脳脊髄液減少症と軽度外傷性脳損傷との違いⅡ | たかぶーの事故被害者のためのブログ

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自身も交通事故被害者です

交通事故に関する事を記載していきたいと思います

交通外傷を勉強しています、特に自賠責に対してどう後遺症を認めさせるかに関して勉強しており被害者のお役にたてればと思います

脳脊髄液減少症と軽度外傷性脳損傷との違い


脳脊髄液減少症という疾患自体は突発性低髄液圧症候群

(spontaneousintracranialhypotensio)と呼ばれて1983年にschaltenbrandによって初めて報告された症候群で腰椎穿刺のような明らかな外的要因がないにもかかわらず頭蓋内圧の低下をきたすものです。その疾患を熱海福祉大学病院の篠永医師が、2000年に所謂むち打ち損傷の患者の中に症状が遷延重篤化し他の医師から心因性、精神病、賠償性心因症、詐病などと切り捨てられている被害者の中に、髄液が漏出して様々な症状が出現しているのではというつまり低髄液圧症候群を発祥しているのではないかという考え方を基に、それまで髄液は簡単には漏れないという医学界の常識を否定し、低髄液圧症候群がむち打ち損傷でも起こりうるという意見展開を提唱したのが始まりです。


ただ患者を診察していると髄液が漏出しているのに髄液圧が正常な患者が多数散見され、それまでとは異なる脳脊髄液減少症という実際に即した症状の提案を提唱されたのが始まりです。


脳脊髄液は、脳実質や脊髄実質を外部の衝撃から守るクッションのような役割や脳の機能を正常に保つ働きがあり、成人で150ミリリットル程度存在し硬膜嚢内を循環しています、そして一日3~4回入れ替わるとされています。


脳脊髄液減少症はその受傷機序として交通事故の際の頸部の過伸展過屈曲による硬膜脳への過度な外力等で脳が揺さぶられたりした衝撃から硬膜嚢内の髄液圧が亢進し、その髄圧の亢進で津波状に外力が波動して、脊髄の脊髄から枝分かれし、各末梢へ神経電気信号を伝えるための、神経根へと枝分かれする部分の硬膜嚢の硬膜下腔部分が破綻して、そこから髄液が漏出するとされて居ます。


その結果髄液が減少し、脳実質が下垂して、これによって非常に多種多様の障害が発症します。


代表的な物に頭痛特に起立性頭痛が特徴的で、MTBIの患者には余り起立性頭痛のような特徴的な頭痛を訴える方は見えません。ただ脳脊の患者さんも慢性期に入ると頭痛が消失したり、起立性ではない慢性的な頭痛を訴える方も、たくさん見えるという事ですから、定型化するのには些か疑問を感じます。他にも頸部痛背部痛、腰痛をはじめ、難治性疼痛の線維筋痛症、MTBIと同じように脳神経的障害、特に視覚障害の光過敏が特徴的でMTBIの患者にはこの症状は比較的少数であると思います。また顔面麻痺も左程MTBIには現れることがなく、この点も相違しています。


このほかにも自律神経障害、慢性疲労症候群様の極度の疲労感、胸郭出口症候群、高次脳機能障害。ただ脳脊の患者さんの場合には高次脳では症状の症状は体調等で起伏するとのことで(某ブロガーの脳脊の高次脳の記事の中から抜粋)、これもMTBIでの高次脳機能障害には見られないことです。ある時は神経心理学的所見が正常になり、ある時は異常になるという事はMTBIの患者にはありません。したがって二か所の検査機関での高次脳機能障害の全く違う種類のテストの検査結果でも、ほぼ同じ所見が得られます。


また、気圧等に症状が左右されるという特徴もありますが、これは別段不思議なことではないのですが、自賠責や労災は天候での増悪、暖解は後遺障害に非ずとしていますから、この点も対自賠労災にしては大きな問題です。


ただMTBIとの決定的な違いは、画像所見にて脳脊髄液の減少をうかがわせる所見が得られる可能性が高いという点。脳脊髄液の減少という症状が治癒し脳の下垂が改善されれば、多くの場合これらの症状が緩和されるなり改善されるという点で、治る可能性のある疾患という点です。この点については個人的にいささか違和感がありますが、それはひとまず置いておきます。


さて勉強不足も相まって、脳脊の専門のブロガーさん達には足元にも及びませんが、とりあえず2007年にこの疾患のガイドラインが制定されたのですが、その後に、また自賠責の飼い犬顧問医の吉本智信の下らない自己主張の為の一昔も二昔も前のエビデンスレベルの低い論文の寄せ集めによる著書によって、訴訟でも脳脊髄液減少症自体が否定された苦難の時代が、このたび嘉山氏とその研究会によって脳脊髄漏出症と名を変えて外傷でも起きうる疾患と、未だ被害者には納得の出来かねる、厳しいガイドラインですが、今まで否定一辺倒であった関係学会に渋々でも、承認了承を取り付けたという事は、この疾患がWHOも認めていなくて、一部のアメリカの神経内科医にしか認知されていない疾患としては10年でここまで来たというのは、篠永先生をはじめとする、革新的な医師の努力のたまものであろうと思います。


治療的には減少した脳脊髄液を漏れをふさいで増加させるという事です。急性期では安静と水分補給でかなりの患者が改善されるとのことですが、それでも改善しない場合にブラッドパッチという硬膜外腔に自己血を注入し漏れを防ぐという治療を基本とし、その他に生食パッチや人工髄液での治療も試みられているようです。



因みに脳脊のガイドライン上の画像所見としては
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脳のT1強調造影横断面画像です。矢印の白く映っている硬膜がびまん性に造影されています。この所見は脳脊以外にも散見される疾患は存在しますが、この所見と脳下垂、静脈の拡張を合わせて所見されれば、他の疾患との判別は極めて容易です。これは脳脊髄液漏出症の画像診断基準の中のある低髄液圧症候群の補助診断として有効とされて居る画像所見です。



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T1強調矢状断画像、典型的な脳下垂の画像所見です。小脳が脊柱管内に下垂し、脳橋が平坦化しています。この所見は漏出症では参考所見です


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頚髄のT1造影矢状断T2強調矢状断画像です。矢印部分に液体貯留が散見されます。この所見は液体が造営されていないので強疑所見になります。
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脳脊髄液漏出症の中で最も信頼性の高いとされているCTミエログラフィでの画像左方がくも膜嚢胞、右側が造影剤の漏出画像です。解剖学的に硬膜外であると説明できれば、現状で最強の画像所見です。確実若しくは確定所見です。



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脳脊の患者さんにはおなじみのRIシンチグラフィー所見です、この検査は語るまで有りませんね。左方は頸椎部分C6/7あたりからの漏出、右方は2.5時間後の腰椎部分からの漏出画像です。この所見では腰椎部分が非対称性の漏出画像になっていますが脳脊髄液循環不全がなければ疑に留まるようです。


脳脊に関してはまだ勉強途中ですので、間違った解説や解釈があればご指摘ください訂正いたします。


纏めは次の記事でいたします。