何故か矢印が好きでよく絵に登場させてしまう

 

ぼくは、U-NEXTという動画配信サービスに入っている。今日は、『浜野佐知監督の作品はあるのかなぁ』と思って検索した。この監督は男っぽい名前だけれど、実は女性の監督で、優れたピンク映画を300本以上撮り続けた人だ。一般作も何本か撮った監督ではあるけれど、有名なのは膨大なピンク映画のほうだ。

何本か検索でヒットしたので、喜んで鑑賞を始めたのだが、出ている主演女優がおばちゃんくさいし、色気に乏しい。映画にお金がかかっていないのは承知で観ているのだけれど、それにしてもセットもショボすぎる。10分くらい見て、閉じてしまった。

自分の年齢的なものもあるどろうけど、10~20年前にあんなに夢中になって観ていた当時の熱は、すっかり冷めてしまったようだ。もちろん、映画館ではなくパソコンで見ていることの差もあるのだろう。

ぼくの映画通いはまずポルノから始まった。実に多くのポルノ映画にお世話になった。今はもうなくなってしまった映画館がほとんどだが、赤羽から池袋、新宿、新橋、上野から浅草までと、足を延ばして観に行ったものだ。

ポルノ映画館は、行ったことがある人はわかると思うが、変なおじさんがいて、鑑賞のじゃまをするのが困りもの。すぐ横に座ってきて、股間に手をのばしてくる。男同士でいちゃいちゃしたり、館内をあちこち男を物色して動き回り、落ち着かない人がいる。後ろの壁のほうで、数人集まってなにか変な事をしている。しまいには自分は映画を観にきたのか、怪しいおじさんやその仲間を見学に来たのかわけがわからなくなるときがある。

そのなかで、忘れられないのは新橋の映画館でのこと。やけに若い少年が見に来たものだなと思って、その人の顔をジッと観てしまったのは、席がいくらでも空いているのに、座らずに通路で座って見ているから。変なおじさんに、横にこられるのが嫌なのだろうと、思った。その少年はやけに綺麗な顔立ちをしている。


でも、よくよく見ると少年ではなくて少女であることがわかった。今までも女性がカップルで入ってきたのをみたことがあるが、こんなに整ったあどけない顔立ちの少女をポルノ映画館で見るのは初めてだった。

気がついたのはぼくだけではない。一人のずうずうしいおじさんが座席から立ち上がり、その少女のそばに近づいた。何かひそひそと話しかけているようだ。ポルノを観に来た客が、現実の美少女を放置するわけがないのだ。

 

やがて少女は館内から姿が消えた。まるで一瞬のまぼろしのごとく消えた。男がしつこくて嫌で外に出たのか?それとも男と話が合っていっしょに映画館を出たか・・・・、まあ考えてもしょうがないと思い、それはその時の不思議な想い出として記憶に留めた。

ある時に、橋本愛のインタビュー記事を読んでぼくはハッとした。橋本愛は、過去に放映された日活ロマンポルノが好きで新橋の映画館などに観に行ったと答えていた。新橋で、ロマンポルノの上映といえば、ぼくが行っていたあの映画館しかないはずだと思った。暗闇で見つけた場にそぐわない謎の美少女とは、橋本愛だったのだ。



ということで、「んなわけないだろう!」という声も頭の隅から聞こえないわけでもないけれど、『橋本愛と同じ空間に居て、同じ日活ロマンポルノを観た時があったのだ。』という自分勝手な思い出にて、封印した記念すべき日になった。