某賃貸会社に勤めている男性から聞いた話。
数年前、時期的に入学就職シーズン。
一人暮らしする若者の来店が多くごった返していたある日。
女性「あのー、お部屋借りたいんですけど?」
仲の良さそうな夫婦が男性の担当する席に。
男性「かしこまりました。では、ご希望の条件等を…。」
女性「○○○の、○○、今空いてるでしょう?こちらの管理物件なのも知ってるのよ?」
…女性が提示したのは、社員達の間である意味有名な物件。
男性「確認します。…確かに、今空いてますが…。」
パソコン画面を見ながら渋い顔をする男性に女性の夫が不審がり。
夫「オイオイ、事故物件とかじゃないだろうな?」
女性「違うわよ〜!それなら告知義務あるし、一日の大半家にいるの、私なのよ?私に危害が加わるようなトコ、あえて選ぶもんですか!」
「知り合いから、とてもステキな部屋だって聞いたから!一日の大半家にいるのは、家事するのは私なんだから、私に選ばせてくれるって言ったじゃないの!」
夫「その部屋で過去に誰か自殺したり、事件起きたりしてませんよね?隠しても調べたら分かるんですよ?」
男性「【部屋で】そういった事はありません。事故物件の要件は満たしてません。大丈夫です!」
言いながら男性は、ある事がノドまで出かかったが。
見たところ、とても仲が良さそうな夫婦の様子に、大丈夫だろう。あえて言うのは失礼かなと考え。
また、ヘタに話してせっかくの客を逃したらと思い、止めたと。
言うべき要点は言ったし、別にウソはついてないからいいか。
気を取り直して部屋に案内。奥さんの鶴の一声で即契約!
してから2か月後。
店に怒鳴り込んできた夫!
夫「やっぱり事故物件だろ!毎晩毎晩、女の幽霊が出て首を締められるんだ!」
男性が応対しようとすると。
上司「事故物件ではございません。奥様は何とおっしゃってるんですか?」
夫「気のせいだって!毎晩あなたがうなされてるのは知ってるけど、幽霊なんて見た事ないって!」
「出世して、仕事量が増えて疲れてるだけだと。でも、確かにこの目で何度も見たんだ!」
上司「事故物件ではございませんし、不確かな事は対応のしようがありません。これ以上は他のお客様のご迷惑になりますから、お帰り下さい。」
「警察を呼びますよ?」
…いつもならもっと丁寧に対応する人なのに。
一瞬不思議に思ったが。
上司の事情を知っていた男性は、無理もないかと思い直し。
女の幽霊を見たという事は、
ああ、この旦那もアノ類か!
なら、末路は〜。
おびえながら帰っていく背中を冷ややかに見送ったと。
同じ考えに至ったのだろう。
すぐ横では、手を合わせる同僚の姿も。
しばらくして。
女性「先日、主人がコチラに押しかけて大変なご迷惑をおかけしたとか。誠に申し訳ございません!」
詫びに来た奥さん。
応対した上司に小さい声で久しぶり。と言ったのが聞こえ。
…知り合いか?
上司「いえいえ、何やら幽霊を見たとかおっしゃってましたが?」
女性「幻覚ですよ。本当に恥ずかしい!」
上司「なぜそんなモノを見なければならないか?解らないなら幻覚でしょう。」
女性「解らないままでしょうね?正真正銘のバカですから。」
お互い小声だったが、聞こえた。
…奥さんは、確信犯だったのか!
それから数日後。
ビルの屋上から飛び降り自殺があったと話題に。
名前を聞いてビックリ!
飛び降りたのはアノご主人。
それからだいぶたった後。
女性「解約手続きに来ました!解らない事が多いので、色々教えて下さい。」
夫を悲劇的に亡くした未亡人とは思えないぐらいの晴れやかな笑顔で店に訪れた女性。
男性が何も言ってない内から、
女性「主人は死にました。ご存知でしょう?飛び降りの件。ここのすぐ近くのビルですものね?」
「あ、お気を使わずに!悲しくない、むしろ清々してますから!ていうかもう夫じゃない。飛び降り前に離婚届出したし!」
「私、あの男に酷すぎる裏切りされてたんです。ゲス不倫を!あなたも当然、アノ部屋の事はご存知だったでしょう?ありがとうございます。あの時、黙ってて下さって!」
「新しい人生を、遠い町でスタートさせるつもりです。短い間でしたが、色々お世話になりました!店長さんによろしく!私が感謝していたとお伝え下さい。」
明るく、
本当に明るく帰って行ったと。
夫婦が契約した部屋は、かつてある一組の夫婦が住んでいたのだが。
夫がゲス不倫に走り、妻はウツ状態に。
毎日毎晩近所迷惑な大喧嘩をしては怒声をこれでもか!と響かせ、周りに不倫がバレ。
居づらくなった夫は、愛人の家に入り浸るように。
奥さんは、そんな夫を呪いながら引きこもる毎日。
そんな折、奥さんが末期ガンである事が判明。
私はもう長くない、どうか帰ってきて欲しいと懇願する妻に、
夫「くたばるなら勝手にくたばれ!麻美子との生活の邪魔をするな!」
電話口で一喝したきり、音信不通を決め込んだ夫。
奥さんは、哀れ!
最後まで夫を、愛人を呪いながら病院で息を引き取ったと。
それから後。
夫が遺品や荷物を整理する為に部屋へ戻ってきたかと思うと。
夫「ゆ、許してくれ!助けて!」
数日、かつての夫婦喧嘩の怒声よりも凄まじい大声が響き渡るように。
…奥さんが復讐をしているんだとご近所でウワサになりだしてまなし。
その部屋から引っ越して直後。
ビルの屋上から飛び降り自殺した夫。
風のウワサで、同じ時期にその愛人は交通事故で無惨な死に方をしたとも。
それからというもの。
その部屋を借りる夫婦の内、夫が次々と!
ビルの屋上から飛び降りたり、
踏切り内に侵入して電車に轢かれたり、
走ってきた車の前に飛び出して吹っ飛んだり。
無惨で奇怪な死を遂げるように。
その直前。
夫達は全員決まって、部屋で毎晩女の幽霊に襲われたと周囲に話していたという。
無惨な死を遂げたのは夫達だけでなく、ウワサではその愛人共も。
「不倫夫を引き寄せては殺す部屋」
社内及び同業者の間では、ある意味有名な物件。
…仲がよさそうな夫婦だったから、大丈夫だと思ったのに。
仮面夫婦だったのか?
知り合いらしかった2人。
【復讐するには】ステキな部屋だと奥さんに物件を紹介したのは、上司かも?
男性がその物件に関わったのはこの一度きりらしいが。
上司は後に何度か。
それも、だいたい契約者の妻と知り合いらしい雰囲気でにこやかに問題の物件を紹介する姿を目にしたと。
この上司、最愛の娘さんが夫の不倫が原因でアル中、大病となり。
現在、長い闘病生活を続けているらしく。
ゆえに、復讐心からゲス男潰しに手を貸している様子。
男性「1年前も、新たに契約したご夫婦の旦那さんがね…。これで何人目かな?」
「この前、原田さん(上司)とサシで飲みに行った時に聞いたんですが、やはり奥さんとは知り合いだったらしく、全て事情も知った上で!部屋を紹介したみたいです。」
「愛人も、旦那さんが飛び降りてまなしに交通事故で死んだとか。」
「怖いですよね、2人とも殺されたんでしょうから。」
「ミツさんには、部屋がどこかは教えられません!永遠にゲス不倫男送り込むでしょう?」
「最近もね、新たに越してきた夫婦から風呂場の浴槽がつまったからと連絡が来て、業者呼んで調べたら!長い長い髪の毛がつまってたみたいで。」
「奥さんは肩までの髪だから、後で業者が、女房の留守中に亭主が女連れ込んでたんですよ!俺らが帰ってから夫婦喧嘩してるでしょうねって言ってたらしいけど。」
「立会いした同僚いわく、違うんじゃないかと。」
「なぜなら…。ソイツ、少し霊感あるのか立会いした時に何だかゾワッとして、スマホで浴室の写真撮ったとかで俺に見せてくれたんですけど。」
「ご主人の肩に、細い筋ばった手がしがみついてて。そのご主人も同じく、同僚に訴えたらしいです。毎晩女の幽霊が来るって!」
「同僚は、夫婦や業者には写真を見せずに帰ったみたいです。ヘタに見せてやっぱり幽霊が出る部屋なんだと騒がれたら面倒だから。…あ、電話だ!ちょっと失礼!」
話を聞いたのは正午頃。
丁度昼休憩中で、近くの定食屋で会っていた最中だった。
男性「ええ、その件は帰ってから。…え!?何ですって?」
しばらく沈黙した男性。
しかし、電話の相手はかまわずしゃべっているようで。
男性「あ、大丈夫です。すぐ戻ります。」
ようやく話しだし、少し会話した後にスマホを置くや。
男性「先程話していた旦那さん、今朝近くの踏切りで自殺したみたいです。」
「朝方、駅の自殺騒ぎには気づいてたんですが…。まさかご主人とは!」
「電話の相手は上司です。いずれ奥さんから解約の申し出があるハズだが、ウチに損はないと。」
「もう次のご夫婦が、奥さんが空き待ち、予約済みだからと。」
「自分が関わってから色々知ったんですが、何でも、部屋の恐ろしさを契約者に、ご主人にバラした奴は自分も被害を被るというウワサがたってるみたいで隣近所の人も、賃貸業者も!誰も次々変わる住人に、特にご主人に忠告する人間はいないとか。」
「俺も、アノ時何も言わなくてよかった!ギリギリセーフでした!」
「ていうか、いつまで続くんでしょうね?エンドレスですね。」
最近、男性から連絡があった。
踏切り自殺者の妻がにこやかに店に来て、上司にお礼を言って帰り。
しばらくして、予約妻が来店。
小声ではあるが、
まだ空かないの?
早くアイツ片付けたい、保険金が欲しい!
と上司にしつこく迫っていたと。
男性「2人とも虫も殺さないような、それこそ旦那の不倫を知って喧嘩になってもただひたすら弱々しく泣くばかりっぽい感じの、いかにも旦那にナメられそうな人達なのに。やっぱり女性は怖いですね!」
「ミツさん、よくおっしゃってましたよね?不倫は、妻の事と、不倫自体の罪深さをナメてるからこそ出来る事だって。散々ナメてる奥さんに莫大な殺意持たれて、死ぬように、殺されるように仕向けられてたなんて、旦那さん方は夢にも思ってなかったでしょうね!」
私「不倫は心の殺人ですからね?罪悪感が薄っぺらいなら、申し訳なかったとひどく心を痛める事が出来ないなら、身体を、命を痛ぶり尽くされて償うしかないでしょう。」
部屋の中自体で事件事故が起きていないゆえに。
恐ろしいウワサによるかん口令がしかれているゆえに!
処刑物件は、それとは公に知られぬまま今もなお稼働中!
薄汚い下半身狂いをしまくってきた分際で!
未だに妻をナメては踏みにじり、ふんぞり返って恥じぬ無駄な人口の削減に貢献しているとか。
めでたしめでたし!