武士」と「騎士」は何が違うのか?

一度は疑問に思った事のある方も、いらっしゃるのではないかと思います。

「武士」も「騎士」も、武士は「日本」を、騎士は「ヨーロッパ」を中心に、どちらも自国を守る「戦士」です。

「戦士」とは?

「戦士」とは戦場で戦う軍事的階級にある者を言い、平時においては自国の繁栄や平和に寄与する者を言います。

簡単に言えば、「軍事的に自国を守護する身分の者」を言います。

では「戦士」は日本とヨーロッパにしか存在しなかったのか?

いえ、世界中、長い歴史の中で、各国それぞれに戦士は存在していました。

例えば、映画化もされて有名な古代ギリシアの「スパルタの戦士」
北方の軍事、重商主義精政策、移民などに重要な影響を与えた「ヴァイキング」

その他、様々な「戦士」が存在します。


そういった世界中の戦士の中で「最強の戦士は?」という議題に必ず名前が上がるのが「武士」と「騎士」になり、彼らは独自の道徳観の元、自らの意志で戦った非常に優秀で貴重な戦士です。

「武士」も「騎士」も、世界的に極めて評価の高い戦士になります。

※「武士」については以下の記事もご参照下さい。

■「騎士」とは?


「騎士」とは?

中世ヨーロッパにおいて、主に騎馬で戦う者に与えられた名誉的戦士の称号。
およびそれから派生した階級を指す。
称号としての騎士を騎士号と言います。

必ずしも、騎馬で戦う者だけが「騎士」という訳ではありませんが、騎士のフランス語、「シュヴァリエ」が示す通り「馬(シュヴァル)を所有する男」の意味であり、それは「戦闘馬」を所有するという意味が「騎士」の語源になっています。

ヨーロッパの中世封建社会で、騎馬で主君に従い戦闘に従事する小領主層であり、主君から封土を与えられ「主従関係」を結ぶ人々が「騎士」でした。

「騎士」は馬術・剣術・槍術を中心に 訓練し、国王との関係では爵位を与えられて名誉の印とし、臣従に際しては刀剣で叙任されます。

日本語では「騎士」と呼ばれますが、各国の言語では以下の呼び名で呼ばれます。

フランス語 chevalier(シュヴァリエ)
イタリア語 cavaliere(カヴァリエーレ)
スペイン語 caballero(カバジェロ)
ドイツ語 Ritter(リッター)
オランダ語 ridder(リッデル)
英語 knight(ナイト)

ナイトのみ「従僕」「侍者」を意味する古英語に由来していますが、それ以外は、いずれも「騎乗」を語源としています。

それは日本の「武士」においても同様ですが、戦時中の馬は大変貴重な移動手段であり、数に限りがある為、誰でも乗れる訳ではありませんでした。

「騎乗」が許されたのは、軍を指揮する高い身分の者に限られる為、日本においてもヨーロッパにおいても、騎乗している戦士は大変名誉な者でした。


■「騎士道物語」


中世ヨーロッパでは「騎士道的(シュヴァルレスク)」という言葉が「最も魅力的な男性」を表す言葉でした。

その代表的な人物と言われるのが、「獅子心王リチャード1世・アイヴァンホー・ランスロット・パーシヴァル」だと言われています。

上記の人物達は「騎士道物語」という伝承を吟遊詩人たちによって弾き語りされ広まっていったものです。

あまりに古い伝承の為、はたして実在していた人物なのか?
又どこまで史実なのか?

現在も不明で研究中となっています。

しかし、現在も世界中で愛され漫画やアニメ、ゲームの元にされている事も多く、代表的な物はフランスのカール大帝時代を舞台にした「ローランの歌」、イギリスの「アーサー王物語」が有名です。


■「武士」と「騎士」の違い


日本の「武士」

ヨーロッパの「騎士」

この二つは非常に似ている部分も多く、それぞれの国の守り神として長く自国の安寧をもたらしてきました。

では、「武士」と「騎士」は「国」以外の違いは、どのような違いがあるのか?

先ずその成り立ちについてですが、日本の「武士」については当時の貴族による悪政に反発した「生活の苦しい百姓」が「農園や家族を守る為に武装」した事が主な起源とされています。

そしてヨーロッパの「騎士」は、ガリア地域に移住したケルト人がガリア人社会において「全ての若者」が成人し、「自らの健康さを証明する」為、「槍と盾、ベルト、そして剣を授与される儀式」を受け、部族ごとの「戦闘団に入団した」事が起源とされています。

この「儀式」が「騎士叙任式の起源」と考えられています。

こうした馬や領地を有する「裕福な者」達が騎兵部隊を成し「騎士」になったとされています。


「武士」と「騎士」の大きな違いについては以下の点が挙げられます。


「騎士」は「神の戦士」と言われており、キリスト教信者です。

その為、「主君」とはあくまで契約での主従関係であり、「騎士」が忠誠を誓い仕えるのは「神」になります。

もし「主君」が「神の教え」に背く事があれば、「騎士」は反旗をひるがえし「主君」と敵対する事もあります。

「騎士」が守るべき掟に「騎士の十戒」があり、その中に「LOYALTY:誠実〈忠誠心〉」がありますが、これは主君に対してではなく、神や教会に対してです。

「騎士」にとって、主君は「武士」ほど比重が重くないのが特徴です。


それに対して「武士」は特定の宗教に入信している分けではなく「武士道」の道徳観の元に行動します。

そして「武士」は「王」を支え、「国」や「領地」又その「領民」を守る者であり、その日本国の王は「天皇」です。

そして「武士」は、自分の行動や言動に強く責任を持ちます。

一度心に決め忠誠を誓った主君であれば、それを裏切る行為は恥であり、「主君」が悪政を働く事になれば、その主君を命懸けで正そうとします。
そして、もし己が死ぬ事になったとしても最後まで主君を支えようと考えます。

「日本書紀」や「古事記」によれば、「天皇」は「天照大御神」の子孫だとされていますが、あくまで「武士」が仕えるのは「神」ではなく、「天皇」や「主君」という認識であったと考えます。

以上の事から簡単に纏めますと、「騎士」が忠誠を誓う者は「神」であり、「武士」が忠誠を誓う者は「人」になります。


■「武士道」と「騎士道」の違い

「武士道」は武士の倫理・道徳規範
「騎士道」は名誉を求める精神的規範

どちらも「武士である為に」、「騎士である為に」、その根本を成すものとなっています。

「騎士道」は、勇気・礼儀・名誉を重んじ、弱者、特に女性を守ることを最上の道徳とします。

「武士道」は、忠誠・名誉・尚武などを重んずる士道です。

ここで「武士道」と「騎士道」の違いは、女性に対する考え方が挙げられます。

「武士」も「騎士」も弱者や民衆を守り助ける点は同じですが、日本の武士社会においての考え方は「女性」だからといって特別な考え方はしません。

「武士道」は、男性であっても女性であっても、大人であっても子供であっても、「分け隔てなく」、「困っている人」や「助けを求める者」に手を差しのべるのが武士道における「五常の徳」の「仁」に当てはまる「真心と思いやりを持ち誠実に人と接する」「武士の情け」という考え方です。

それに対して、「騎士道」も助けを求める者に手を差しのべる点は同様ですが、取り分け「レディファースト」とも言われますが、女性に対しての「貴婦人への献身」が「騎士の戒律」にあります。


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騎士の戒律

・騎士たるもの、常に女性を守るべし
・騎士たるもの、真実のみを語るべし
・騎士たるもの、主君に忠誠を誓うべし
・騎士たるもの、教会に帰依すべし
・騎士たるもの、貧しき者や弱き者を慈しみ、擁護すべし
・騎士たるもの、勇敢であるべし
・騎士たるもの、遠征の際は就寝時以外は常に甲冑と剣を身につけるべし

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これは、中世の時代には「宮廷的愛(courtly love)」といって騎士が主君の妻を崇拝し、「婦人の導きを求めつつ奉仕を行う文化」があり、また「騎士」は「キリスト教信者」ですので、「聖母マリア」への崇敬に求める心理から発展したとも言われています。



要約すると「武士道」は「分け隔てなく」助けを求める者に対して「真心と思いやりを持って誠実に接します」が、その分、「女性だからといって、当たり前の範疇を越えた特別な扱いは行いません」

「騎士道」は弱者を守る事を心情とし、特に「女性」に対しては「特別、紳士的で優しい」行いをします。

このような「騎士道」で大切にされた「女性への愛」は、宮廷の中で吟遊詩人によって唱われ、中世ヨーロッパの世俗音楽として広がったと言われます。


又もう一点、「武士道」と「騎士道」には、「武士道」は「五常の徳」を「武士が守るべき倫理観」としており、「騎士道」には「十戒」という「騎士が守るべき掟」というものがあります。


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「武士道における五常の徳」

「仁」とは思いやり、真心
「義」とは正義
「礼」とは礼節
「智」とは叡智工夫
「信」とは信頼
「忠」とは誠を尽くす事
「孝」とは目上の者を大事にする事


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「騎士道における十戒」 

PROWESS: 優れた戦闘力(fighting skills)
COURAGE: 勇気
HONESTY: 正直さ 高潔さ(no weaseling)
LOYALTY: 誠実“忠誠心”(true to your leaders and your friends)
GENEROSITY: 寛大さ(open handedness)
FAITH: 信念(commitment to ideals)
COURTESY: 礼儀正しさ、親切心(dignified and mannerly behavior)
FRANCHISE: 崇高な行い、統率力(noble behavior and leadership)

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■「甲冑」と「アーマー」の違い

「武士」と「騎士」の大きな違いについて、装備している武器や鎧の違い、そしてそれによる戦闘方法の違いが挙げられます。


「武士」の甲冑は、戦国時代の「当世具足」を一例としてご説明させていただきますと、武士が使っていた鎧の中では最も優れた高い防御力を持ち、尚且つ製造が容易で、「軽くて動きやすい」という特徴を持っています。

日本の甲冑は、最も高い防御力を誇る胴当ての下に数枚の金属板を組み合わせた垂れがついており、太腿を保護しつつ「足の動きを妨げない」ようになっています。また、同様の構造で肩にも装甲がついており、「肩や上腕を保護しつつ自由に腕が動く」ようになっています。

また兜やその他の部位に関しても、間接部分が適切に動かす事が出来、尚且つ高い防御力を維持しながら「軽く速く動き回れる」長期の戦いになっても疲れにくい構造になっています。

ただし、間接部分を動きやすくする為に、装甲と装甲の間に「かなり隙間があります」

その為、隙間に刀や槍先の斬擊を加えれば刃が通ります。
結果、日本の武士が甲冑を着て戦う際は、必然的に自由の聞く動きから俊敏に動き、鎧の隙間を狙う「介者剣術」が基本的戦術になります。


方や、「騎士」の装備する鎧は主に「フルプレートアーマー」等の全身を覆う、「ほとんど隙間の無い」鎧になります。

この鎧は、頭と首周りを完全に覆う兜に、肩と腰をしっかりと覆う胴鎧。
腕部も脚部も完全に金属製の装甲で覆われます。
「金属製の鎧でほぼ全身が覆われており」、まさに鉄壁です。

「フルプレートアーマー」は、ロングソードで斬り付けても、斬擊によるダメージは、ほとんどありません。

「騎士」の鎧には斬擊は有効な手段ではありませんでした。

しかし、「騎士」の鎧は重量が「非常に重く」20~40㎏あり、間接部分も覆われているため「動きづらく」、一度落馬すると自力で起き上がる事も出来ず、そのまま死んでしまう事もあったようです。

その為、鎧を着こんだ「騎士」の戦いは、主に「打撃」になります。

又、「騎士」の鎧は「武士」の甲冑と違い、装甲と体の間に隙間が無く密着している為、「打撃」による衝撃がダイレクトに伝わります。

「騎士」は地上戦では、ハンマーやハルバードによる「打撃」で戦い、馬上戦においては騎兵によるハルバードやランスの刺突で鎧を貫通させました。

以上の事から、どちらも優れている点も劣っている点もあり、装備による違いは「機動力を重視している武士」と「防御力を重視している騎士」になります。








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