乾緑郎 彼女をそこから出してはいけない | 花の本棚

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乾緑郎 「彼女をそこから出してはいけない」
あらすじを読んで面白そうだったので買ってみました。
 


主人公の女性は注目を集めている画家の取材をしていた。彼の故郷を再現した作品を観ると真ん中に少女が描かれており、それが迫ってきて目の間に現れるような感覚がしてそのまま倒れてしまう。ダムに沈んだという彼の故郷について調べてみるとその街には「ツキノネ」と呼ばれる土地神がいたとあり、未来予知をして災害の発生を当てていた動画配信者と同じ名前であった。その配信者が自分は監禁されていると動画内で発したことで殺人事件が起きており、その姿は絵から迫ってきた少女と似ていたというお話
 
SF系のホラー作品となります。土地神が現代社会に人間として現れるという怪奇系ホラーな内容になっています。
本作の見所はホラーと現代社会の合わせ方が上手い点です。例えば嫉妬深い神様が現代社会に現れたとしたら、嘘を吹聴して人を操ったり、冤罪をでっちあげて破局させたりする、というような場面が描かれています。神様が現代社会の傾向や技術を使い始めたらこうなるかも、という描写の数々は他にはない斬新なホラーで非常に面白かったです。
もしかしたらこういった描写をすることで現代社会の問題について言及したかったのかもしれませんね。
その反面ホラー系としてみると強烈な描写はそれほど多くありません。という点から強いホラー描写を期待しすぎると肩透かしになってしまうかもしれないので、そこは注意が必要です。
 
珍しい内容のホラー作品ですので気になる方はチェックしてみてください。