父親・リチャードの作ったUFO型の気球が、庭から空高く舞い上がる瞬間に気づいたことは、その中に6歳の息子が乗り込んでしまっていたこと。家族が大慌ての中、気球はどんどん飛んでいく。大規模な救出作戦が展開され、費用は総額4万ドル(現在の価値で約600万円)を超えたとされる。
「気球に乗り込んだ少年はどうなった?」という実際にあった米コロラド州の2009年10月の事件をドキュメンタリーにしたのが「とんでもカオス!: 気球少年」。
ここまで読んで面白そうだと思った方は、Netflixに加入している人ならぜひ実際の作品を見てほしい。予想以上の面白さを感じるはずです。以下ネタバレ含みます。
● これは番組のためだ
気球がゆるやかに着地する。奇跡の再会を期待する人々が見守っていたが、気球には少年が乗っていなかった。少年は自宅ガレージの屋根裏部屋で寝ていた。
一家はCNNの人気番組『ラリー・キング・ライブ』に生出演。番組で司会者から「なぜガレージから出てこなかったの?」と質問された6歳の少年は、こう答えた。
「You guys said that, um, we did this for the show.」
(だって、パパたちが「これは番組のためだ」って言ってたから…)

リチャードはあわてて否定する。しかし事件が売名目的の狂言であったという疑いは確信へと変わる。一方、日本生まれの母親・マユミは捜査当局の事情聴取で、「夫と2人で当局にうそをついた」などと供述している。
今度は『事件はでっち上げだ!』という事で、一家に向けられていた世間の同情は怒りへと変貌していく。一家は「アメリカで最も嫌われた家族」とまで呼ばれる。
リチャードは公務執行妨害未遂の罪で禁錮90日と賠償金3万6,000ドル(現在の価値で約530万円)の支払いを命じられた。マユミも虚偽報告の罪で、週末のみ収監される形の禁錮20日という判決を受けた。
● 嵐の追跡者やUFO研究家
気球を作り上げたリチャードは、めだちがりやだった。彼は俳優やコメディアンを目指すも成功せず、「嵐の追跡者」や「UFO研究家」として注目を浴びようと活動。
但しこの作品は、事件がでっち上げなのかどうかの結論はぼかしている。『悲劇的な誤解が司法の誤審へと発展した』という彼らの主張を摂っている。
彼らは、マユミの自白が強要されたものだという。だから当作品は、夫妻の「有名になりたい」という渇望が背景にあったとするニュース記事とは異なるスタンスで作られている。
彼らは、英語が不自由な日本国民のマユミが弁護士なしで尋問され、捜査官が国外追放をちらつかせた後にのみ自白したと主張する。一家はまた、公式な話を覆す証拠として、どの報道機関よりも先にFAA(連邦航空局)に助けを求め、911(行政のコールセンター)に保留にされた後に初めてメディアに連絡したと主張している。
そして2020年12月、コロラド州知事は「彼らはすでに世間の目で裁かれ、代償を払った」として夫妻に恩赦を与えた。
一家は、マスコミから逃げるためにフロリダに引越し人生を再スタート。リチャードは最後にこのように告げる。「新しい物を作っている。すごく大きなものだ」
お隣の男性は、リチャードのことを「実験好きで頭がいい」と評す。もしも気球を使った事件が、『自分をどこまで有名にすることができるのか?』という実験ならば、ドキュメンタリーまで作成された時点で、自分に何点を付けるのであろうか?
参照:コロラド気球事件(バルーンボーイ事件)の全貌:Netflixドキュメンタリーが暴く
米「気球少年」事件、母親がでっち上げ認める
Netflixの新作ドキュメンタリーが、悪名高い「気球少年」の物語を再検証
