昔、エアチェックで音楽をコレクションしていた。
LPを買うには金もない。立派なオーディオセットがあるわけじゃない。
そんな輩(やから)はエアチェックするしか道はなかったのだ。
ところで、エアチェックとは何かご存じか?
ラジオで流れる音楽をラジカセで録音する作業のことだ。
詳細をご紹介すると、自分の好きな音楽が流れるFMやAMのラジオ番組を聞く。番組が始まるとともにラジカセのカセットはPAUSEボタンを掛けて録音状態にしておく。
DJが曲紹介を終えるやPAUSEボタンを解除し曲の録音を開始し、曲が終わるやDJの喋りが入る前にPAUSEボタンを押して録音を一時停止にする(この一時停止というところがミソ。終了ではないのだ)。そうやって1曲1曲をミュージックテープに収めていくのだ。これをラジオ番組の間、ひたすら繰り返すのだ。
きっと、ラジカセを知らない今の君たちから見ると、想像もつかない苦労を重ねているようにみえるだろう?笑っちゃうかもしれない。
しかし、このとてつもない作業の果てに、世界に自分一人しか持ってない46分、60分、90分のオリジナルテープが出来上がるのだよ。
どうだ!これって凄くないか?
そしてこんな家内制手工業みたいな作業を続けていくと、60分のテープをいっぱいにするにはそれなりの期間がかかるものなのだよ。下手すりゃ1カ月以上かかるときもある。だが、それがすべて埋まり、最初から最後まで再生したときの快感と言ったら、あーた、こりゃ筆舌に尽くしがたいものがあるんでござんすよ。
で、私はいまだにときどき、そんな作業をしているときがある。
もうさすがにエアチェックするラジカセはないし、媒体はテープからCDに変わったけど。自分が好きな曲を集めて、1枚のCDとしたときの快感は今でも変わらないですなぁ。
というわけで、私が作った「Saturday Afternoon Songbook」を僭越ながらご紹介したいと思う。土曜の午後に聴いたら、気持ちいいよなぁという曲を集めて作ったものだ。
私の趣味上、70年代の曲がほとんどになります。
1.You're The Sunshine Of My Life / Stevie Wonder (3:01)
スティービー・ワンダー1973年の傑作「トーキング・ブック」より。イントロのオルガンからしてなんとも土曜の午後で、メロディも幸せいっぱいな木漏れ日を感じさせる曲。
2.Sitting In The Midday Sun / Kinks (3:50)
キンクスの長いキャリアの中でも悪評高いロックオペラを展開していた1973年の作品「プリザベーションAct1」からの一曲。邦題はうってつけの「ひなたぼっこが俺の趣味」。私はこの時期のキンクスが一番好きだ。なんたって曲がいいのです。
3.You're In My Heart / Rod Stewart (4:32)
1977年発表のロッド・スチュワート「明日へのキックオフ」から。この曲を聴くと午後の陽が降り注ぐ古民家の縁側で、昼寝をしている猫の姿が浮かんでくる。土曜の昼にはうってつけの1曲。
4.New Kid In Town / Eagles (5:06)
言わずもがな、イーグルスの名作1976年発表の「ホテル・カリフォルニア」から。これは私が中学生のとき、東京FMで土曜の昼2時からやっていた ♪ダーーーイヤトーン、ポップスベストテン!でよくかかっていた曲。これを聴いてるとあの番組を聴いていたときの、土曜日の空気感や匂いまで思いださせてくれるタイムトリップな曲。
5.Chuck E's In Love / Ricky Lee Jones (3:34)
リッキー・リー・ジョーンズ、1979年のデビュー作「浪漫」からシングルカットされ大ヒットした曲。彼女は1977年にトム・ウェイツと同棲していたそうですな。渋いカップルだと思います。曲はアコースティックでシンプルで極上な昼休みポップスに仕上がっています。
6.You Gave Me The Answer / Wings(2:15)
ポールマッカートニーのウィングス時代のアルバム1975年の「ヴィーナス&マース」から。ビートルズ時代の When I'm 64 から続くボードビル調の可愛い曲。ポールのこの流れは好きです。
7.Push / Sarah McLachlan (3:58)
サラ・マクラクランは1997年に Sweet Surrender という曲でクールでスタイリッシュなイメージでブレイクしたが、この曲はどこまでも広がる青空の下、入道雲がもくもくと湧きあがる土曜の昼間、学校の屋上で背伸びをしたときに聴きたい曲。2004年「アフターグロウ」から。
8.Go Home Girl / Ry Cooder (5:14)
この曲はたしかパイオニアのステレオコンポのCMで使われていて、ステレオコンポなのにアメリカの荒野に、昼間、男が佇んでいる映像になっていて、それが、やたらかっこよかったのを覚えている。ライ・クーダー1979年発表の「バップティルユアドロップ」より。
9.Ooh La La / Faces (3:34)
ロッド・スチュワートがボーカルをつとめていたバンド、フェイセズの名曲。けど、ボーカルはベーシストのロニーレイン。イントロからずっと続くアコースティックギターのリズムが実にいい。1973年「ウー・ラ・ラ」から。
10.Who Needs You / Queen (3:09)
クイーン1977年発表の「世界に捧ぐ」から。このアルバムには「ウィ・ウィル・ロック・ユー」と「伝説のチャンピオン」が入っているが、自分はジョン・ディーコンが作曲したこれと「永遠の翼」のほうが好きだ。
11.Turn Around / Billy Joel (3:07)
昔、ビリージョエルのデビュー作「コールド・スプリング・ハーバー」の日本盤は発売されていなかった。輸入盤でしか手に入らなかった。「ストレンジャー」「素直になれなくて」「マイライフ」等々、派手な曲で一躍スターになったビリーだが、1971年のデビュー作はこのような素朴で滋味深い曲が並ぶ。
12.She Sells / Roxy Music (3:43)
ロキシー・ミュージック1975年発表の「サイレン」から。昼より夜という感じの曲が多いロキシーだが、この曲はイントロのピアノからポップで軽快でどこか哀愁があり昼下がりの雰囲気ぷんぷんの佳曲である。
13.Blow Away / George Harrison (4:02)
ジョージ・ハリスン1979年発表の「慈愛の輝き」に収録され、シングルカットされた曲。ジョージのこういう曲は本当に素晴らしく、洗練されたメロディとポップス感覚、そして明るく切ない曲調はジョンやポールにもない資質だったなぁと改めて思うのであります。
14.If You Really Want To Be My Friend / Rolling Stones (6:19)
1974年発表の「イッツオンリーロックンロール」から、あまり語られることもとりあげられることもないが、これはストーンズの中でも白眉で出色で名曲中の名曲でしょう。これ以降の曲は夕方向け。
15.How Many Friends / The Who (4:11)
1975年発表の「バイ・ナンバーズ」から。ハードな曲が多いフーの中でもメロディの美しさではナンバー1の曲。それになんといってもニッキー・ホプキンスのピアノが美しい。その美しさは美しいとしか表現の仕様がない。
16.Sweet Lady Geneve / Kinks (3:27)
2.と同じアルバムより。イントロのハモニカが、ビートルズの「恋する二人」をもろパクリのような感じだが、こっちはもっとルーズ。そして曲調は夕方。歌詞も「その昔、真っ赤な夕焼け空のもと」と始まり、酔いどれの男が嘘ばかりついていたジェネビーブにひたすら、許してと哀願するなんとも素晴らしい曲。
17.Spread Your Wings / Queen (4:37)
10.と同じアルバムより。邦題「永遠の翼」。曲調が夕方なのは言うまでもないが、歌詞が実に泣ける。エメラルドバーでボスにこき使われるサミーは運にも見放され苦労ばかりしてきた男。しかし、サミーは決意し、もっと広い世界で生きていくんだとボスに告げる。「いいか、よく聞け。まともな志もなしに大したことはできやしない」とボスにバカにされる。そのサミーに向かって「飛びたて、君は自由な人間なのだから。どこまでも飛び立つんだ」とQueenが後押しする。ライブでは観客とともに大合唱の名曲だ。
18.Listen To What The Man Said / Wings (4:01)
3.と同じアルバムで、次の19.と切れ目なくつながっている曲。実に爽やかな曲で、夏の海辺で夕方に聴いたら実に気持ちいいだろうなと
思わせる曲。
19.Treat Her Gently~Lonely Old People / Wings (4:24)
昔、NHKで夕方に少年ドラマを放送していたのだけど、そのシリーズのドラマでこの曲がオープニングに使われていた。なんて言ったっけな?それはともかくこの曲は、聴いた人の耳を魅了してやまないであろう。そして、若い頃の懐かしい夕方のなんとも言えないあのけだるい時間に自然と心が動くはずだ。夕方ここに極まれりの名曲中の名曲。このCDのハイライトと言える曲。
20.Citizen Of The Planet / Simon&Garfunkel (3:14)
2004年発表のサイモン&ガーファンクルの再々結成ライブの模様を納めた「オールド・フレンズ」というライブアルバムの最期にボーナストラックとして入っていたスタジオ盤。コーラスとメロディの絡み具合が絶品で大きな山や谷があるわけじゃないのに、カタルシスをもたらしてくれる不思議な曲。さすがサイモン&ガーファンクルという一曲。
