恋愛侍、海を渡る。

恋愛侍、海を渡る。

ロンドン生活指南書 LONDONに恋をした。。。

「東の果て」、東京から、


 「西の果て」、ロンドンへ


恋する気持ちなら、誰にも負けない

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車のそとに、あのphotographerがいた。

ロックを解除して外へ出ようとしたが、

手がこわばって思い通りに動いてくれない。

拙者の必死の苦労をよそに

彼は開いていた後ろのドアから後部座席へ。

ちょっと気難しそうだった彼が

顔に満面の笑みを浮かべている

彼は拙者を見るなり興奮して言った。

さっきのfighting sceneは凄かったよ。

まるで華麗なdanceを見ているようだった。

何度も繰り返すのだ。

なんと答えていいものか。

役者をやっていて最も嬉しい瞬間かもしれない。

その日の帰りはDirector自ら送ってくれた。

段取りがつかなかったのか、

来るときのボッタクリ代金にびびったのか。

それはともかく、のんきに後部座席で眠り込んだ

room mateを尻目に、拙者は助手席で起きていた

どんなに疲れても、「現場では寝るな」

が日本にいたときの、拙者たちの基本である。

寝ないようにお互いをつねりあったりしてたものだ

静まり返った後部座席。

拙者にしたって、もはや積極的に話す気力はなし

あなたは眠くないの?

寝てもいいのよ

いや、拙者は仕事するために

鍛え上げてますから

ここでもまた感心されてしまった。

頑張った甲斐がありました。

その後も撮影は順調に進み、

拙者たちは、立ち回りのsceneを何回も繰り返す

だけだったが、やってるうちに2人とも乗ってきて

テンションはドンドン上がっていった。

しばらくして青い眼のニンジャ殿の出番は終了。

終了前の最後の立ち回りは2人とも納得できず、

もう一回やりたいところではあったが。

そして彼は装束を脱ぎ、

再びバイクにまたがって去っていった。

今度は黒い眼のニンジャの出番である。

拙者のroom mateだ。

どうせ来てるから、ということで

fighting scene以外の部分を彼がやることに。

そうそう、働かざるもの喰うべからず。

撮影は夕方まで続いた。

拙者の味方は例によって気合だけ。

この寒さとの戦いは、今のところは勝ち。

撮影も終わり、なかなか片づけが

はかどらないのを見るにつけ、

やっと拙者は本音を言った。

オレ今、スッゲー寒いんですけど。。

ってことで寒さと飢えで消耗しきった拙者は

あのカワイイ衣裳さんに付き添われて、

喫茶店の方へ行ったが、

口もろくに利けず、足取りもおぼつかない。

みっともないところを見せちまった。

さらには喫茶店にはもう入れず

温かい飲み物にめぐり合えることもなく、

とりあえず車の中へ非難することに。

車に入って暖房フルパワーを浴びても浴びても

もはや、歯の根がまったく合わない。

車の外へ出ようとドアロックを引き上げようとしたが、

手が言うことを利いてくれない。

そりゃそうだ。ふつうなら人間の体は、

自動的に毛穴を閉じて体温が逃げないようにする。

それを開放したらどうなることか。。。

役者も出番が終わると、もはや普通の人間です。

さて、その昼飯中。

ニンジャ殿がピザを見て、

サムライ映画の製作なのに、

何で昼飯がスシじゃないの?

あの緑色のgingerは何て言ったっけ?

あれもオレは平気だよ。

そう言った彼は、ピザにはいっさい手をつけず

小さい巾着袋の中からカロリーメイトのようなもの

(今から考えると、あれは後に拙者の大好物となる

というより主食になるshort breadだったに違いない)

を取り出し、食べ始めた。

そして水筒には、なんたらtea

なんと彼はvegetarianだという。

合気道やってるせいかとも思ったが、

彼が修行僧っぽく見えるのは、このせいか?

すっかり青い眼のニンジャと意気投合した拙者は、

彼が来年ユーラシア大陸を横断し、インドへ詣でてから

最終的には日本へ行くつもりだと知ると、

拙者の日本での連絡先を教えようと

room mateから紙とボールペンをもらった。

そして書き始めたのだが、

なんと手が寒さのために動いてくれない。

ずっとカタナを握っていた形のままで機能しない。

一枚紙を無駄にした。

二回目の必死の挑戦でなんとか読める字になり、

彼に手渡した。

彼も拙者同様ケータイを持ってなかったし、

当時の拙者同様e-mailアカウントもなかった。

彼も通っている道場の名前を教えてくれたが、

特殊な名前だったので書かずに済んだ。

でも、その他の説明は覚えられなかった。

転が思い出せずfreezeした拙者を見て、

ニンジャ殿がこうゆうのは?ってことで案を出してきた

たぶん道場で稽古していた型のひとつだろうが、

悪くない。それでいこうか。

ってことで、ニンジャ殿のおかげで

その場は事なきを得た。

数回の稽古の後、Directorに報告。 「できた!」

いざ再び戦場へ。

ニンジャとすっかり意気投合した拙者は、

森へ戻る道すがら、復習を兼ねてチャンバラを。

立ち回り撮影地点に着くと、早速rehearsal

場所を広く使い自由に動いて、チャンチャンバラバラ

何回も繰り返してるうちに、そのまま本番。

そして、ふと気づくと

こちらが必死でチャンバラしているところへ

スタッフが買い付けてきたピザの箱が到着。

こっちが撮影で食べられないのを尻目に

なんと主役を差し置いて食べ始めたではないか!

おい、てめぇ、他のスタッフはまだ許せるが、

オレの仕事中にテメェが何で食ってんだよぉ!

と思ったのは、room mateだ。

彼はもともと部外者のはず。

調子に乗りやがって、ちくしょ~!

この当時の拙者の食い意地はすさまじい。

食べ物の恨みは怖いんだゾ~。

そしてやっと撮影がひと段落して

ピザのもとへ辿りついいたときには、

拙者の取り分は激減。

結局2 piecesしか食べられず、

空腹状態のまま仕事を続行せざるを得なかった

ちくしょ~!!!

喫茶店に戻ると、そこには一般のお客さんが

普通に来ていて、ちょっとビックリした。

いや、考えたら普通なことだが、

こんな人里離れた森のほとりの喫茶店に。。

しかし、拙者たちの荷物がどっかりと置いてあるし

そのうち どったんばったん始めるし

いいのかなぁ?

拙者たちは、喫茶店のお客さんがいない側で

お客さんたちの目を気にしながらも

カタナを抜いてチャンバラの練習を始めた。

拙者が一度動いて見せて、彼がなぞる。

彼はさすがに合気道をやっているだけあって、

いい動きをみせた。

とても身軽で、ニンジャとしては最適かも。

これはムリかなぁ?

などと思いながら教えた動きを、

すぐに難なく実践してみせる。

こいつは、いいぞ!

と思ったのも束の間、

拙者自身に問題が起こった!

なんと、あれだけ考えに考えた立ち回りを

ド忘れしたのだ!!!

なんてこった! の非常事態!

役者としても 殺陣師としても やっちゃイカンことだ

やっちゃイカンし、ありえないことなのだが、

セリフを忘れたら台本を見ればいい。

立ち回りを忘れたら殺陣師に聞けばいいのだ。

(こんな事書くと、あっちこっちから怒られそうだ)

が、すべてが拙者の頭の中にある この現場では、

それも不可能なわけで。

拙者の今回の殺陣には、起承転結があった。

それが、起と承までいって、転がどうしても出てこない

でも結もハッキリとわかる。

うおーっ、どうしよー!!!



写真撮影も終わり、次のsceneへ。

じっとしてたから、すっかり冷えちまった。


走り回った先ほどのsceneとは打って変わって

またもジッとして動きのないsceneだ。


でもねぇ、前にも書いたけど役者はバカってゆーか、

ケガでも病気でも、親が死んでも、

演技し始めると関係ないわけよ。


木にもたれて空を仰ぐscene

寒い。


もう体が冷え切って、

全身のこわばりが表情に伝染して、

歯がガチガチいいそうになる。

毛穴という毛穴が総鳥肌立ち。


にもかかわらず、Director

みんな静かに~!

の声が掛かかり、カメラが回ると

寒さが気にならなくなる。


こわばりどころか、鳥肌で閉塞していた

全身の毛穴までもが開放される。


役者の体って一体!?



何カットか撮り終わったころ、スタッフたちのところへ

またもや知らない人が来ていることに気づいた。


オートバイに乗って来たらしい格好で

ひょろっとしたカンジの白人男性。


一連のsceneを撮り終え、

拙者はDirectorに呼ばれて彼のもとへ。


彼こそが本日のメインイベント、

戦いの相手役をしてくれる合気道の達人。


硬い握手を交わすと

彼を連れスタッフ一同、朝の喫茶店へ移動。


彼は一体どれくらいの技術の持ち主なのか。

拙者の考えてきた殺陣に合わせて動いてくれるのか


果たして。。

 

そしてrehearsalが始まった。

まずは、走るコースの確認、cameraのセッティング。

 

寒い、寒すぎる。

顔の笑顔とは裏腹に、皮膚は総鳥肌。

 

すべての段取りはOK、いよいよ本番に入ります。

拙者は100m程離れたスタート地点へと移動。

 

靴と靴下を脱いだ。

 

これにはスタッフ全員がビックリ。

 

脱がなくてもいいわよ。履いてちょうだい。

Directorが叫ぶ。

 

えっ、でもさぁ、ってゆーか、

、、そうですか。

 

このとき拙者はシブシブ靴を履きなおしたが、

強引に裸足になるべきだった。

これが後に拙者を後悔させることになる。

 

やはり役者としても、スタッフとしても

役者としての心意気であったり、

前のsceneとのつながりを考えたら

やはり裸足になるべきなのである。

 

いつものごとく、2回撮ってOKに。

 

そして、今日はじめて見る人が

最初のscene撮影後ちょっと日が差してきたのを見て

じゃあ、こちらへ。これからstill撮ります。

 

おおっ、この人photographerだったのね。

なんだか他のスタッフと雰囲気が違う。

ちょっと気難しそうなカンジがする。

 

それよりなにより、still撮影だなんて。

一番主役であることを意識させられる瞬間だ。

やっぱり嬉しいもんです。

 

彼はほとんど口をきかず、

シャッターを切り続けた。

 

かなりの時間を要したので、

本編の撮影の方は大丈夫かと

主役である以上に製作スタッフの一員として

心配になるほどだった。

 

本日最初のsceneは、

白装束というか死に装束で森の中を駆け巡るscene

 

現場までは徒歩5分。

12月の森の中は、一段と冷える。

 

早速のrehearsalに、

拙者は、羽織っていたコートを脱いで

room mateに手渡した。

こりゃあ、いよいよ本物のマネージャーだ。

 

とたん森の冷気が皮膚に突き刺さった。

この寒さは尋常じゃない。

 

横で見ていた衣裳さんが、心配そうに聞いた。

寒いでしょう、大丈夫?

 

その問いかけに、Directorはじめスタッフ全員が

拙者の顔を見た。

 

寒い?全然。

オレはHeartが燃えてるからね。

 

この一言で周りの空気が和んだ。

 

カワイ子ちゃんが心配してくれてる。

そんなとき、男は気合いです。

 

ちなみに、この白装束は

衣裳さんが徹夜で縫い上げた出来立てのホヤホヤ

着物を一日で仕上げるとは、たいしたもんだ。

 

拙者はこの衣裳さんをはじめ、

スタッフ全員の映画製作にかける意気込み

に感銘を受けていたが、

 

 

この日一日の拙者の言動は、

その場にいた人々全員に深い感銘を与えた。

のちにroom mateが折りに触れて語っている。

 

たぶん武士道精神というか、

大和魂をはじめて目の当たりにしたのだろう。

そして、それこそが本当に映像にしたかったもの

だったに違いない。

 

手書きのしょぼい領収書を受け取って、

さっさと車の外へ出た拙者は、周りを見渡した。

どこへ行けばいいのかな?

 

拙者は納得のいかない顔をしているroom mate

なだめながら、なんとなく歩いた。

 

こういうときの拙者の勘というか、第六感はすごい。

よくわからない土地で目的地へたどり着けなかった

ということが、拙者はあまりないのだ。

 

 

すぐそばに駐車場というか、空き地があった。

明け方なのにもかかわらず、たくさんの車がある。

入っていくと知ってる顔ぶれが集まっている。

 

拙者はDirectorたちと握手をかわすと、

さっそく領収書を差し出した。

 

DirectorProducerも顔を見合わせた。

やはり金額に驚いたみたいだ。

 

結局拙者は、自分の金じゃないから

£30を黙って払ったに違いない。

ちょっと自己嫌悪に襲われたが、あとの祭りである。

 

とりあえず、隣の喫茶店?へ。

どうやらオーナーに段取りをつけているらしく

朝早くから中へ入れてもらい、コーヒーをいただいた

寒い朝に、これは嬉しい。

く~っ、暖まる~っ!

 

ほっこりしたところで、衣装がえ。

 

この極寒の空気のなか、拙者の衣装はといえば

profileの写真を御覧のとおり、

薄いガーゼのような生地で作られた白装束一枚。

 

さ、さ、寒ぃ~っ!

 

着てきたコートを上にはおり、現場へ向かう。

本日の現場は、森の中。

日が出ているうちに撮影しなければ間に合わない

 

さぁ、最初のscenerehearsalだ。

 

よっしゃ~っ、やるぞぉ!

拙者の体中の血液が沸点を超えた。


 

撮影現場は、Stanmoreのさらに奥。

拙者はマネージャーを引き連れてmini cabオフィスへ

 

すぐに車を出してもらえることになり、

拙者たちを乗せた車は、一路撮影現場へひた走る。

そのあとからは、マネージャーが全部やってくれた。

 

地図を見ながらドライバーへ指示をだしたり、

もろもろの面倒なことをだ。

 

おかげで拙者は台本をじっくりと読み返したり、

殺陣の構想を練ったりすることに集中することができた

 

これには本当に感謝である。

감사함니다.

実際このときオレは一言も喋った記憶がない。

 

 

そして少々迷いながらも

やっと目的地に到着したとき、

ドライバーが言った。

 

£30だ。

 

 

はぁ?

拙者もroom mateもしばし絶句。

くそっ、しまった!

乗る前に交渉しとくべきだった!

 

これはメーターのないmini cabなら、

当然起こり得る事態である。

しかし、こんな豪勢な経験のない大貧民には想定外

 

拙者が絶句している間に、

room mateが反論を試みたが、

もともとガラの悪い居住区の百戦錬磨の黒人さん

相手に敵うはずもなく、

 

なおも食い下がろうとするroom mateを制して

拙者は一言、

領収書をくれ と言って、

自分の財布の中身を確かめた。

 

cab代立て替え用に、当時の拙者にとっては

大金である£20札を財布に入れておいたが、

とても£30はありそうもない。

 

拙者は、room mate

すぐ返すから、£10貸してくれ

と頼まざるを得なかった。