頸椎椎間板ヘルニア
交通外傷で【外傷性頸部症候群】【腰椎捻挫】と並んで、取りただされるのが、【椎間板ヘルニア】です。
前にも簡単に触れましたが、他サイトの相談掲示板でもこの椎間板ヘルニアの相談事案が目立って多いのでもう少し詳しく解説します。
椎間板ヘルニアは本来厳密に言うと病態ではなく状態を指しています。
椎間板ヘルニアの絵図です。
頸椎は7個の椎骨という小さな骨から形成されていて、その椎骨と椎骨の間に椎間板という軟骨があり、その軟骨は髄核(濃い紫色部分)というゼリー状の物質と線維輪(薄い紫色部分)という線維が輪のように重なった物質で形成されていて、この椎間板が椎骨と椎骨のクッションの役割をしており衝撃を吸収しています。
ただ、常に重い頭部や外力からの圧力と共に髄核の年齢による水分の減少から、柔軟性が乏しくなるとともに線維輪にも年齢変性と常なる圧力とで線維輪に亀裂が入り、そこから髄核が線維輪を押し出てきて脊柱管内の脊髄や神経根を圧迫してしまうと、脊髄症状が発症してしまうのです。
従ってヘルニアが軽度の場合や硬膜嚢に軽く圧迫している程度のものは何ら問題になるものではありません。
交通事故の場合には、脊髄症の既存障害がない場合には、無症状で脊髄を圧迫していた椎間板ヘルニアが事故の頸部の過屈曲過伸展の外力で、脊髄や神経根が阻害され脊髄症状が発症してしまうのです。
この場合脊髄症状と末梢神経症状の神経根症と二種類の症状に分かれます。
上記の絵図の左側のように髄核が膨隆すれば神経根症になり、右側のように膨隆すると脊髄症状が発症します。また一部交通事故サイトにヘルニアの突出という表現を用いる方が見えますが、医学上にヘルニアの突出という表現は無く、膨隆か線維輪から髄核が飛び出してしまった脱出という表現方法しかありません。
神経根症状
上肢の疼痛や痺れ脱力、筋委縮、筋スパズム、特徴的には圧迫阻害を受けている神経根の神経支配域に限定した神経症状の発症です。
診断的には神経学的検査所見で、深部反射は阻害部位のみが低下もしくは消失を呈し、同時に筋萎縮が進行します。従って筋萎縮検査が必須です。
また、神経根誘発テストと言うジャクソンやスパーリングの誘発テストで陽性反応を示します。
また重度障害の場合には電気生理学的テスト(神経機能検査)の針筋電図で神経原性の異常所見が得られます。MR上には上記絵図のように神経根の圧迫所見が散見されます。ただ現実的にはなかなかMRでも圧迫所見が得られることは難しいようです。上記の針筋電図で左右差がはっきりと所見出来れば、画像に代わる異常所見として12級13号の認定の可能性が出てきます。
脊髄症状
脊髄本体へのヘルニアの圧迫によって、その障害は脊髄症状を要し、神経根症状とは違い、その阻害部位より下方の上肢体幹下肢全てに脊髄症状が起きる可能性があります。
その症状は巧緻障害、障害部位以下の疼痛、痺れ(知覚障害)、脱力、麻痺による歩行困難、筋低下、排尿障害と様々な深刻な症状を要しますが、神経根症状と違い廃用性以外の筋萎縮は起きません。
診断的には神経学的検査で深部反射は阻害部位以下は亢進し、十秒テストの20回以下の異常所見で巧緻障害が確認できます。MR上は神経根障害よりは確認が容易です。また電気生理学的テスト(神経機能検査)では異常所見は確認できません。基本的に画像所見と神経学的検査からの立証になります。
治療的には牽引等の保存療法や鎮痛消炎剤、ビタミン剤、血行促進剤等の投薬治療等が、まず行われて、増悪や症状の改善がない場合でCTミエロ等で圧迫が確実に所見された場合には、ラブ法やレーザー治療(PLDD)これはヘルニアが比較的小さい場合で早期術式適応が症状の緩和につながると判断された場合に適応されます。
この術式の適応を超えたヘルニアには前方固定術や椎弓形成術が選択されますが、昨今ヘルニアでの11級7号事案は大変厳しい審査となり、初診から痺れ等の症状がカルテ上に所見されて居ないと、多くの場合に因果関係の観点から否定されることになります。
術式が適応されないヘルニアは40歳以下の場合に画像所見と神経学的所見の整合性、通院頻度、治療内容等総合的に判断して12級13号が認定されます。ただしこの条件がそろっていても、40歳以上では14級9号の認定に留まります。













