
「時計じかけのオレンジ」1971年製作 アメリカ 原題:A Clockwork Orange
Yahooのニュースタイトルに「実在の事件に影響を与えた“本当に怖い映画”(1)ヤバすぎて上映中止に…模倣犯が続出した世紀の問題作は?」という長ったらしいタイトルを見つけた。
それで、何の映画の事を言っているかと思ったら、スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』(1971)だった。
この映画の舞台は、非行少年による暴力が横行する近未来のロンドン。暴力やレイプなどの犯罪に明け暮れるアレックスの更生を図るべく、強制的に暴力ができない精神状態に人格改善しようとする物語。ぼくの生涯のベスト10に入る大好きな映画だ。
その記事では、ホームレスの男性に暴行を振るう若者の影響を書いている。
映画では、序盤から主人公・アレックスと「ドルーグ」のメンバーの暴力シーンが何度も描かれる。印象的なのがホームレスの男性に対して無差別に暴行を加える場面。アレックスをはじめとした若者らは笑いながら男性を殴り倒す。そこには良心のかけらも見出せない。
本作公開後、若者たちがホームレスの男性に暴行を振るい殺害に及ぶ、といった事件が発生。犯行に及んだ若者たちは『時計じかけのオレンジ』を崇拝しており、「映画や小説の中で描かれるアレックスの行動を模倣した」と供述し、世間を驚かせた。
『時計じかけのオレンジ』を模倣した犯罪は後を絶たず、批判が高まるなか、1973年にはキューブリック自身が脅迫を受け、イギリスでの上映が中止される事態となったとの事。
町山智浩著作の「映画の見方がわかる本」に、『時計じかけのオレンジ』のことを書いてありそこで原作者の妻の話が書かれていた。
この映画の原作はイギリスの作家アンソニー・バージェス。かれの妻は第二次世界大戦中に駐留米軍から脱走した四人の若者にレイプされた。妊娠していた妻は流産し自殺を試みた。彼女は命を取り留め、後には子供を持つことはできたもののこころの傷は癒えることはなかった。
彼の描いた小説の世界観は、そのような彼と奥さんの心の傷の怨念がしみ込んでいるのかもしれない。そうした背景を考えると、作者の意図に反して映画化された作品により、ホームレスの男性に暴行を振るい殺害に及ぶ若者の事件が発生したというのは、実に皮肉な残念な結果としかいいようがない。
参照:「実在の事件に影響を与えた“本当に怖い映画”(1)ヤバすぎて上映中止に…模倣犯が続出した世紀の問題作は?