
「残り火」2022年製作 デンマーク 原題:Kærlighed for voksne
バーバラ・ローテンボルグ監督の映画「残り火」は、よくあるストリー展開。男は同じ職場にいる若い女性に夢中になり、その女性からは離婚を迫られ、奥さんからは別れない宣言をされる。「あなたが愛人と逃げたらあなたの詐欺を警察に言うわよ、刑務所に入って息子とも会えなくなるけど、どっちがいい。5年後の出所まで彼女が待つと思う?」と、脅される。
男は奥さんがあまりに一つの方向から物事を見るので、相談相手でもいればと思いかつての奥さんの親友を訪ねに行く。そこで今まで知らなかった奥さんの”恋人の死の秘密”を知る。その事で、奥さんへの怖さが男の心にさらにのしかかってくる。
映画の冒頭のシーンは、「大半の殺人には愛が絡んでいる。殺人事件の半数は配偶者や恋人による犯行で動機は大抵嫉妬や情熱だ」というナレーションで始まる。男は小雨の降る夕方に、ジョキング中の奥さんを車で轢いて殺害する選択を取る。男は苦悩の表情と共に、涙がひとしずく落ちる。
轢いた後で、まだ彼女が動いているのをバックミラーで確認、再度バックして轢く。
『男にとって浮気という選択が、こんなにも大きな代償を払わなければならないものならば、浮気の気持ちを抑えて大人しくしていたほうが身の為である』という教訓ができてしまいそうな、奥さんに究極の選択を迫られる怖い怖い物語。
これは、以前にみた傑作サスペンス『危険な情事』(1987)にも共通する感想だ。というのは、男から見た感想なので女性から見たらまた違った感想になるのであろう。
この映画は、よくある不倫の物語ではあるけれど、どんでん返しが何個か仕掛けられていて、とても面白くて怖いサスペンススリラーにできあがっている。
お互いの関係性を呪縛する結婚が怖くなる映画。ラストに、刑事が結婚しようとする娘に言う忠告が、『愛は皆が思うよりはるかに危険だ。覚悟はいいか?』という”地獄への一歩”みたいな表現なので、笑ってしまう。