行政書士試験は60%得点で合格という「絶対基準」のため、
「合格率が高い年度」の合格者学力と、
「合格率が低い年度」の合格者学力が、
一致しません。
受験者数を40000人とした場合、合格率に3%〜5%の変化が起きると、合格者数1200〜2000人の合否に影響を与えることになります。
受験生は「自分の得点は実力で上がる」、また「運不運で上下する」と考えます。
確かに受験生一人一人から見ると、自分の得点はそのときどきの「努力や運」次第だと感じます。
しかし全体から見ると、たとえば受験生分母が4万人の場合はどうなるのか?
この場合、受験生一人一人の努力や運不運による得点分布は、ただの数式で表されるだけとなります。
一般的な得点分布は平均値のまわりに密集した形で得点者が分布して平均値から遠くなるほど分布は薄くなる性質があります(正規分布は平均値付近に集積するデータ分布を表した連続的な変数に関する確率分布で、あらゆる同一の分布に従う確率変数の標本平均の分布が確率変数の数が多くなったときにもとの分布に関係なく正規分布に収束することになります)。
では、この得点分布を変動させる要因が発生した場合、試験にはどのような影響が出るのでしょうか?
つまり、行政書士試験の受験生分母に、
「他試験受験生」
が数千人単位の規模で参入し、平均値に変動をもたらし相対的に上がった場合を想定して下さい。
この場合、「合格率」が予め設定されている「相対基準」の試験(司法試験、司法書士試験、等)ならば、合格ラインを高く設定し直さなければ合格率が旧来以上の高い数値になってしまいますので、単純に合格ラインを上げることになります。
しかし、合格基準が予め決められた「絶対基準」の行政書士試験の場合は、6割という基準を上げることが出来ませんから、必然的に
「試験問題の難易度を上げて」
平均値を下げる作業が必要となります。
そのため、司法試験、司法書士試験などの他試験受験生が増加すればするほど、絶対基準である行政書士試験は、
「解きにくい問題」
の出題割合が増加することになります。
つまり、難易度や出題論点、パターンを安定化すると合格率が上がり過ぎるため、
「なんとか受験生を振い落とすような問題」
を出題せざるを得ないわけです。
偏差値で考えて頂くと分かりやすいと思います。
合格率が「高い年度の合格者」と「低い年度の合格者」では、客観的な数値である「合格基準」は同じですが、合格者の「偏差値」は明らかに異なります。
(例えば、合格率8%の年度に180点で合格した受験生と、合格率15%の年度に180点で合格した受験生とでは、偏差値『57-59』〜『63-65』程度の隔たりがあります。大学入試であれば「同じ大学の他学部を併願」している状態ではなく、もはや「他大学の入試」を受けているようなものです。)
合格するためには、
「行政書士試験は年度により偏差値が異なる」
、という事実を考慮した上で、傾向と対策を立てる必要があります。