11月1日午後10時  多摩川河川敷にて

ある男が何者かに頭を殴られ死亡した

伊丹『凶器は?』

芹沢『血痕が付着してるので、この石みたいっす』

伊丹『こんなもので殴られちゃひとたまりもないな・・・害者の身元は?』

芹沢『身分を示す所持品は何もありませんね』

三浦『目撃者は?』

芹沢『いまのとこいません。ここは連日のように若い連中の溜まり場になっていたようで、付近の住民も夜間は近づかないそうです』

米沢『遺体に争った形跡はありませんので、後ろからいきなり殴られたようです』

次の日  特命係

陣川『おはようございます!杉下警部、亀山さん』

右京『おはようございます。おやおや今日はどうしましたか?』

陣川『最近、多摩川付近で痴漢や暴力事件が多発していると聞きまして何度かパトロールをかねて行っていたんです』

亀山『それでまた犯人に間違えられたの?』

陣川『そんなことはありません。ただ同じ地域で昨日殺人事件があったという報道を見まして、自分も特命係の一員として捜査に参加したいんです』

右京『おやおや、殺人事件とは穏やかではないですねー』

亀山『また余計なことを・・・もう経理に仕事に戻った方がいいんじゃない?』

陣川『いえ、この事件を解決するまで有休を使いますから』

亀山『筋金入りですね・・・右京さん』

右京『そうまで言われては僕らが捜査しないわけにはいきませんねー』

鑑識にて

米沢『そろそろ来る頃だと思いました。例の河川敷の事件ですね』

右京『なにか不審な点でも出たのですか?』

米沢『検死の結果、致命傷になった傷とは別に大きな傷跡がありました』

亀山『それが事件に関係あるんすか?』

米沢『なんとも言えません。ただ致命傷を与えた凶器とは傷跡が一致しないので、殺害前にも殴られていたことになります』

右京『一度目で意識を失い、別の人間による二度目で絶命したということですか』

陣川『何故別の人間だと?』

亀山『普通、犯行中に凶器を変えたりしないでしょー』

陣川『なるほど・・・』

捜査一課にて

芹沢『害者には前がありました!名前は落合義弘(31)、1年前に詐欺容疑で逮捕起訴され、一年の実刑で先日出所したばかりです』

伊丹『犯人グループの仲間割れってこともあるな』

右京『その詐欺というのはどういったものですか』

三浦『警部殿ー我々の邪魔をしないでください』

伊丹『なんでおめーがここに来てんだよ!』

芹沢『振り込め詐欺みたいっす』

伊丹『何しゃべってんだよ、ばか!』

芹沢『殴ることないじゃないっすかー』

亀山『今回の事件と関係あるんすかね?』

右京『もう少し調べてみましょう』

内村刑事部長『杉下!亀山!それと陣川!誰がここに入ることをお前らに許した?さっさと出てけ!特命の空気を持ち込むんじゃない!』

外に出ていく二人

亀山『まるでおれら病原菌みたいっすね・・・』

右京『向こうも手掛かりがなく焦っている証拠でしょうねー』

陣川『今後どうするんですか?』

右京『まず捜査の基本は聞き込みからですよ』

現場の河川敷に来た特命の3人

亀山『すでに捜一や所轄が聞き込みしてるんじゃないっすか?』

右京『ええ、しかし事件の聞き込みというのは得てして聞き漏らしが多いものですよ』

陣川『どういうことです?』

右京『刑事を相手にし、事件のことを聞かれれば無意識のうちに事件とは関係ないことを話してはいけないと考えてしまうものです。そうなると本当に大切な情報がもたらされないことも十分ありますからねー』

陣川『なるほどー』

近所の住民の梨田『またですか?昨日も刑事さんに事件のこと聞かれましたよ・・・』

亀山『今日お邪魔したのは、事件の日のことではありませんから。最近のこの周辺で変わったことを聞かせてください』

梨田『そんなこと言われても・・・あーそうそう最近夜寝やすくなったわ』

陣川『なぜです?』

梨田『以前は夜になると若者が花火をやったり、大声で叫んだりしてよく眠れないことがあったのよ。でも最近パッタリと静かになったの』

亀山『事件の日を境に騒音が消えた・・・まあ普通事件が起こった場所には近寄らないですよね』

右京『しかし、明確な事件現場の報道はされていませんよ。もしその場所を意図的に避けているとしたら・・・事件と何か関係があるかもしれませんねー』

陣川『他の住民にも聞き込みしてきます!』

特命係にて

陣川『近所の住民の何人かが同じようなことを言っていました』

亀山『しかし、そいつらが何処の誰かわからないっすね』

右京『この時期に花火を買えるところはそれほど多くはないのですぐ見つかると思いますよ』

しばらくして

亀山『それらしい若者グループがいましたよ』

右京『さっそく参りましょう、陣川くんはここに残ってください』

陣川『なぜです?自分も行きます』

右京『ここで捜査一課の情報を我々に伝えてください。そうすえば君の望むように事件解決は確実に早まりますよ』

陣川『なるほど。わかりました』

その若者グループに会いに彼らの溜まり場の店に来た二人

亀山『古田誠二くんいるかな?』

高田『・・・おい古田!やばいぞ!逃げろ!』

亀山『誰に言ってんだよ!おい!右京さーん』

古田は裏口から逃げようとした

右京『古田さん、逃げるということは罪を認めたことになりますよ』

古田『うるせーどけ!』

次の瞬間、杉下右京の見事な投げが決まった。

亀山『話は署のほうでゆっくり聞くから』

特捜本部のある多摩川署にて

三浦『警部殿ー勝手な真似はやめてください!』

伊丹『おれらの捜査を無視する気ですか!』

亀山『おまえらが俺達を無視したんじゃねーか』

右京『我々は捜査一課への出入りを禁じられました。となれば事件に証拠がない段階ではこれしか出来ませんよ』

取調べを開始する一課

伊丹『お前が殺したのか?』

古田『俺じゃない!たぶん岡田だと思う』

伊丹『岡田??だれだそいつ』

古田『俺らのメンバーだったけどこの前抜けたんだ』

三浦『なぜ?』

古田『あの日、俺らが遊んでたらあの死んだ男が「うるせーぞ!こら」と因縁つけてきたんだ。それで、仕返しのつもりでそいつに何回か石をぶつけたんだ。そしたら・・・岡田の投げた大きめの石が当たったらしく倒れて動かなくなった。まさか死ぬなんて・・・』

右京『ちょっと失礼!』

三浦『警部殿ー』

右京『30秒だけ、一度投げただけで倒れたのですね?その後はどうしました?』

古田『ああ一度だけだ。その後は怖くなってすぐ逃げた』

右京『そうですか・・・』

特命係にて

陣川『犯人は古田で決まりですね』

右京『いえ、彼ではないと思いますよ。もし誤って殺してしまったんなら二度目の殴打を隠す必要はありませんから』

亀山『じゃあ、やはり真犯人は別にいるということっすね』

角田課長『よっヒマか?あ・・・陣川・・・あんたまだいたの?まあいいか、そうそう、死んだ落合の1年前の詐欺事件を調べなおしてみたらとんでもないやつだったぞ。金をもってそうなやつに片っ端から電話をかけ言葉巧みに金を引き出してたようだな』

亀山『しかし・・・そんなにうまくいくもんなんすかねー』

右京『最近のは組織として周到に計画されたものが多いようですからねー』

角田『いや、落合は一人でやってたようだぞ』

右京『妙ですね・・・被害者のリストはありますか?』

角田『ああ、一年前に逮捕されたときのがある』

リストを見る

右京『ヒルマンエンタープライズ部長、野村建設役員、伊東商事役員・・・なるほど、そういうことでしたか』

亀山『え?』

陣川『さっぱりわかりません・・・』

右京『事件は思わぬ方向へ向いたようですねー』

続く~

 事件現場のとある山林に一課が登場


伊丹『また殺しか?』

芹沢『三上氏は木にロープをくくりつけての自殺のように見えますね』

三浦『遺書はあったのか?』

芹沢『あるにはあるんですが・・・パソコンでかかれたものなので本人のものかどうかはわからないっす』

伊丹『なんて書いてあるんだ?』

芹沢『内容は「今回はとんでもない事件を起こしてしまい申し訳ありません。ただの警告のつもりが、死人まで出してしまいました。死をもって償います。三上」とだけですね』

右京『あまりにも不自然すぎますね』

亀山『ええ』

伊丹『特亀!なんでお前らがここに来てんだよ!』

亀山『部署と名前を省略しないでくれたまえ、伊丹よ』

伊丹『??何だその余裕な態度は??』

右京『青酸カリを実際にどこかから調達し、実際に被害者のテーブルに混入している。にもかかわらず警告のつもりだったと言うのはあまりにも無理がありすぎます』

伊丹『そんなことくらいはわかります』

右京『この現場も自殺として処理するには問題点が多すぎます。ロープの結び付けられた木にはかなりの強い力が加わった痕跡があります。第二に踏み台に使ったと思われる木箱ではロープに首が届きません。第三に三上さんはどうやってここまで来たのかということです。付近には乗用車は見つかってませんねー車がなければそう簡単に来れるとこではありませんよ』

芹沢『なるほど・・・』

伊丹『ばか!感心してる場合じゃねーだろ!』

芹沢『すんません・・・』

三浦『では警部殿は真犯人をご存知なんですか?』

右京『いえ、残念ながらまだ分かりません・・・』


 次の日。特命にて

亀山『結局自殺ではなく殺人ってことで捜査本部が立つらしいですね』

右京『そうですか。しかし今回の事件は余りにも杜撰過ぎます。少し調べれば自殺でないことは一目瞭然。しかし真犯人はこの方法を取った』

亀山『もともと今回の事件は予定になかったこと?・・・そんなわけないか』

右京『いえ、そうだと思います。第一の事件で犯人側に何か予定外のことが起きたために強引な方法を取るしかなかった。そう考えれば辻褄が合います』

角田『なるほどねー相変わらず事件を引っ掻き回すのが好きだねー』

亀山『それを言うなら真相解明ですよ。あっそうだ。昨日頼まれた雪平なつみのこと調べてきましたよ。右京さんの予想通りです』

右京『そうでしたか。やはり雪平さんと山路さんにはつながりがあったのですね』

亀山『二人は同じ大学でサークル仲間です。就職してからはそれほど会ってはいなかったんですけど、半年ほど前に偶然再会しそれからはよく会っていたようです』

右京『ならば当然山路さんの自殺には疑問を持っていたはずですねー』

亀山『もう一度雪平さんに会いますか』


 二人は雪平に会いに向かった

雪平『今忙しいので少し待ってください』

右京『お仕事のお邪魔をして申し訳ありません。待たせていただきますよ』

 2時間後

雪平『まだいらしたんですか・・・とっくに諦めたかと思ってましたよ』

右京『諦めが悪いのも僕の悪い癖でして、三上さんの件はお聞きになりましたか?』

雪平『ええ、まさか薫ちゃんがあんなことになるなんて』

亀山『え?薫ちゃん?』

右京『三上さんも君と同じ薫さんなんですよ』

亀山『ああーそうでしたね』

雪平『今日はどういった用件です?』

右京『あなたは先日山路さんを知らないとおっしゃいましたが、本当は知っていますね。それどころか極親しい関係だったと僕は思っています』

雪平『さすがねーもう分かっちゃたの』

右京『知らない人を男と断定したのですぐに分かりました。山路さんの自殺はどのようにお考えですか?』

雪平『あの人が自殺なんてする訳ない。きっと安藤にはめられたのよ』

亀山『安藤?』

右京『山路さんの同期の安藤一之さんですか?』

雪平『もうそこまで調べてるの・・・彼に何度も聞いたわ。安藤は不正に手を染めているかもしれないって』

亀山『じゃあなんでそれを言わなかったんです』

雪平『あの時何度も話したのに誰も相手してくれなかった。しかもあんなことになって・・・』

右京『はい?』

雪平『とにかく誰も信用できなかったので山路さんとのことも話さなかっただけです』


 警視庁にて

亀山『しかし、わからないっすねー今回の事件の発端は山路さんの自殺か他殺かってことっすよね?雪平さんにとって再捜査はむしろ望ましいこと。だったらやはり蓮見を殺す動機なんてないっすよ』

右京『ええ、そこが今回の事件のカギですね』

 たまきさんの店にて

美和子『二人とも謎が残ったままって顔してるぞ』

亀山『実際そうなんだよ、ねー右京さん』

右京『ええまあ・・・』

美和子『そうそう、忘れてた。はやく頂戴!』

亀山『?なんのことだ?』

美和子『とぼけなくっていいのよーゆうべジュエリーマキから指輪のサイズの確認の電話が来たのよ。くれるんでしょ~?』

亀山『なんだよーせっかく記念日にと思って買ったのによー店も俺に電話してくれればいいのに・・・』

美和子『まあいいじゃない。明日使いたいのよーどうせ貰うのは私なんだからー』

亀山『お前もお前だよ。せめて受け取るまでは知らないフリをしてくれてもいいんじゃねーか?』

美和子『私は事前に分かってるのに感動なんてできないの!』

右京『・・・なるほど。そういうことでしたか。亀山君、美和子さんお手柄ですよ!』

亀山夫婦『え?』

たまきさん『右京さんがあの顔になったってことは事件解決近いのかしら』


 翌日、特命係にて

亀山『わかりましたよ。右京さんの推理どおりです。さらにはこんなものまで出てきましたよ』

右京『さっそく参りましょう、亀山君!』

亀山『はい!』

特命の二人は安藤という男と雪平を公園に呼び出した

安藤『どうなんているんですか?話があるとかでこんなとこまで呼び出して』

雪平『なんでこの人までいるんですか?』

亀山『まあ、二人とも落ち着いて、今回の事件の犯人が分かったんですよ』

雪平『・・・』

右京『雪平さん、あなたは蓮見さんが毒殺されることを事前に知っていましたよね?正確には蓮見さんがあなたを殺す計画を事前に知っていた。違いますか?』

雪平『何を言ってるんですか?』

右京『いつも忙しいあなたが、「突然会うことになった」というのがずっと引っかかっていました』

右京『そう考えれば今回の事件は実に簡単なものだったんですよ。そうですよね?安藤さん』

安藤『私には何のことだか・・・』

亀山『あんた借金で苦しんでいた蓮見さんを利用したんだろ。山路さんの自殺や公金横領を調べなおす雪平さんを殺すために』

右京『雪平さんの周辺で利用できる人物を見つけ出し、殺害計画を練った。先ほど官房長室から盗聴器が発見されたとの報告が入っていますから、おそらくそれで官房長と僕の待ち合わせ場所や時間を知ることができたのでしょう。捜査妨害の無差別殺人に見せかけ雪平さんを殺害し、青酸入りの瓶を回収し事件前に現場を立ち去ることで事件を有耶無耶のまま終わらせたかった』

亀山『ところが・・・どういうわけか雪平さんには計画がばれていて、実行犯の蓮見さんが返り討ちにあった。雪平さんが青酸入りのカップをすり替えたんですよね』

右京『このときからあなたの計画は音を立てて崩れてしまったんでしょうねー』

亀山『雪平さんを心配してあなたに声をかけてきた三上さんを強引に自殺にみせかけ殺害した』

安藤『さっきから黙って聴いていれば・・・全部憶測じゃないですか。私が犯人だという証拠があるんですか?』

右京『いまのところはありません』

安藤『話にならないですね!帰りますよ!』

 そのとき電話が入る

右京『はい、そうですか。ありがとうございます。待ってください。安藤さん、たった今鑑識から報告があり証拠が見つかったようです』

安藤『ばかな!』

右京『蓮見さんの実家でコインロッカーの鍵が見つかりまして、ロッカーの中からあなたと蓮見さんが殺害計画を話している録音テープが見つかりました。さらに三上さん殺害に使われたロープや踏み台の入手経路も特定できました』

亀山『彼女もあんたを全く信用してなかったんだ。だから自分が犯人である証拠でも大切に保管していたんだろうな』

安藤『くっ・・・あんな女に足許をすくわれるなんて・・・』

雪平『やっぱりあんたが山路さんを殺したのね。まさか蓮見まで利用するとは・・・実際に蓮見が亡くなるまで信じられなかったわ』

安藤『いったい誰から計画を聞いたんだ?』

雪平『関西弁で話していたけど・・・誰だかは知らないわ』

安藤『小久保だな・・・あいつに聴かれていたってことか』

右京『その小久保さんにも事情を聞くことになると思いますが、あなたを蹴落とすためにした電話というとこですかねー』

亀山『なんで山路さんを殺したんだ』

安藤『あいつが俺がやってた横領を世間に公開し、辞職しろと強く迫ってきたから・・・ちょっともみ合いになって、そしたらあいつが足を滑らしてビルの上から落ちたんだ。俺は殺したわけじゃないんだ!』

右京『あなたは結果的に3人もの命を奪ったことになります。どんな言い訳も通用するとは思えませんよ』

雪平『山路さんも、薫ちゃんもあんたのこと最後まで信じていたのに・・・』


 特命にて

亀山『ただの横領だったのに・・・人が3人も死んでしまう。なんともいえないですね・・・』

角田『犯人も、蓮見って女も金に踊らされたってことかね』

右京『ある過ぎるお金も悲劇を生み、逆になさ過ぎるとまた悲劇を生む。実に難しいものですねー』

小野田『入るよ』

角田『か、官房長。失礼します・・・』

右京『あなたの友人も納得してくれましたか?』

小野田『お前たちを褒めていたよ。瀬戸内先生が』

亀山『友人ってのは瀬戸内米蔵だったんすかー』

右京『そうでしたか。あの時点では事件が瀬戸内先生にも及ぶことも考え、先生の名前を出さなかったのですね』

小野田『まあそんなとこだよ。今回はお前の言ったとおりだったな』

右京『はい?』

小野田『沸騰する鍋に蓋をすれば吹きこぼれるってことだよ』

亀山『まさにそんな感じっすね』

杉下右京は今日もまた紅茶を飲んでいた

終わり

 都内のとある喫茶店。


小野田『おまえとこうして食事するのも久々だな』

右京『あなたがただ食事をするためだけに僕と会うとは思えませんがねー』

小野田『なんだ、わかってたのか。お前にやってもらいたい事件があるんだ』

杉下『僕に頼むということは・・・表向きは捜査できない、または捜査がしづらい事件ですか』

小野田『勘のいいお前のことだ。すぐに状況は分かると思う』

 
 そのとき店に電話が入る

店員『お客様で杉下様はいらっしゃいますか?』

右京『杉下は僕ですが』

店員『こちらにお電話が入っております』

右京『はい?(電話に出る)杉下です』

電話の相手『お前のいる店のあるテーブルに青酸カリ入りの砂糖がある。これは警告だ。事件には手を出すな』


 電話が切れる

杉下『・・・みなさん!』

客の女性『キャー!!!』

店員『どうしました!』

客の女性『突然倒れてしまって・・・』

右京『触らないで下さい!!アーモンド臭・・・青酸カリですね・・・遅かったようです、みなさん机の上のものには一切手を触れないで下さい!!』

小野田『どういうことなの?』

右京『どうやら・・・そちらの事件とつながりがありそうです・・・』


 現場に捜査一課が登場

伊丹『無差別テロか?』

芹沢『さあ・・・』

右京『まだそうと決まったわけではありません。思い込みは捜査に禁物ですよ』

伊丹『そんなことは分かって・・・警部!なんでここに?ってことは亀も・・・いないか』

右京『どうやら今回の事件は僕と関係がありそうです』

伊丹、三浦『え??』


 その日の夜、特命係にて

亀山『とんだ災難でしたね。しかし死人が出たとなると事は重大ですね』

右京『ええ、これ以上の被害はなんとしても阻止しなければなりません』

亀山『で、何から始めます?』

右京『犯人の言っていた「事件」を調べる必要がありますね』


 二人は小野田官房長の部屋に向かう

小野田『そろそろ来る頃だと思ったよ』

右京『早速ですが事件の詳細をお願いします』

小野田『僕の友人の部下である山路という男が先月死んだのよ。そいつは財務省の官僚で公金に手をつけ、それが表ざたになる前に自殺した。警察も検察もそれで処理したがってる。でも僕の友人が言うには山路はそんなことをする人間でもなければ、自殺をするような人間でもなかった。だからもしかしたら自殺ではなく殺人の可能性もあると思ってお前に相談した。まあそんなとこだよ』

右京『その友人というのは?』

小野田『それは知る必要ないね』


 部屋を出る二人

亀山『とにかく今回の犯人はこの自殺を調べられたくなくて犯行に及んだってことなんすかね?』

右京『しかし・・・そのために無差別に人を殺す必要はないですよねー』

伊丹『特命係の毎度毎度事件に巻き込まれる亀山さんよー』

亀山『なんだよ、ってゆうか俺は巻き込まれてないっつうの』

三浦『本当に心当たりはないんですかー警部殿』

右京『残念ながら僕にも分かりません。ただ・・・犯人は僕と小野田官房長があの日、あの時間、あの場所で会うのを事前に知っていた人物ということになります。もちろん僕は誰にも会うことは告げていませんよ』

伊丹『じゃあ官房長側から犯人に情報が伝わったってことか・・・』

三浦『なにやら面倒な事件になりそうだな・・・』

亀山『なんかきな臭い感じがしてきましたね』


 特命にて

亀山『被害者は蓮見玲子さん(33)、あの日は友人と食事をしていて事件に巻き込まれたんですね』

右京『・・・』

米沢『お待たせしました。検死の結果が出ました。死因はご存知の通り青酸カリです。砂糖の容器からも青酸反応が出たので犯人の言っていた通りです。しかし・・・ひとつ気になることが』

右京『というと?』

米沢『砂糖容器内の青酸カリは極微量でした。しかし被害者の体内からは致死量を大幅に超える青酸カリが検出されています』

亀山『被害者は大の甘党だったとかですか?』

右京『そんな都合よくはなりませんよ。しかしそれならば納得がいきます』

亀山『何故です?』

右京『タイミングですよ。僕が電話に出て犯人の話を聞いた直後に蓮見さんは亡くなっています。もし後30秒早ければ事件は防げていました。逆に30秒遅ければ電話どころではなかったということですよ』

亀山『じゃあ無差別ではなく、彼女だけが標的だったということですか?』

右京『その可能性が高いと思いますよ』

米沢『しかし・・・右京さんがあの場所にいることを知っている人物でないと犯行は不可能ですね・・・』

右京『おっしゃる通りです。蓮見さんの連れの女性はどなたでしたか?』

亀山『名前は雪平なつみ(34)、都内の外資系投資ファンドに勤務しています。彼女が犯人なんすかね?』

右京『まだわかりません。事件発生時の関係者の所持品は調べましたか?』

米沢『もちろんです。しかし青酸カリを運ぶための容器は発見できませんでした』

亀山『どういうことです?』

右京『君も知っている通り青酸カリは猛毒です。移動するにしても密閉できる容器が必要なんですよ。それが発見できないとなると・・・犯人の特定は難しくなってきます』

亀山『でももし雪平なつみが犯人だとして、こんな方法取りますかね?』

右京『確かにリスクが大きすぎます。ただ犯人からの電話で『警告だ』というのも気になります。文字通りの意味ならば雪平さんの周りで第二の犯行がある可能性もあります』


 次の日、特命の二人は雪平に会った

右京『杉下です』

雪平『あっあのときの刑事さん。今日は何のようですか?時間がないので手短にお願いします』

右京『二、三確認したいことがありましてね』

亀山『事件の日はどちらが誘ったんです?』

雪平『蓮見です。昨日突然電話もらって会うことになったんです』

右京『差し支えなければどういった用件ですか』

雪平『別に特別用件があったわけじゃないんです。ただ久々に会わないかってなって』

右京『なるほど。で、今回の事件に巻き込まれてしまったわけですか。ところで蓮見さんに何かトラブルがあったという話は聞いていませんか?』

雪平『いえ・・・ありません。蓮見は無差別に殺されたんじゃないですか?』

右京『単なる確認ですよ。いろいろな可能性を探るのも仕事なもので・・・』

亀山『この人の悪いクセだと思ってください』

雪平『蓮見は人に恨まれたりとかはないと思います。もういいですか?』

右京『あっ最後に一点だけ。山路という人物はご存知ですか?』

雪平『さあ、私の知り合いにそんな男性はいません』

右京『そうですか。お忙しいところを失礼しました』

亀山『収穫はなかったっすね』

右京『いえ、いろいろ分かりました。君に調べてもらいたいことがあります』

亀山『はい?』


 その日の夜、雪平の同僚の三上薫という男が死体となって発見された。

続く~

 
 四人は捜査を開始

牛尾『我々は被害者の知り合いにもう一度話を聞いてきます』

右京『お願いします、我々は別を当たります』

亀山『といっても・・・手がかりはありませんよ・・・』

右京『完全犯罪なんてありませんよ。何か手がかりがあるはずですよ』

米沢『そろそろ来る頃だと思いました。被害者の所持品リストはこちらです』

亀山『さすがに仕事速いですねー』

右京『いつもありがとうございます』

米沢『いえいえ、お役に立てれば光栄です』

 リストを見て

右京『最初の被害者の飯田さんと三人目の石川さんの所持品にノートパソコンがありますね』

米沢『ええーしかしこれといって問題はありませんでした』

亀山『最近見たサイトなんかも調べたんすか?』

米沢『履歴は消されてましたが、いま調べています』

右京『もう一点、矢口さんの携帯電話もお願いします』

米沢『もちろんです。携帯には履歴が残っていましたが・・・特に怪しいものはありません

右京『・・・』

亀山『手詰まりですね・・・』

 そのとき牛尾から連絡が入る

右京『そうでしたか。さらに詳しく調べてください』

亀山『なんです?』

右京『飯田さんは亡くなる直前に「死にたい」と言っていたそうですよ。もっともそのときは冗談だと言っていたそうですが』

亀山『気になりますね』

米沢『何か分かったら連絡します』

右京『お願いします』

 二人目の被害者、矢口を調べる二人

亀山『右京さん!彼女も同じでした。周囲に「何もかも嫌になった」と洩らしていたようです』

右京『やはりそうですか。つながりが見えてきましたよ』

米沢『警部、ようやく分かりました。消えた履歴の修復が完了しました。驚くべき結果が出ましたよ』



亀山『なるほど・・・だから睡眠薬を使い、窒息という方法を取った』

右京『ええ、そう考えれば辻褄が合います』

亀山『しかし・・・これだけでは犯人が特定できないっすね』

角田『特命もお手上げってか?』

右京『ひとつ方法があります。かなり危険を伴いますが・・・』


 2日後、都内のある部屋に美和子が一人でいた

 
 何者かが部屋に侵入し、美和子に睡眠薬を飲ませようとした

 
 そのとき部屋の明かりがつく

亀山『斉藤葉子!そこまでだ!もうお前の正体は分かってるんだよ』

斉藤『くっ・・・』

暴れる斉藤、右京さんが取り押さえようとする、ついに亀山が捕らえる

斉藤『なぜ・・・私のことが?』

右京『今回の事件には被害者の三人に共通点がありませんでした。仮に無差別だったとしても連続殺人ならば何らかのつながりがあるはずです。ところが今回は全くなかった』

亀山『それもそのはず、彼女たちは実社会では何のつながりもなかったんだ』

右京『しかし飯田さん、矢口さん、石川さんに直接のつながりがなくともあるサイトであなたに通じていたことを見つけたのですよ』

斉藤『・・・』

亀山『彼女たちはいわゆる自殺サイトを同じ時期に見ていた。しかもそのサイトでは自殺幇助、ときには殺人の依頼まで引き受けていた。それがあんただというわけだ』

右京『あなたの存在は本庁でもリストにあがっていたので調べるのは容易でしたよ』

斉藤『彼女たちが望むからやったまでですよ』

亀山『ふざけるな!』

右京『あなたは、何の主義主張もなく、動機もなく、相手の弱い心を踏みつけたのです。どの凶悪犯よりも間違いなく悪人です。あなたの罪は到底償いきれるものではありませんよ』

斉藤『私は彼女たちを解放してあげたのよ』

右京『警察も検察も、もちろん裁判所もそんな身勝手な理屈は通用しません!自分のしたことをよく考えなさい!』

斉藤『・・・』

 
 特命係にて

角田『まったくいろんな事件があるねー』

亀山『しかしわからないっす。人に依頼してまで死を選択するなんて・・・』

右京『ええ、理解できません、いえ、理解できては困ります。殺人犯はもちろん罪人です。しかし人を巻き込み自ら死を選択するのもまた罪人ですから』

亀山『これからも常識外の事件が起こるんすかねー』

牛尾『おかげさまで事件は無事解決しました。有難うございます。しかし・・・ひとつ疑問が残ります』

右京『はい?』

牛尾『石川さんは何故うちの署に来たのでしょうか?』

亀山『そういえば矢口さんに痴漢容疑をかけられたのも今思えばなんだったんでしょう?』

右京『心のどこかに死にたくないという思いがあったから、誰かに助けを求めたかったというとこですかねー』

牛尾『なるほど・・・そうかもしれません。我々警察が相談に乗れていたら事件は起こらなかったかもしれませんね・・・』

右京『僕たちの出来ることをやっていきましょう』

杉下右京は今日は紅茶を飲まず、外を眺めていた。

終わり

  新宿にて殺人事件発生



伊丹『所轄の初動捜査が終わったようだ。すぐ現場に行くぞ』

芹沢『はい!』

新宿西署の船越刑事『現場はこのマンションの405号室です。被害者は飯田なつみ(25歳)死因は窒息死だと思われます』

同じく牛尾刑事『部屋は特に荒らされたような感じはないね』

船越『えー財布やカード、貴金属類は手付かずですから怨恨の可能性が高いですね』

伊丹『害者の交友関係は?』

牛尾『(部屋の写真の人物を見て)おそらく彼が恋人でしょうね』

三浦『まずは彼に話を聞いてみるか』


 一方特命係の亀山はあるトラブルに巻き込まれていた

 山手線車内にて

女性(矢口香織)『やめてください!この人痴漢です!』

亀山『え?俺じゃないよ・・・手なんか触れてないでしょ?』

隣の男性『言い訳するなよ!この痴漢が!』

 

 駅事務所に連れてこられた亀山

亀山『だからー俺じゃないっすよ。ちょっと上司に連絡取るから待ってくれよ』

駅員『あんた・・・刑事さんなの?』

亀山『そうだよ』

駅員『だったらなおさらこんなことやっちゃダメでしょー』

亀山『やってないっすよ!あっもしもし右京さん?ちょっと困ったことになってしまって・・・すぐ来られます?』

右京『あまり気が進みませんが・・・どちらの駅ですか?』

 

 右京は現場の駅にやってきた

駅員『この女性が言うにはかなりしつこく触ってきたと』

右京『では、再現してみましょう。そのときの立ち位置、手の場所、そちらの女性の位置。こうすればすぐに亀山君の潔白は分かると思いますよ』

矢口『・・・もういいわ!帰ります!』

亀山『人を巻き込んどいてなんだそりゃー!』

駅員『刑事さん、すいませんねー我々としても痴漢が合ったといわれればこうするしかないんですよ』

右京『もう少し気をつけて下さい。たとえ、冤罪でもどこかに隙があったからこういう事態に巻き込まれるんですよ』

亀山『・・・すんませんね』

 
 その日の夜、その矢口という女性が変死体となって渋谷区の自宅マンションで発見された。

 次の日

亀山『おはようございます。昨日はありがとうございました・・・』

右京『おはようございます。一課の伊丹刑事がお話があるそうですよ』

亀山『またですかー?』

 

 一課にて


伊丹『おー特亀、おまえ昨日この女性とトラブルがあったらしいな(写真を見せる)』

亀山『あーでもなんでお前らが痴漢事件を担当してるんだ?』

芹沢『昨日の夜、彼女が殺されたんですよ』

亀山『マジかよ!で、犯人は?』

伊丹『お前も容疑者の一人なんだよ』

亀山『俺がやるわけないだろー!事件の詳細は?』

三浦『今回は俺らに任せて、おとなしくしてろ』

亀山『・・・』

 特命にて

亀山『大変です!右京さん!』

右京『今、米沢さんに事件のことをお聞きしましたよ』

亀山『俺も容疑者だそうっす』

右京『同じ日に新宿でも同様な事件がありました。手口や現場の状況を見る限り同一犯でしょうからねー君には一件目の新宿の事件には動機はないので疑いはすぐに晴れますよ』

亀山『そりゃよかった。って言ってはなんですけど・・・連続殺人となると三件目が起こる可能性も十分ありますね』

右京『ええ・・・』

 次の日の夜、また新宿にて女性殺人事件が発生。

船越『これで渋谷の件も含め三件連続殺人か・・・』

牛尾『しかし・・・手口は全く同じなのに被害者に共通点が見つからないことが引っかかりますね・・・』

 警視庁にて

内村刑事部長『捜査一課は何をやっているんだ!』

伊丹ら三人『申し訳ありません』

中園『犯人の手がかりはないのか?』

伊丹『2日で三件となると・・・情報は何もありません』

芹沢『被害者の三人には共通点はなく、年齢もばらばら、住所はさほど離れていませんが・・・つながりはありません』

内村『今はまだマスコミを抑えているが、これ以上の犠牲者が出ては抑え切れんぞ。なんとしても被疑者を逮捕するんだ!』

中園『警視庁の威信がかかってるからな!』

伊丹ら『はい!』

 特命にて

右京『3人目は石川のぞみさん(28歳)ですか』

亀山『これまた、前の二人との接点はありませんね』

角田課長『よっ!ヒマか?んなわけないか。一課でも相当てこずってるらしいな。最初の被害者の恋人、中澤浩輔を調べてるようだけど・・・やはり3人にはつながらないらしいな』

亀山『じゃあ、ただの偶然ってのはどうですか?』

右京『これだけ手口が似ている以上、偶然とは思えませんねー』

米沢『どうも警部、被害者の三人は全員窒息死です。それと気になることが・・・3人とも体内からは睡眠薬が発見されました』

亀山『窒息となると相当抵抗されるから、殺害前に飲ませておけば犯行はしやすいんじゃないっすか?』

右京『ええ、そうなると顔見知りの犯行ということになりますが・・・』

亀山『何か引っかかりますか?』

右京『何故、犯人はこんなリスクの大きい手口を選んだのか。睡眠薬を飲ませるのも、窒息も簡単ではありません。殺すだけが目的ならば他に方法があると思いますがねー』

 警視庁ロビーにて

牛尾『特捜本部の本庁の刑事さんにお話がありまして』

受付『あいにく担当のものは今不在です』

右京『もしよければお話をお伺いしますよ。申し遅れました。特命係の杉下と申します』

亀山『同じく亀山です』

牛尾『新宿西署の牛尾です。こちらは同僚の船越です。実は三人目の被害者の石川さんは事件の三日前にうちの署を訪れているんですよ』

右京『どういった用件ですか?』

牛尾『それが、受付の手前で帰ってしまって。そのとき偶然私とぶつかったのでよく覚えているんです』

亀山『何か相談事があったんすかね?』

牛尾『自分もそう思います。もしかしたらそのことで殺されたのかもしれません』

右京『・・・石川さんに変わった様子はあったのですか?』

船越『我々の調べでは分かっていません』

右京『もう一度、三人の経歴や最近の状況を調べてみましょう、そうすれば意外な発見があるかもしれません』

牛尾『我々にも手伝わせてください。合同の特捜本部はまだ具体的な捜査方針が決まっていないようなので』

事件の動機も、犯人像も、被害者のつながりもわからないまま、本部とは別に4人は捜査を開始した。

続く~