氏は会社から外に出て一服した。
会社には、たばこを吸う場所がなく、外に灰皿がセットしてある。
そこでA氏はたばこを吸いながら今後の自分を考えた。
この会社にいてもう3年、それなのに仕事は雑用ばかり。
IT関連の勉強を重ねて、プログラミングの力も持っているのにこれで
は、我ながら、宝の持ち腐れだと思った。
「ねえ、どうしたの?」
と、女性の声がした。
同じ課のKさんだった。
「そろそろやめようかと考えてるの?」と、聞いてくる。
するどい!と、思ったが、まだ会社にばれてしまうのはやばい。
「今、ひとつ体調が悪くてさ、明日、ちょっと休みをもらおうかどう
しようかと考えていたんだ。」
「Aさんは、新婚だもんねぇ。奥さんに1日、甘えたいんじゃないの?」
「そんなんじゃないよ」
A氏はあわててKさんのからかいから逃れる。
翌日、A氏はPP株式会社の面接を受けに行った。
実は、ネットで調べてPP株式会社の将来性に期待できることを確信
していた。
それに、妻には内緒だがネットのホームページを参照したら、女性従業員
がやたらに美人ぞろいなのも驚きだった。
面接時に、人事の担当者からも説明された。
「社長の趣味で女性従業員は美人ばかりそろえています。ただし、社長
は純粋に面食いなのであって、別に愛人にしているとかそうゆう目的では
ありません。
但し、社内恋愛に会社としては目を光らせております。仕事に対する
集中力がかけてくるのが、今までの経験から確認できているからです。」
A氏は「ぼくは結婚したてですから、その点は大丈夫です。」
と、説明したのだが、面接担当者は否定する。
「結婚していようがいまいが、恋愛体質の人はきっかけさえあれば
恋愛を重ねてしまいます。それで、わが社に入るかたは条件がありま
して、毎日、ある録画した映像を見てもらいます。」
説明によると、その映像は美人社員たちが口にしている悪口の場面を
録画したものだそうで、それを見てもらうことにより、美人だからと
言って必要以上の幻想を持つことを止める効果があるという。
また、彼女たちも録画されていることを知りつつ、そのような悪口と
思われない事を口にするという。まあ、慣れてしまえば、録画されて
いようがいまいがおしゃべりにストップはかからないということか?
さらに、逆に自分も会社にいる間は録画されるとのことで、これもまた
会社の女性社員に、身近な会社の男性社員に幻想を抱かせない、社員
恋愛の元を作らない為の予防策だという。
面接担当者は、給料の額の説明に入り、それは予想外に高く満足のいく
ものだったのだけれど、さすがにこの会社の社内の全録画状態での仕事
はどうかとA氏は考えた。
結果、キャンセルする旨をPP株式会社に伝えた。
しかし、考えてみると、これは『面接する側の亭のいい断りのお決まり
スピーチかもしれない。』などとA氏は思ってしまった。