16歳の春、家族と離れて一人暮らしを始めた。
将来映画監督になる夢を掲げ
自立への第一歩として。
ところが16歳の子供にとって
一人暮らしはそう簡単ではなかった。
アルバイト先を探すのもそうだが、
何よりもアパートをどうするのか?
普通は家賃を払ってアパートを借りるもの。
しかし常識なんてくそくらえ!
タダで住める所は無いものか!?
探して見るものである。
しかもタダどころか、住むだけでお金を貰える所があった!
名古屋からほど近い金山という町に
小さな服飾専門学校があり、
そこで宿直のアルバイトを募集していたのだ。
何という奇跡!
部屋は、使っていない教室を改造した
隙間風が容赦なくはいってくる
みすぼらしいものではあったが
そんなことは何とも無かった。
約2年間そこに住んだ。
30年以上前の話だ。
先日名古屋に行ったさいに
お世話になった専門学校を訪ねてみた。
当時の優しかったお婆ちゃんオーナーはもうおらず
校舎は近代的なビルに改装されていた。
はるか30年前
スーツケースにありったけの夢を詰め込んで
これから起こる波乱に満ちた人生を予感していた。
全てはパイプベット一つだけの
ガランとしたこの学校の教室から始まった。
