へずまりゅう、34歳。元迷惑系ユーチューバー。へずまは2025年7月20日に行われた奈良市議選で、8320票を獲得し当選した。3位当選だった。直近のニュースでは、奈良市議会の一般質問で彼は仲川げん市長に暴言を吐いた。
●「どのツラ下げて」奈良市長に暴言
仲川市長が答弁を終えた後に突然声を荒らげ、「あなたね、どのツラ下げて市長やってるんですか」と発言していた。発言を問題視した議会側は、16日に各会派の幹事長会を開いて対応を協議。「発言は市議としての品位に欠ける」として、口頭での注意が決まった。
5年前に、迷惑系ユーチューバーとして悪名で稼いでいた男が、たとえ「奈良の鹿」に焦点を当てて「鹿パトロール」を始めたからといって、彼の本質的な人間性は変わっていないであろうとぼくは見ている。
しかし、奈良市議選で当選したところを考慮すると、過去の事はあまり問わない優しい人が多いのだと思った。但し、その思い込みだけではまずいので、もう一度彼が当選した経緯やユーチューバーとしての活動を通して、改めて考えたいと思った。
へずまは、「外国人から鹿さんと市民を守る」をキャッチフレーズに掲げ、2024年夏ごろから、奈良公園を拠点にして「鹿パトロール」を実施。外国人観光客らが、奈良公園の鹿を虐待しているとして、その様子を動画でSNS投稿する活動を行っていた。2025年1月には奈良への移住を発表し、今回の出馬へと至った。
へずまは、過去に3回選挙に出ていた。2021年10月の参院選補欠選挙では、故郷の山口選挙区から出馬。NHK党の公認で挑戦したが、自民・北村経夫氏らを前に惨敗した。
続いて、2023年4月の東京都・豊島区議会議員選挙(定数36)に無所属で立った。しかし、56人の候補者のうち54番目の得票で落選となった。
その後、2024年7月の東京都知事選に出馬表明したが辞退。そして今回の奈良市議選に、無所属で立候補した。つまり、2回の落選後に当選したということになる。
● 「悪名」もSNS選挙ではプラスに
「元迷惑系ユーチューバー」という選挙には圧倒的に不利なイメージを持たれるのに、なぜ彼は当選したのか。城戸譲(きどゆずる)氏は以下のような理由を挙げる。
〇今回は、従来とは違い、大きな“武器”を持っていた。それが「外国人から鹿さんと市民を守る」だ。参政党が掲げた「日本人ファースト」に代表されるように、日本国民の利益が最優先と訴える勢力が、このところ支持を広げている。
〇忘れてはいけないポイントが、へずまが候補者55人のうち最年少であることだ。先行きの見えない時代だからこそ、若きニューリーダーを求めたい気持ちはよくわかる。そのうえ「地元出身でもない若い子が、移住してまで奈良市民の暮らしを守ろうとしてくれている」といったストーリーが演出されていれば、なおさらだ。
〇ベースとなる「悪名」もまた、近頃のSNS選挙ではプラスに働く。“アンチ”からのバッシングが強まるほどに、「正しいことを言っているから攻撃されるのだ」といった印象を与える。ひとたび、この構図を作れれば、ファンが勝手に選挙活動をしてくれているようなものだ。
城戸氏は、以上のような当選の理由を掲げた後で、「政治のゴールは、当選ではない。ここから先は、ネットに親しみのない有権者からも監視される。“かみつく側”から、“かみつかれる側”になったとき、本当に変わったと思わせられるか。4年間の任期で成果を残していくしかないだろう。」と、結論を述べている。
参照:なぜへずまりゅうは「余裕の当選」を果たしたのか…支持を集めた「3つの要素」
「どのツラ下げて」奈良市長に暴言 へずまりゅう氏に議会が口頭注意
