読みかけの本がありながら、つい他の本に移ってしまう時がある。
すると、読みかけていた本の事は忘れて、気がついたときはどこに置いたかすら分からなくなってしまう。だからなるべく読みかけでやめるのではなくて、一冊一冊、読み終えてから次の本を読みたいと思っている。
たとえば村上春樹が書いた、「アンダーグラウンド」、地下鉄サリン事件で被害を被った62人の関係者にインタビューを重ねている。被害に遭った人の仕事を含めた普段の日常が、事件を境にどのように変わってしまったかが、書かれている。
地下鉄サリン事件では、乗客や駅員ら14人が死亡、負傷者数は約6,300人とされる。本屋でパラパラ立ち読みをして、それが何か心うつものがあり、買った本だった。
しかし、さすがに780ページは長くて他の本に浮気心が出てしまった。読みかけでやめたらそこから「アンダーグラウンド」は、意識から消えてしまった。たぶん実家にあるのだろうけど、かなり昔の事なので、本も古くなってしまったことだろう。
その地下鉄サリン事件のように、自分が意図しないところで巻き込まれ、大勢の人が大けがをしたり死亡したのが10月29日の夜におこった韓国・梨泰院(イテウォン)の転倒事故。158人が死亡した。
● 『私を踏まないで』と何度も
その事故で友人2人を亡くし、自身も重傷を負ったミリ・ドエさんが、事故の様子や現在の心境の発言が、記事として載っていたので、目を通した。
TikTokに投稿された動画で、ドエさんは病院の一室から状況を語る。
「最初の転倒があったとき、足を踏み外して地面に倒れました。このときコンクリートに頭をぶつけてしまいました。すると、周りの人も倒れ始めました。(誰かに)頭と胸を踏みつけられ、そのときの痛みは耐えられないほどでした」
「『私を踏まないで』と何度も叫びました。でも誰にも私の叫びは聞こえてなかったと思います。再び転倒が起こったとき、目の前が真っ暗になって、こう感じました。『最期の食事になるなら、友だちの家でチーズクラッカーとマスカットなんか食べるんじゃなかった。もっとおいしいご飯を食べておくべきだった』と」
「頭の大きな擦り傷は、群衆のいちばん下にいた私を(救護者によって)引き摺り出されたときに、コンクリートの地面に擦れてできたものだと思います。多分死んだと思いました。だって息をしていなかったし、胸がとても痛かったから」
「なんで今、自分が生きているのかがわからないです。あの夜、友だちは助からなかった。なのに、どうして自分だけ生き延びたのか本当にわかりません。友だちを助けられなかった、守れなかったことに、ひどく動揺し、怒っています」
「この世界でやるべきことを十分に達成をしていなかった。だから生き延びているんだと思います。私が仕事ばかりしていたので、夢だったラップの曲をリリースもせず、夢を追いかけもせず、旅行もせず、そのまま死ぬという事実を、心が受け付けなかったんでしょう」
ドエさんは自身のInstagramで、約1カ月の治療を終えて退院した旨を報告をしている。
死のぎりぎりにまで対面したことがある人の話しというのは、こちらの心に響き興味をひかれる。数年後に彼女が心の立ち直りが出来た時に、その後の感想や変化を聞いてみたいと思った。
以下は、本日15日、21時16分に心を撃たれた写真家ペレ・キャスの一点。

