筒井康隆著作の「壊れかた指南」より、「便意を催す顔」と「大人になれない」を読んだ。
まず、ショートショート「便意を催す顔」は、便秘と下痢を繰り返す厄介体質の男の話。その人に悪意を持っているわけでもなく、ごく通常なつきあいをしている、きわめて常識的な人物なのだが、なぜか便所でその人のことを思い浮かべた途端に腹が鳴りだし、大量に排便するという。
その大量に排便する理由を根本的に探るという物語もありだとは思うが、実際の物語は、パーティ会場でのその便意を催す顔を持つ人物との絡みで終わる。
本屋に行くと便意を催すという人もいるし、実は色々なパターンの人がいそうだ。何か意味も分からず、自分の体に影響を与えてしまう他人の存在というものがあったら、それがとても身近な人だったならこれはまたやっかいな問題だ。
次の筒井康隆の短編「大人になれない」は、拓也という体重百キロ近く幼い言葉しか使えない男の話。
彼は玩具を作っている会社の開発に所属する人物のようだ。拓也にしか見えないバロッタ君という木製のロボットが友達。
明子さんという女性に恋心を抱いているが、そのライバルに陰下という人物がいるが、どうやらその人物は木製のロボット・バロッタ君と同様に架空の存在なのか?
あまりにこどもっぽい大人というのも、確かに存在するだろう。その怖さや異常さのような刺激を短編「大人になれない」に求めると、そこは肩透かしをくらう。どこか中途半端な印象。
年齢に合わせた生き方ができない不便さ、奇怪さ、そのような現象は世の中にたくさんころがっていそうで、逆にノンフィクションで「大人になれない」というテーマで書いた本が読んでみたい。
