最後のライブ参戦 | 紗奈

紗奈

急性骨髄性白血病(M7)を発症し1年3か月の闘病の末天国へ旅立った娘を持つ母親の患者家族としての記録

あっという間に11月に入ってしまった

 

 

 

去年11月の最初の通院日

 

私も必ず一緒に来院するように言われていた

 

漠然と再発かなぁと思いながらも二人ともそれを口にはできないでいた

 

 

 

診察室に呼ばれて主治医に告げられた再発

 

心臓がギュッとなって頭がグラグラ揺れて呼吸が苦しかった

 

なるべく早く治療を開始したいから早急に入院をという主治医

 

 

慌ててにゃんに「ライブのこと聞かなきゃでしょ?」と

 

にゃんが楽しみにしていた歌い手さんのライブが週末にあってそれには絶対に行きたいと言っていた

 

もし入院と言われてもそれだけは行きたいと言っていたので先生にお願いしてみればいいよと出掛けに話していた

 

「ライブがあるんですけど行ってもいいですか?」

 

「いつ頃ですか?」

 

「週末です」

 

「じゃあ入院日調整しましょう。無理しないで体調崩さないように、風邪ひいたりしないようにね。」

 

と、OKが出た

 

 

ライブの日

 

にゃんは朝から着ていくものとメイクに何時間もかけて大騒ぎしていた

 

髪の毛は坊主から少し伸びてきていたけれどまだまだ短かったからキャスケットをちょこんとかぶった

 

白血病の闘病を知っているにゃんの友人が体力が落ちているにゃんの面倒を見てくれることになっていた

 

20分の散歩で息を切らし横になって休まなければ回復しない体力で果たして都心のライブハウスまで行けるのか

 

立ちっぱなしのライブで倒れたりしないだろうか

 

帰宅するまで心配で何も手につかなかった

 

 

 

数時間後無事に帰宅したにゃんは疲れきっていたけれどよく喋った

 

途中で事情を知っている当の歌い手さんに疲れてないか聞かれ、椅子に座って参戦させてもらったそうだ

 

うんうんと私も楽しく長い間話を聞いていた

 

一つでもやりたいことをやれて良かったと思った

 

 

後から知ったのだけどにゃんはライブ中少しだけ泣いてしまったらしい

 

「この人のライブを見るのはこれで最後になるかもしれない」

 

そう思って涙を堪えきれなくなったらしい

 

 

ライブを楽しんだのは間違いないけれどその分辛い思いもしたんだろう

 

死を肌で感じていたのにその時の私は何もわかっていなかった

 

 

 

全て終わってしまってから色々なことが分かってくる

 

もうやり直せないのに