法を犯すことが自己表現「ゆきゆきて神軍」 | トリップちゃんねる

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「田中角栄を殺すために記す」という過激なメッセージが書かれている店のシャッターを、奥崎謙三が開けるところから、ドキュメンタリー映画「ゆきゆきて神軍」は始まる。

奥崎は結婚式で媒酌人を務め、スピーチで友人の犯罪歴を語り、また自分が人を殺して刑務所に入った事があることにも触れる。前科を持つ者同士の不思議な縁を奥崎はたんたんと語る。「花婿ならびに媒酌人、共に反体制活動をした前科者であるがゆえに実現した、類稀なる結婚式でございます」

60代を迎えた奥崎は亡くなった戦友の墓参りをしているうちに、ニューギニアで終戦を迎えたにもかかわらず、二人の兵士を“敵前逃亡”の罪で上官たちが処刑していた事を知る。遺族を連れてかつての上官の家を訪ねては、真相究明と責任を追及する。

その中で、戦争中に食べるものがないという極限状況の中、人間の肉を食べるということが行われていた事も明らかにされていく。それが、戦争に行った時のかつての上官の、家族のいる前で発言し追求していくことに驚く。

人の家庭にズカズカ入り込んで、老いた病人になった上官を殴るというとんでもない男のドキュメントだけど、その自己主張の熱量が魅力的に見えてしまう映画だ。

奥崎は自己紹介をする時に、誇るように3点の事を述べる。天皇にパチンコ玉を撃った事や天皇ポルノビラを撒いた事。(これは、天皇の戦争責任を直接的に問う行動だったという。)また、不動産の悪徳業者を殺害し10年間、刑務所に入っていたこと。

奥崎は1983年に元中隊長宅へ出向き、応対した息子に発砲して殺人未遂罪で逮捕される。

原一男監督曰く『服役中だったから映画が完成したのです。編集の時に奥崎さんが横にいたら、あれこれ口を出してきて完成しなかったでしょう。映画が公開されてほどなく、天皇が病に倒れ、世間は自粛ムードになりました。完成が1年遅かったら公開出来なかった。奥崎さんは「原さんは監督じゃない。神が演出しているんだ」と言っていた。僕もそう思います。この映画が生まれたのは奇跡でした。』

さらに監督は続編に関して語る。『彼はパート2を作りたがっていました。奥崎さんにとっては法を犯すことが自己表現。次の自己表現は確実におぞましいものになる。作るべきでないと、自分に言い聞かせるのに随分長くかかりました。』

参照:たった一人の過激な抵抗 原一男「ゆきゆきて、神軍」