腕前はともかく、俺は料理を作ることが結構好きだ。この旅が始まってからまだ、料理らしい料理は1度もしてなかった。アメリカのユースホステルなどで自炊は何度かしていたが、インスタントラーメンを作って卵とネギを入れる程度のもので、料理と言える程のものではなかった。
前日K君とオアハカの市場を見てまわってから、無性に料理をしたくなった。幸い俺達の泊まっている宿の1階の中庭には小さなキッチンがあり、調理器具や皿も揃っている。とりあえず市場に向かった。
料理をするとは言っても貧乏旅行なので、予算も限られている。市場の中を徘徊しながら食材を探した。
どうしても使いたかった食材が生の唐辛子。何しろメキシコは唐辛子の原産国。市場の中では何種類もの唐辛子が、かなり安価で売られていた。メキシコでは唐辛子は、かなりポピュラーな食材であり、調味料でもある。
そしてもう1つ、俺の心にグッときた食材が干しエビだ。日本や中国ではスープのだしなどによく使われるが、メキシコでも売られているとは知らなかった。値段もかなり安い。
イメージが湧いて来た。トムヤムクン(もどき)を作ろう!世界3大スープの1つだ。
それまでにトムヤムクンを作ったことは1度もないし、タイで2、3度食べただけだった。当然レシピなども無い。
本来、大きめの生のエビで作るトムヤムクンなので、干しエビで作ること自体、かなり邪道なのだが。エビと唐辛子を使うスープというだけでトムヤムクンを作るぞと、自分に無理矢理納得させた。
あと玉ねぎとマッシュルームを買って宿に戻った。